世界のほとんどが、自宅での隔離を強いられている状況でビジネスの勝者となっている分野は限られている。そこに加わったのがリテールメディアだ。特に消費財分野などに関して、広告予算がAmazonやウォルマート(Walmart)といった企業へと移りつつあると、メディアエージェンシーのエグゼクティブたちは語る。
世界のほとんどが、自宅での隔離を強いられている状況でビジネスの勝者となっている分野は限られている。そこに加わったのがリテールメディアだ。
衣類、医薬品、電化製品、ケア・プロダクト、そして特に消費財分野に関して、広告予算がAmazon、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)といった企業によるリテール、食料雑貨メディアチャンネルへと移りつつあるとメディアエージェンシーのエグゼクティブたちは語る。上記企業たちによるリテールメディアチャンネルへの広告支出の移行は、マーケットですでに起きていたトレンドであった。これは彼らが持つ深い購入データが移行の原動力となっている。現在はそれが加速されている形だと、広告バイヤーたちは考えているようだ。
ウェイブメーカー(Wavemaker)のeコマース部門責任者であるケイシー・マキー氏は「我々の消費財クライアントのほとんどにおいて、リテールメディアへの大きな支出移行が見られている」と述べた。「小さな分量でのみ利用していたクライアントや、以前は利用しなかったクライアントたちがフルサポートと広告のフル活用を求めている。このトレンドを構築し、維持するべく、我々は参加している」。
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PMGのクライアント戦略部門バイスプレジデントであるニック・ドラビッキー氏は、ここ2週間でクライアントのリテールメディアにおける広告支出が45%の増加を見せていると述べた。「これは一時的な移行ではなく、恒常的な移行であると我々は考える。ターゲット、Amazon、ウォルマートへの(広告)投資額は、かつてない金額になっている」。
「非常に大きな流れとなる」
コロナウイルスが広がる前から、ウォルマートとターゲットといったリテーラーたちはAmazonに追いつくための対策としてリテールメディア分野に取り組んでいた。すでに成長を見せていたカテゴリーであった。Cookie に対する弔いの鐘が鳴り響くなか、各企業が有する自社データの魅力は増しており、広告主たちはリテールメディアへと惹かれていたのだ。
ダイレクト・エージェンツ(Direct Agents)のエグゼクティブバイスプレジデントであるダニエル・オーウェン氏は語る。「今後非常に大きな流れとなるだろう。消費者行動は変化を見せている。オンラインの買い物をしたことがなかった消費者ですら、オンラインでの購買を行っており、すべての人が慣れを感じている。これが消えることはないだろう」。ケンシュー(Kenshoo)による最近の調査では、消費者の75%は実店舗での買い物のうち75%をAmazonとウォルマートに移しているという結果が出ている。この調査ではまた、必需用品、非必需用品、どちらのカテゴリーに対してもAmazon検索への支出を、4月は現状維持もしくは増加する広告主が67%となっている。
Amazonで特定のアイテムが見つけられないとき、消費者は別のチャンネルへと移る。このことが他のリテールメディアへのトラフィックをもたらし、そして結果的に広告主による(広告)支出の増加を引き出すこととなったと、バイヤーたちは説明する。最近の週では、ウォルマートに割り当てられたメディア支出額は20%から25%の増加が見られているとオーウェン氏は述べる。Amazonへの予算は減りはしておらず、同じレベルに止まっているとも加えた。
「学びを得る非常に良い機会」
広告主たちはリテールメディア支出を増やしているが、彼らはCPCやCPMが下がっているなかで支出を増やしている点は特筆に値する。「これらのチャンネルに対するオンラインオーディエンスの増加は、広告主の支出増加よりも大きい」と、トゥー・ニル(Two Nil)のマネージング・ディレクターであるアンドレ・アルターチョ氏は言う。
そんななか、リテールメディアチャンネルへの広告支出をプッシュしている広告主にとっては「試行錯誤し、学びを得る非常に良い機会だ」と。エリザベス・マーステン氏は言う。マーステン氏はティヌーティ(Tinuti)のマーケットプレイス戦略サービス部門シニア・ディレクターである。今年後半に入り、広告主がマーケットに戻ってきたときには、リテールメディアへの興味はさらに高まるだろうと、彼女は加えた。
Kristina Monllos(原文 / 訳:塚本 紺)