マーケティング 内製化 につまづく、ブランド たちの実情:「経営幹部による支援が必要だ」

今年11月末、巨大テック企業インテル(Intel)は、マーケティング業務をインハウス化する方針を撤回し、クリエイティブ制作業務を再び外部エージェンシーの手に委ねる決定を下した。

コスト削減、自主性、スピーディーな変化に魅力を感じる企業のあいだで、総力をあげて複数の機能を備えた社内エージェンシーを創設したり、以前は外部パートナーに任せていたマーケティング業務の一部を内製化したりといった動きが盛んだ。だが、多くの企業にとって、インハウス化の道は思った以上に険しかった。彼らは、困難な人材獲得、社内のサポート体制の不備、あるいはそもそも管理が難しすぎるといった問題に直面している。

インテルの方針変更

インテルのバイスプレジデント兼グローバルクリエイティブディレクター、テレサ・ハード氏は、先月まで、同社のインハウスチーム「エージェンシー・インサイド(Agency Inside)」で85人の社員と45人の契約フリーランサーを率いていた。彼女は、インテルがエージェンシーへの外注に戻ることになるとは思いもしなかったと認める。

カリフォルニア州パームスプリングスで12月10日から13日まで開催された、DIGIDAYブランドサミットでハード氏が語ったところによると、インテルはエージェンシー・インサイドで期待どおりの投資利益率をあげていた。しかし、同社のマーケティングニーズがこの1年で変化したことに加え、新CEOロバート・スワン氏と暫定CMOミシェル・ジョンソン・ホルトハウス氏の就任により、インテル経営陣はエージェンシー・インサイドが行っていた、従来顧客へのマーケケティングについて、もはや不要と判断した。

「経営幹部による支援が必要だ」と、ハード氏はいう。方針撤回以前、インテルのマーケティング業務の約15%は社内で実施されていた。「(インテル経営陣は)目標を変え、予算も劇的に改変した。対消費者マーケティングへの投資意欲を失い、代わりに対企業マーケティングやB2Bに重点を移した。エージェンシー・インサイドにB2Bが扱えないわけではないが、設立当初の業務内容とは異なる」。

エージェンシー・インサイド誕生の背景には、世界中の消費者が目にするインテルのメッセージに関与するエージェンシーが多すぎるとの認識があった(インテルは一時、世界で1500社ものエージェンシーと提携していた)と、ハード氏はいう。現在では提携エージェンシーは250社まで絞られ、総合評価が始まったところだ。

コストと人材が難問

マーケティングのインハウス化に必要な資源にかかるコストは、多くのマーケターにとって頭の痛い問題だ。たとえば、ボーダフォン(Vodafon)でプログラマティック広告購入をインハウス化する計画が暗礁に乗り上げたのは、そのために必要なトレーディングデスクの立ち上げに、単なるソーシャルメディア広告や検索広告のダッシュボード構築以上の資金と人材が必要とわかったからだ。多くの企業にとっては、法外なコストに対処するよりも、エージェンシーに定額の報酬を支払う方が楽なのだ。

もうひとつのハードルは人材確保だ。とりわけ、本社が米国沿岸部以外に位置する企業にとって難題で、これはクリエイティブ人材の大多数が沿岸部に集中しているためだ。オハイオ州シンシナティとニューヨーク郊外にそれぞれ本社を構える企業に勤める2人のマーケターが、DIGIDAYブランドサミットのタウンホールセッションで匿名で語ったところによると、求職者たちが通勤時間の長さや拠点都市の魅力のなさを理由にそっぽを向いてしまうため、人材確保には常に苦労するという。

こうした理由で、大麻成分入りのクリームやミストを製造・販売するグラムスター(Glamster)は、プログラマティック広告購入からソーシャルコンテンツ制作まで何もかもを担当する、社内マーケティングチームの25人の社員たちに、どこでも自分の好きな場所で働くことを認めている。「贅沢なオフィスなど忘れよう」と、グラムスターのCEO、カーティック・ラム氏はいう。「それに何の意味がある? 私は行きたくないし、チームのみんなもそうだ。人々はワークライフバランスを求めていて、仕事は一気に済ませてしまいたいのだ」。

会社に必要なこと

NFLチーム、フィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia Eagles)でマーケティング・メディア担当シニアバイスプレジデントを務めるジェニファー・カバノー氏にとっても、社内マーケティングエージェンシーの人材確保は難題だ。しかし、それ以上に難しいのは、少しでも早くチームとして業務にあたらせることだった。カバノー氏がイーグルスに指名されたのは昨年6月であり、彼女にはオフシーズン中もマーケティングの勢いを保つという任務が課された。「問題は、どうやって協力して継続性を生み出すかだ」と、カバノー氏はいう。

ハード氏は、社内エージェンシーの採用を担当するはめになったら、会社のやりたいことよりも、会社に必要なことを考えるべきだと話す。「私がインテルに来たとき、CEOは『どこの会社もやっているんだから、我々もやるべきだ。これこそが最先端だ』といった具合だった。しかし私は、自分にはその能力があると自覚するまで、インハウス化のことは考えないようにした」と、同氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)