WPP・ソレル氏 辞任、 デュオポリー との戦いの痛手に

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WPPのCEO、マーティン・ソレル氏は世界でも有数の、歯に衣着せぬ「テック系批評の著名人」だった。10年も前、彼は世界に先駆けてGoogleを「フレネミー(frenemy:友人を装った敵)」と呼んでいた。企業資金を不正流用した容疑で捜査を受けたソレル氏は、WPPを去ることとなった。しかし、彼が辞任したことで痛手を負うのはWPPだけではない。テック系大手によるデジタルメディア進出拡大を抑制したい広告およびメディア業界にとっても、大きな痛手となる。

ソレル氏は、WPPを世界最大の広告持株会社に育てあげた。しかし、いまは転換期にさしかかっている。同エージェンシーのモデルは圧迫されている。その要因が、費用の使途を透明化して欲しいというクライアントからの要求、クライアントとの契約手数料、またエージェンシービジネスに手を出そうとする他業界の競合、そしてデジタル広告よりも安価な代替サービスなどによるためだ。クライアントがWPPにかける経費は減少し、株価も30%下落しており、ヘッジファンドもWPPとその同族会社の今後を危ぶんでいる。

同持株会社が苦境に立たされる要因のひとつが、デジタルへの移行だ。これは、テック系大手が従来のメディアやマーケティング会社を犠牲にして獲得してきたものだ。とはいえ、テック系大手はいま、重要な岐路に立っている。彼らや政府の規制に対する不満の声が大きくなっているのだ。先週、議会は2日間にわたり、Facebookのビジネスモデルについてマーク・ザッカーバーグCEOを糾弾した。2016年のアメリカ大統領選挙において、Facebookがロシアの干渉を許したことが明るみに出たからだ。

「彼の辞任は損失だ」

長きにわたってグループ・エム(GroupM)でグローバルチーフオフィサーを務め、先ごろ引退したロン・ノーマン教授は、「議会と欧州連合(EU)は、花の盛りが終わる姿を目にしている。マーティンが別の方法でGoogleとFacebookと闘うことができずに、去らなければならないというのが、残念だ」と話す。「過去5年から7年間で、このフィールドはある一定方向に傾いている。WPPだけでなく、あらゆる形のメディア所有者や広告主も同じだ」。

デジタルパブリッシャー業界団体のデジタルコンテンツネクスト(Digital Content Next)のCEOで、デュオポリー(二社独占状態)に批判の声を上げるジェイソン・キント氏は「彼のカードの切り方が非常に重要になる」と語る。「まだカードゲームは、はじまったばかりだ」。

WPPがデュオポリーに注目したことは、業界に大きな影響を与えた。エージェンシーのグループ・エムが業界の標準を超えた透明性基準を求めたときと同様だ。ソレル氏にはスター性があるため、彼の言葉にはパンチ力があり、彼はその発言力を活用してクライアントを獲得してきた。彼よりも目立たず、印象的な言葉も残さず、それでも同程度の影響力を持つ代わりの人材など、ほかに想像もできない。

ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)やニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などの2000社ものパブリッシャーを代表するニュースメディア・アライアンス(the News Media Alliance)のプレジデント、デビッド・シャバーン氏は数年前、ある業界団体のカンファレンスで講演したソレル氏の姿を思い出すという。

「オーディエンスはすっかり彼に魅了された」と、シャバーン氏はいう。同氏はメンバーの独占禁止法免除のため、ロビー活動を行っている。FacebookやGoogleと共同で交渉できるようにするためだ。「質問はひとつだけで、残りの45分は彼がそれに答え続けた形だ。彼はこの世界では有名人であり、彼のような人は多くない。広告や出版にかかわるディベートにとっては、損失だと考えなければならない」。

ソレル氏発言の矛盾

ソレル氏がテック系大手について「フレネミー」として語る一方、WPPはGoogleとFacebookの大手クライアントとなっており、2017年には70億ドル(約7500億円)もの経費を支出している。GoogleとFacebookはWPPのメディア支出の第1位、第3位にそれぞれ入っており、過去5年間で大幅に増加している。それに対して、従来型メディアへの支出は縮小した。Google、Facebook、そしていま、勢いを増すAmazonが広告主にとって必要不可欠な存在となり、WPPが彼らに計上する支出も増え、WPP自身の支出が彼らの市場シェア独占に貢献している。

それと同時に、ソレル氏は業界のカンファレンスに出席し、投資家に向けて従来型メディアを保護することの重要性について語っており、矛盾しているようにも見える。

「少なくとも、業界全体で彼の役割や発言は大きな影響力を持っていた」と、キント氏はいう。「だからこそ、現時点で買主側がその穴をどうやって埋めるのか、わからない。デュオポリーを緩和するのに、あれほど最適なポジションにいた会社は、ほかになかっただろう」。

Lucia Moses (原文 / 訳:Conyac
Image via WPP