GoogleとAmazonがせめぎあう、ショッパーマーケティング : オンライン化しつつある予算

広告予算をめぐるGoogleとAmazonのせめぎあいは、検索広告からショッパー(購入者)マーケティングへと拡大している。

Amazonはすでに、ロレアル(L’Oréal )やフィリップス(Phillips)などの世界的な企業が、Googleの検索広告に投入していた予算の一部を、自身のマーケットプレイスへ移行させることに成功している。

だが、現在のこの2社のせめぎあいはショッパーマーケティングに舞台を移し、バジェットのパイを奪い合っている。そもそもショッパーマーケティングは実店舗でオフラインで行われていたものだが、P&Gやハイネケン(Heineken)のような巨大企業に先導されて、予算の投入先はオンラインへとシフトしつつある。現在「ショッパーマーケティング」は、棚取りから店舗内プロモーションまでを包括する言葉になっている。

これまでGoogleは、このバジェットを本気で狙っていたわけではなかった。消費財ブランドの広告主は、Googleの広告をメディアエージェンシーを介して購入する傾向がある一方で、ショッパーマーケティングの関連広告は小売店から直接購入している。だが、スーパーマーケットにおける効果的な棚取り確保の競争、またAmazonなどの自社ブランド商品との競争が激化しているため、多くの消費財広告主はショッパーマーケティングの予算の多くをマーケットプレイスに投入することを避けてきた。

Amazon広告依存が加速

「Amazonはブランドであり、販売プラットフォームでもある。つまり、ブランディングとショッパーマーケティングの両方の予算にアクセスできる」と、Amazonの元取締役でありAmazonの広告運用プラットフォームであるダウンストリーム(Downstream)の創設者、コナー・フォリー氏は語る。「ショッパーマーケティングの『棚取り』に巨額の予算を投入することが当たり前になっている消費財業界において特筆すべき点がある。『棚取り』はすでにオンラインにシフトしており、消費財ブランドはAmazonの検索結果ページをデジタル商品陳列棚だと考えている」。

一方、消費財ビジネスにとってAmazonは数少ない右肩上がりのチャネルなので、成長を維持するためにはAmazon広告に依存せざるを得ない。エージェンシーのアイクロッシング(iCrossing) の例では、2018年における彼らのクライアントのAmazonへの広告出稿量は前年比で9%から295%の幅で増えているという。

「右肩上がりのチャネルだからという理由で、得られている利益に基づいてAmazon広告に過剰に投資しているクライアントもいる」と、WPPグループの中核広告代理店のVMLY&Rでコマースストラテジー部門のグループディレクターを務めるダン・ペレイラ氏は語る。「実際の売上高の増加は小さいかもしれないが、割合で考えると2ケタの伸びをみせている。クライアントによっては前年比で50~60%で成長している。一方、昔ながらの店舗チャネルの成長は2%がいいところだ」。

大手消費財ブランドの動き

Amazonに特化したパフォーマンスエージェンシーのクイバー(Quiverr)でブランドマネージャーを務めるダニエル・テハーダ氏はこの2カ月間、ショッパーマーケティング予算のAmazonへの移行を希望する消費財ブランドと打ち合わせを行なってきた。テハーダ氏によると消費財ブランドの広告主は、Amazonをスーパーマーケットのように見ているという。

消費財ビジネスのレキットベンキーザー(Reckitt Benckiser)を例にとってみると、オンラインでの売上向上や、営業チームと協力してマーケットプレイスへの移行を進めるため、Amazon検索の専門家の求人を行なっている。またケロッグ(Kellogg’s)やペプシコ(PepsiCo)も、Amazonでの自社製品の売上上昇を目の当たりにして、Aamzonの広告ビジネスに精通した人材を探している。ワンクリックリテイル(One Click Retail)によると、この2つのブランドが、2018年の米Aamzonでの売上げトップ10のシリアル商品のうちの6つを占めているという)。

「大手消費財ブランドは、eコマースの小売店が有する決済関連の機能を、あらゆるデジタル支出のバックエンド側に載せる手段を探しているようだ」と、ワンダーマン(Wunderman)のコマース部門のマーケットプレイス・イグニション(Marketplace Ignition)でプロダクト部門のバイスプレジデントを務めるトッド・ハリック氏は語る。「だが、融通の利かない財務や経理構造によって、特にブランドがショッパーマーケティングやトレードマーケティングへの予算と支出を移行することが難しくなっている様子も目の当たりにしている」。

徐々に参入してきたGoogle

Googleは徐々にではあるが、このマネーに狙いを定め始めている。

検索広告による収入の大部分は、Googleショッピング広告が生み出している。マークル(Merkle)によると、商品の画像、価格、詳細情報などのユーザーが求めている情報が検索結果上に表示されるGoogleショッピング広告は、この第3四半期では検索広告全体の87パーセントのクリックを生み出しているという。現時点では広告主にとって検索広告支出の一部でしかないが、エージェンシーの専門家たちは、ショッパーマーケティングの予算は、やがてGoogleショッピング広告に投入されるとみている。

本記事の執筆にあたってマークル、サミットメディア(Summit Media)、プロダクトキャスター(Productcaster)、そしてハバスメディア(Havas Media)などのエージェンシー幹部にインタビューをしたところ、消費財ブランドは彼らの小売店に予算を与えて、特定のGoogleショッピング広告にその予算を投入させているという。プロダクトキャスターの創設者であるヘドリー・エイロット氏によると、ショッピング広告を購入するにはECサイトの所有が必須条件なので、ECサイトを持っていないブランドはショッピング広告をGoogleから直接購入することができない。だが、このような企業は自社商品を販売している小売店に対して、代理での広告購入を依頼している。エイロット氏によると、eコマースが売上増加を促しているなか、これこそがショッパーマーケティング向けの予算の一部がGoogleに移行している要因だという。

これにはアイクロッシングのシニアペイドサーチディレクター、ジェームズ・マーシャル氏も同意している。「Googleショッピング広告の費用対効果が高いことを考えれば、我々の大半の小売関連のクライアントがそこへの予算投入を強めているのは当然だ」とマーシャル氏。「ユーザーの購入意欲の高さからくる高いコンバージョン率、Googleが絶え間なく拡張していくインベントリ、維持される低クリック単価。これによって、効果計測とさらなる予算投入が可能となる」。

ショッパーマーケ予算の拡大

Googleはこれまで、ショッパーマーケティングの予算拡大に関してAmazonほど積極的ではなかったと、マークルのメディアプラニングのシニアバイスプレジデント、リズ・ルタガーソン氏は言う。だが、消費財業界の巨大マネーがオンラインにシフトすることで、かつての検索エンジンでは成し得ることのできなかった、新たな歳入源が生まれる可能性がある。

消費財ブランドは、従来型の広告よりもデジタルの広告に多くの予算を投資している。調査会社のカデントコンサルティング(Cadent Consulting)が600人のブランドマーケターに対して実施した調査によると、2016年にこの業界で購入された広告のうち、デジタル広告が15.9%、従来型の広告が15.5%であったという。これらの広告主は、2017年は従来型広告の予算を13.2%にとどめる一方で、広告予算の19.7%をデジタルに投入する予定だという。ショッパーマーケティングは、これらの最適なバランスを見つけることだ。カデント社によると、消費財企業はショッパーマーケティングに年間1000億ドル(約11兆3568億円)もの予算を、店舗内の陳列や小売店の広告に投入しているという。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac