P&Gのスキンケアブランド、「消費者直販」戦略を強化:交差する新旧ブランドの方針

P&Gのスキンケアブランドのいくつかは、マーケティングでテレビCMをあまり用いていない。代わりにいまや同社のライバルである、いわゆるデジタルネイティブやDTC(direct-to-consumer:ネット直販)ブランドが一般的に利用する、パフォーマンスマーケティング戦略を用いている。

同社の最高ブランド責任者を務めるマーク・プリチャード氏は、とりわけオレイ(Olay)でテレビの重要度が低下していると語る。その代わりに同社は、「インフルエンサーへの投資を増やし、ソーシャルメディアやPRを重視するようになっている」という。

ほかにもSK-IIでは、検索とソーシャルへの投資が中心だ。これについて同氏は、「ブランドに人を呼び込むために使っている。検索とソーシャルは小売における広告媒体として、もっとも優れた手法のひとつだからだ」と語った。P&Gはインスタグラム(Instagram)のストーリー広告のアーリーアダプターとして知られている。昨年、同社はフェイシャル・トリートメント・エッセンス製品の宣伝として、インスタグラムやYouTubeで6人のセレブがノーメイクの写真や動画を投稿するキャンペーンを実施した。

インハウス化の加速

もちろん、同社は既存のテレビCMをやめたわけではない。消費財の大手ブランド、とりわけ家庭向けブランドの場合、テレビCMに最大の投資を行っているケースが多い。いまでもそれが多数にリーチできる手段だからだ。

だがP&Gの場合、それ以上の取り組みが進んでいる。

SK-IIに見られるように、同社はパフォーマンスマーケティングへと移行しつつある。DTCブランドで一般的に見られる、ブランドの知名度ではなく商品の売上を重視するキャンペーンだ。これは、同社が現在行っている、無駄な広告支出を削減する取り組みのひとつで、同社が増やしているインハウスマーケティングとも方向性を同じくしている。プリチャード氏は、P&Gがインハウスでのメディアプランニングと分析、運用型広告を導入していることを明かし、次のように述べた。

「パフォーマンスマーケティングによってデータを入手し、消費者への売上を最大化するための投資ができる。これは当社全体でスキルアップさせるべき分野だ。パフォーマンスマーケティングの力をつけつつあるのは間違いないが、さらに多くの社員のスキルアップが必要だ」。

データ取得の取り組み

パフォーマンスマーケティングには、実践する社員だけでなく、そのためのデータも必要となる。そこで、P&Gは、今年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で消費財業界のマーケターを苦しめるふたつの大きな課題、すなわちカスタマーがどのような相手か、そしてカスタマーと直接的な関係を築くにはどうすれば良いかという課題への回答とも呼べる商品を発表した。

CESでSK-IIが展示したフューチャーXスマートストア(Future X Smart Store:TOP画像)では、顔認識技術でカスタマーの顔をスキャンし、年齢を予測して肌のハリを検知することで適切な商品を勧め、試用させることができる。また、SK-IIの商品のひとつにフェイシャルトリートメントエッセンスのスマートボトル(Smart Bottle)がある。これはモバイルアプリと接続可能な商品で、商品ボトルのキャップがいつ開けられるかを追跡できるようになっている。毎日のスキンケア事情が分かるというわけだ。

SK-IIのスマートストアもスマートボトルも、マーケターは使用者の詳細な情報や、日常的にいつ商品を使い、いつ使用しなくなるかといった情報を手に入れることができる。プリチャード氏はマーケティングにおけるデータの具体的な使用方法については明かさなかったが、同社がマーケティングを向上させるためにデータを使用するつもりだと語った。スマートボトルから提供されたデータがあれば、たとえばP&Gのマーケターはカスタマーがいつ商品を使わなくなるかを判断し、その時期を狙ってリマーケティングキャンペーンを実施することも可能だ。

逆光するDTCブランド

P&G等のマーケターがDTC型の戦略を採用して、オンラインでの広告を増やしている一方で、DTCブランドのマーケターは逆にオンライン以外でのマーケティング投資を増やしている。DTCブランドのこのような動きは、Facebookやインスタグラムなどでの広告競争の激化により広告価格が高騰したことにも一因があるが、それと同時に一般家庭に対して、P&Gのような知名度を確立したいという狙いもある。

寝具・バスブランドのパラシュート(Parachute)でCMOを務めるルーク・ドゥルーレス氏は、米DIGIDAYのポッドキャスト番組「メイキング・マーケティング(Making Marketing)」で、こうした動きを「まるで夜の海で交差する2隻の船のよう」だと表現している。ここ1年半で、同社はダイレクトメールなどの従来型の広告への投資を増やしてきた。ほかにもテレビCMへの投資を増やすDTCブランドも多い。

「Facebookのブランドだと思われたくないと考えるようになってきた。デジタルディスラプターとも捉えられたくない」と、ドゥローレス氏は語る。「ライフスタイルのブランドとして見てほしいのだ」。

Tim Peterson(原文 / 訳:SI Japan)