Facebookは友人や家族のコンテンツを優先するために、ニュースフィードの改変に着手しており、これによりユーザーが接触するブランドや、パブリッシャーから発信されるコンテンツの量が減少することになる。そのため、ブランドはFacebookの有料広告へさらに予算を割くことになると、エージェンシーたちは考えている。
Facebookにおけるマーケティング戦略を、有料広告にシフトさせていないブランドは、一刻も早く対応する必要があるかもしれない。
Facebookは友人や家族がシェアするコンテンツを優先していくために、ニュースフィードの改変に着手しており、これによりユーザーが接触するブランドや、パブリッシャーから発信されるコンテンツの量が減少することになる。
これまでと同じ閲覧数を担保するために、ブランドはFacebookの有料広告へさらに予算を割くことになると、エージェンシーたちは考えている。つまり、Facebookがさらに儲かるということだ。これは、オーガニックリーチに「最後のとどめを刺す」ということにすぎないと、デジタルエージェンシーであるアナログフォーク(AnalogFolk)の戦略サービスディレクター、ダグ・ベーカー氏は述べている。
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Facebookの広告料金は、前四半期だけで35%上昇している。また、エージェンシーはかねてからFacebookのオーガニックリーチが緩やかに減少していることに気がついている。デジタルエージェンシーのジェリーフィッシュ(Jellyfish)は、Facebookのオーガニックリーチは、ほとんどのヨーロッパのクライアントを見ても、すでにおよそ2%ほどだという。FacebookでプロダクトマネジメントVPを務めるジョン・ヘイグマン氏は、ニュースフィードのアップデートに関する発表で、広告には「影響しない」と語ったが、エージェンシーたちはそれに納得していない。
エージェンシーにも負荷が
多くのブランドが、Facebookでつまらない同じようなコンテンツを大衆に向けて配信したことで、何百万ものニュースフィードを侵害していると、エージェンシーのウィーアーソーシャル(We Are Social)でチーフストラテジーオフィサーを務めるモビー・ナジール氏は述べる。また、今後メディアプランニングやキャンペーンの実施とそれらの最適化、そしてさまざまな指標のレポーティングに一層深く入り込むFacebookキャンペーンの計画に、多くの負担が生じるだろうと同氏はつけ加えた。
我々が求められているのは、より良いメディアプランニングを実施することだと、ジェリーフィッシュのソーシャル担当責任者グレッグ・アラム氏は語る。ニュースフィードのアップデートで身動きのとれない従来のソーシャルメディアマーケターの役割に「根本的な転換」が生まれるだろうと、彼はつけ加えた。マーケターは「ブランドとコンテンツを理解する必要がある」だけでなく、ソーシャルメディアにおけるキャンペーン設計への理解も求められる。
また、「エンゲージメントベイト」の優先順位を下げるとしたFacebookの12月の発表を受けて、多くのブランドは同社が取り組んでいる、質の低いコンテンツに対する施策に加えて、さらに大きな課題を突きつけられることだろう。友人や家族と過ごす大切な時間と比べたら、ブランドの提供するほとんどのコンテンツが「有意義」であり続けるのは難しくなると、エージェンシーたちは認めている。
リスクはまだ存在する
しかしその一方で、これはクリエイティブのレベルを向上させるチャンスでもある。「人々の生活に価値をもたらし、高品質でオリジナリティのあるコンテンツへの投資を検討しているブランドは、もっとも持続的な成功を収めることになるだろう」と、ベーカー氏は語る。
ブランド企業が、オーガニックリーチを伸ばすために、アルゴリズムに何らかの抜け穴を見つけるリスクは存在する。しかし、デジタルエージェンシーのTMWアンリミテッド(TMW Unlimited)のCEOであるクリス・ピアース氏は、「成功するのは、信頼できる視点に立って、真摯にコミュニケーションをはじめるブランドだ。一方、それ以外のブランドは、反応を上げるためにますます物議を醸したり、偏った方向に向かうだろう」と話す。
また、もうひとつリスクを挙げるとすると、「投稿を宣伝する」機能を使用している場合だ。Facebook広告の掲載ランキングは、ニュースフィードの全面見直しの影響を受けない。しかし、エージェンシーのアイプロスペクト(iProspect)で、インテグレーティッドパフォーマンスディレクターを務める、ケビン・チャン氏が指摘するように、今回の変更により「投稿を宣伝する」機能を使った投稿のオーガニックリーチが減少した場合、オークションに影響を与える可能性がある。Facebookはクリエイティブの関連性と品質を高めるため、どの広告をユーザーに配信するかの判断基準を多く設けており、エンゲージメントは広告ランキングにおいては「非常に小さな」部分にすぎないと同氏は述べた。
かつての姿に戻るFacebook
Facebookは、報道機関ではなくソーシャルネットワークに戻ろうとしているようだ。ポストトゥルースの政治(客観的事実より、感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を意味する)に対する、Facebookの影響を巡る議論において、同社はメディア企業であることを絶えず否定してきた。今回のアルゴリズムの変更は、ウォールやステータス機能のアップデートに注力していた時代に立ち返るための第一歩なのかもしれない。
今回の変更を、どのようにブランドに伝えるかに関して、デジタルエージェンシーであるポッシブル(Possible)のシニアストラテジストを務めるイディー・グリーブ氏は、FacebookとSnapchatの両社にとって、ブランドは「広告主」ではなく「パートナー」であるとする立場は変わらないだろうと考えている。
グリーブ氏は、Facebookは人々とコミュニケーションする新しい方法をブランドに提供しはじめるだろうが、そのニュースフィードを活用するには、さらに投資が必要になるだろうと考えている。おそらくFacebookは、ブランドがニュースフィード上で果たす役割を厳しく制限するWeChatのようなネットワークの軌跡をたどるが、メッセージアプリでは広告主により大きな自由を与えるだろうと、同氏はつけ加えた。