景気後退を巡る議論が活発になるなか、マーケティング担当者たちは今後もOOHへの投資を続けるという。伝統的な広告チャネルとしては、屋外広告はその成果が証明されてきたチャネルだ。広告主は、デジタル広告市場のCPMの上昇や飽和とは対照的に、OOHメディア購入で何が得られるかを、支出と投資収益率の観点から理解している。
景気後退を巡る議論が活発になるなか、マーケティング担当者たちは今後もOOHへの投資を続けるという。OOHにとって、この1年はパンデミックからのリバウンドに費やされてきた。
「新しい可能性を試すテストの多くは、少し抑制されるかもしれない」と広告代理店フィッツコ(Fitzco)の企画グループディレクター、ミシェル・チョン氏は言う。「その一方で、一般的な道路脇に設置されるビルボード広告は、新しい技術やテストの広告機会に比べれば安全なオプションと言えるだろう」。
伝統的な広告チャネルとしては、OOHはその成果が証明されてきたチャネルだ。同氏はこのチャネルを「本当によく理解されたメディアだ」と形容する。広告主は、デジタル広告市場のCPMの上昇や飽和とは対照的に、OOHメディア購入で何が得られるかを、支出と投資収益率の観点から理解している。
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とても手頃なプラットフォーム
広告主たちは、昨年の今頃からOOHを見直し始め、買い物客が仕事、音楽フェスティバル、旅行などの個人的な活動に戻り続けていることから、同チャネルの価値を見出した。その勢いは衰えておらず、OOHの2019年の広告売上は過去最高の26億9000万ドル(約3860億円)であったが、今年は既に26億2000万ドル(約3760億円)に達している、と全米屋外広告協会(Out of Home Advertising Association of America:OAAA)が発表した。
OAAAのプレジデント兼CEOであるアナ・ベイガー氏は、歴史的にOOHは経済危機のあいだもうまくやってきたと述べる。そして今回も同じことが予想される。その理由は、OOHというプラットフォームが「とても手頃なプラットフォーム」と考えられていることに加えて、プログラマティックなOOHやデジタルOOHなどの技術の進歩によって、ターゲティングや測定が簡単になったからだという。
「私たちは一対多のコンテクスト媒体なので、プライバシーとターゲティングに関してはほかの広告プラットフォームと同じ課題に直面していない」と同氏はメールで言った。「そのことが、おそらく広告費の支出先として最前線に飛び出す助けとなるだろう」。
より多くの広告主がOOHに関心を持つものの、OOHの物理的性質を考慮すると在庫は限られたままだ。そのため業界の専門家はCPMが上昇すると予想している。しかし、それが支出の妨げになることはないだろう。
OOHがデジタルに取って代わる、訳ではない
「OOHに関するリクエストはますます増えている。私たちの調査では、消費者が目にするチャネルランキングにおいて上昇が見られる」と、フリーランスの広告集団ロージー・ラブズ(Rosie Labs)のCEOであるディヴィッド・ソング氏は語る。昨年はパンデミックの先行きが不透明だったため、「当社の顧客は誰もOOHに触れていなかった」とソング氏は言う。今年は、クライアント広告費の約20%がOOHに費やされたという。
「OOHのCPMは上昇を続けるだろう。そして第4四半期に買いたかったいくつかのビルボードで完売が起きている」とソング氏はメールで語り、特にニューヨーク市の地下鉄などの交通機関に沿った形の広告スペースはすでに完売しており、何カ月も利用できない状態にあると付け加えた。
ソング氏によると、消費財、小売、ファッション、スポーツの顧客はOOHの購入を熱望している。フィッツコのチョン氏も、OOHに対する顧客の関心は広範囲に及んでいると述べた。かといってOOHがデジタルチャネルに取って代わろうとしているわけではない。
チョン氏は、次のように述べた。「面白い分野となるのは、おそらくこの2つが合体したような分野だろう。例えば、OOHとリターゲティングを組み合わせて、物理的に特定のビルボード広告を通り過ぎた人々をリターゲティングするようなものだ」。
OOHは嵐を乗り切る
さらに、お菓子ブランドのベリウェリ(BelliWelli)やベビーブランドのコテリー(Coterie)などは、OOHの広告看板を活用し、人々が広告看板の画像をオンラインで共有したことで、オンラインでの注目を集めるようになり、デジタルとOOHの2層戦略をとっている。
チョン氏は「重要なのは、それらのチャネルが組み合わさることで成果が高まることだ。OOHを使って、デジタルの世界でやっていることをサポートする。それが重要だ」と指摘する。
潜在的な不況が迫りつつある中、ベイガー氏はOOHが嵐を乗り切ると確信している。「OOHは今後も、複数のフォーマットに効率性を提供していく」と彼女はメールで語った。「マーケターたちは今後も、メディア支出から得られる価値を最大限に引き上げようとするだろう」。
[原文:Marketing Briefing: Ahead of economic downturn, marketers look to OOH as advertising safe bet]
Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)