アディダス に学ぶ、「小規模」インフルエンサーの活用法

インフルエンサーブームで、ブランドは無限ともいえる手段でファンにリーチできるようになった。だが、そんななか、アディダス(Adidas)は深刻な弊害である「消費者疲れ」に悩まされている。

かわりにアディダスは自社用のインフルエンサーを生み出そうと試みている。同社がこの取り組みをはじめたのは、同社のターゲットとなるオーディエンスのなかに、有名になりたいと望みつつも、アディダスのような世界的リーチがないため実現できずにいる人が大勢いるという分析結果に基づいている。アディダスのこの取り組みは2015年に、WhatsApp(ワッツアップ)をはじめとするダークソーシャルなプラットフォームで同社を宣伝する地味なマイクロインフルエンサーのネットワークとしてスタートした。この取り組みを通じ、マイクロインフルエンサーはやがて世界規模でアディダスブランドを伝えていく「ブランドアンバサダー」へと進化していった。だが、アディダスが最近、世界展開しているある広告の主役については、それまでその存在を知らなかった人も多いのではないだろうか。

イーサン・アバシ氏は、4年前にアディダスが開催したストリートサッカーのイベントの数々に参加した7万人の参加者のうちのひとりだった。それから間もなくして同氏はアディダスのマイクロインフルエンサー集団にスカウトされ、やがてインフルエンサーが所属する同社のサッカーチーム、タンゴ・スカッドFC(Tango Squad FC)に選手として呼ばれることになる。こうした過程を通じてアバシ氏はローカルなインフルエンサーから、いわゆる本物のブランドアンバサダーへと飛躍していった。いまやアバシ氏はリオネル・メッシ氏やポール・ポグバ氏といったアディダスのサッカー事業におけるスターと世界規模の広告で共演している。

タンゴ・スカッドFCの番組

アバシ氏がアディダスの顔と呼べる存在にまで飛躍した背景には、スポーツ、とりわけサッカーを取り巻く文化の変遷を捉えようとする同社の戦略がある。

この戦略を示す最新の一例がタンゴ・スカッドFCの番組だろう。タンゴ・スカッドFCは、アディダスはお抱えのマイクロインフルエンサー集団のなかから最高レベルのストリートサッカー選手を集めたチームだ。そして、これまで同社は2年にわたり、同社初のソーシャルメディア発サッカーチームであるタンゴ・スカッドFCの足跡を追った番組を制作している。シーズン1は12話、シーズン2は11話が配信されている。各話の長さは8分から40分までまちまちだ。同キャンペーンに携わるデジタルエージェンシーのウィ・アー・ソーシャル(We Are Social)でクリエイティブディレクターを務めるキャレス・リーディング氏は、これについて不要な引き伸ばしを避け、必要十分な長さに収めているためとしている。

各話の内容を発注するにあたって、アディダスはNetflix(ネットフリックス)による視聴データの活用方法を参考にしている。アディダスのマーケターはYouTubeのデータからどの選手が注目されているか、どのサッカーテクニックが繰り返し見られているかを見定め、どの場面を重視するかを決定している。データは各シーズンの開始、折返し、そして各話の終了後に見直される。結果は制作チームに伝えられ、発注の内容とそのシーズンの方向性に反映される。

SNSで圧倒的なリーチを獲得

インスタグラム(Instagram)の動画チャンネル、IGTVも同番組の配信を行っている。IGTVにはシリーズを通じ、いくつかのエピソードの舞台裏をとりあげたコンテンツも配信されている。現時点でタンゴ・スカッドFCの番組にとってIGTVはテストと学習の場だ。

アディダス・フットボール・グローバル(Adidas Football Global)でソーシャルメディアマネージャーを務めるステファン・クリアリ氏は「ペイドメディアにせよ、Snapchatやインスタグラムのストーリーにせよ、最新商品を宣伝するにあたって確保できる広告枠は6秒程度だ」と語る。「こうした若者たちの素晴らしい足跡を伝えるには、より長尺なフォーマットが必要となる。課題は、どうすればこのコンテンツを視聴者が見る形で届けられるかだ」。

アディダスによると、YouTube、Facebook、インスタグラム、Twitterをあわせて同番組2シーズンの合計再生数は4100万回となっている。そのうちYouTubeのユニーク視聴者数は1700万で、全体の半分近くを占めている。これは視聴時間にして1億分に相当する。クリアリ氏によると、アディダスが有するサッカー関連のYouTubeチャンネルの登録者数も同番組によって増加したという。同氏は具体的な増加数は明かしていないが、現在の登録者数は140万人となっており、番組によって過去18カ月間で増加がみられたとのことだ。

よりソフトなブランド指標も

マイクロインフルエンサーを扱う同番組においては、リーチ以外のよりソフトなブランド関連指標も評価対象となっている。インフルエンサーのジャック・ドーナー氏のプロフィール関連のエンゲージメントを追跡した際に、クリアリ氏はドーナー氏のインスタグラムアカウントにおけるアディダスのプレゼンスと、アディダス関連の投稿とそれ以外の投稿へのファンの反応を比較した。

「すでに非常に多くのフォロワーを基盤として抱えるインフルエンサーとは、リーチを知るためのアプローチがまた異なってくる」と、クリアリ氏は語る。「メッシ氏であればその影響範囲やシューズ関連の指標は当社で追跡できる。だが、メッシ氏らに用いている指標と、ドーナー氏に対する指標を比較するのは、とても難しい」。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)