AppleのブラウザであるSafariやアプリ内在庫と言った環境では、データプライバシー規則がますます厳しくなることで、ユーザーのターゲティングが難しくなっている。そんななか、アメリカンエクスプレスのような広告主たちはサードパーティのCookie使用の代替となるような方法を探している。
アメリカンエクスプレス(American Express)は、アイデンティティベースのメディアバイイング戦略を開発することで、Cookieが使われない状況に備えている。
AppleのブラウザであるSafariやアプリ内在庫と言った環境では、データプライバシー規則がますます厳しくなることで、ユーザーのターゲティングが難しくなっている。そんななか、アメリカンエクスプレスのような広告主たちはサードパーティのCookie使用の代替となるような方法を探している。
今後、数カ月に渡って、アメリカンエクスプレスはすべてブラウザにおいて、ユーザー特定のためのサードパーティCookieの使用を減らす計画を持っている。その代わりに、パブリッシャーやアドテクベンダーによるユーザー特定のための代替ソリューションを使って、特定のオンラインオーディエンスにリーチするとのことだ。
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ソリューション選びの決め手
アメリカンエクスプレス、企業デジタルデマンド創出部門のシニア・バイスプレジデントであるフィル・ウィルソン氏によると、彼らのアドテクスタックへの導入がどれほど容易か、という点でソリューション選びが決まるという。「ソリューション提供企業のテックが、どれだけ我々のテックと相性が良いかに加えて、どれだけポータブルかによって、ターゲットID広告ビジネスの評価は決まるだろう」。
複数のIDソリューションを処理するために、アメリカンエクスプレス自身のアドテクスタックにも変更が加えられる。これにはアドサーバー、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、そしてデータ管理プラットフォーム(DMP)が含まれる。
複数のブラウザにおける、トラッキング反対の最近の流れ、そしてオンラインにおけるプライバシー規則の強化に置いて、IDソリューションは急速にその数を増やしている。まだ初期段階にある分野だが、この分野のリーダー的存在になり得るIDソリューションベンダーの例にライブランプ(LiveRamp)とニュースター(Neustar)がある、とウィルソン氏は述べた。
ライブランプを注目する理由
ライブランプのような企業は、彼らのIDグラフ機能が広告主たちの注目を集めている。今後、サードパーティCookieへの規制が強化されるなかで、IDグラフも一部が消えていく可能性はある。しかし、ライブランプの場合はeメールアドレスと電話番号もポイントとして使用しており、そのためIPアドレスといった代替情報を使ってグラフを再構築することができるだろう。
匿名のCookie IDとして、ライブランプ独自のIDシステムは広く一般化しているわけではない。彼らが広告IDコンソーシアム(Advertising ID Consortium)に加盟しているのもそのためだ。ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)によるユニファイドID(Unified ID)、IABテックラブ・アンド・デジトラストID(IAB Tech Lab & DigiTrust ID)、そしてID5といったグループと同様、広告IDコンソーシアムは囲い込みが行われていない分野における共通のIDシステムになろうと取り組んでいる。この市場における最終的な勝者を特定するにはまだ時期尚早だが、業界がどのIDシステムを中心に統合していくかは、最終的にはアメリカンエクスプレスのような広告主たちによって決められるだろう。
ウィルソン氏は「誰もが自分のIDベースソリューションをプッシュするのは間違いない。我々は自社のテックスタックと統合することができるベンダーと協働すると思う」と言った。
ユーザー特定情報にも着目
パブリッシャーたちがサードパーティCookieの代わりとして使いはじめているユーザー特定情報にも、アメリカンエクスプレスは目を向けている。パブリッシャーにとっては、サードパーティCookie以外のデジタルID情報を使って知る訪問ユーザーの情報が増えるほど、広告主からの支出も増えるからだ。
「ファーストパーティのデータによるグラフがはるかに重要になる未来が来ると、完全に信じている。プライバシーを遵守しながら、グラフをつなげていける広告主とパブリッシャーこそが、この分野における勝者となるだろう」と、ウィルソン氏は言う。
Cookieにまつわるリスクは、最近はじまったことではない。Cookieが作られた25年前からずっと、Cookieを使った異なるビジネス間でのユーザー特定は正確ではないと広く認知されてきた。異なるアドテクプラットフォーム間でのCookieのマッチ率は均質ではない。しかし、最近になるまでずっと、業界はCookieによるユーザー特定が抱える問題については「黙って現状維持」の姿勢を貫いてきた。人気のブラウザが複数、サードパーティCookieを完全にシステムから排除するなか、規制当局から見てもCookieはターゲティング手法として有効ではないという考えが強まっている。そんななか、現状維持を続けるのは困難になりつつある。こういった変化のスピードに、慌てているマーケターたちもいる。しかし一方で、これまでよりも正確に広告のターゲティングができるようになるのであれば、短期的なメディアプランにおける変化は有意義な物だ、と考えるウィルソン氏のようなマーケターたちもいる。
「IDベースの世界に入り込む」
「特にパフォーマンスにフォーカスした広告主たちの多くが直面している課題のひとつが、広告がCookie中心で運営されている点だ。たとえば、リターゲティング広告なのに、ユーザーが多くの異なる広告を表示させられていたり、対象ではないユーザーに広告が表示されていたり、といった具合だ。IDベースの世界に入り込んで行けば、より消費者にフレンドリーな方法でコントロールすることができる」と、ウィルソン氏は述べる。
アメリカンエクスプレスによるCookie以外のより良いターゲティング方法の追求が実を結べば、より多くのお金がプログラマティックへと移るかもしれない。ウィルソン氏によると、アメリカンエクスプレスではプログラマティックにおける支出は、ここ5年で大きく減少しはじめているという。ほかにより収益に繋がる広告購入の方法があるとアメリカンエクスプレスは感じていると、彼は説明した。それ以来、ハイブリッド方式を採用してきている。これによってウィルソン氏の部門は、プログラマティック広告を購入するため、より正確な情報に基づいた入札に必要なコントロールを得られているとのことだ。
Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)