Googleの広告部門VP兼GMを務めるジェリー・ディシュラー氏は、5月27日に開催されたバーチャルイベントで、プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)について言及した。「Googleも、プライバシーサンドボックスのAPIを広告や測定に使うことはない。バックドアは作らない」と強調している。
Googleが進めている個人情報保護を目的としたChromeのサードパーティCookieの廃止。5月27日、Googleは(サードパーティベンダーやパブリッシャーなどの業界各社に対して)この制限を強いることを目的とする独自のルールを作ることはない、と発表した。
Googleの広告部門VP兼GMを務めるジェリー・ディシュラー氏は、5月27日に開催されたマーケティングのバーチャルイベントで、開発中のオープンソースのプライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)について言及した。これまで、広告のターゲティングおよび測定の手法は、個人情報の取扱いの面で問題視されてきた。たとえば自動化されたターゲティングは独占禁止法に抵触しないか、英国の競争・市場庁による調査のメスが入っている。今回のGoogle「プライバシーサンドボックス」には、まさに自動ターゲティング技術が含まれていることから、アドテク企業や業界各社のあいだでは、Googleが業界他社にデータの使用やターゲティング、測定などについて規制を強要する一方で、自社だけを例外とするのではないかという懸念が強まっている。
これを受けて、ディシュラー氏は「Googleも他社と同様に、プライバシーサンドボックスのAPIを広告や測定に使うことはない。バックドアは作らない」と強調している。
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「問題はバックドアの定義ではない」
だが、それでも問題の核心は変わらないという声もある。たとえバックドアを作らなくても、データを保有しているのはGoogleだ。Googleは、ChromeでのサードパーティCookie廃止後、自社が保有・運用している資産を活用し、個人レベルのデータを収集して、利用できるようにすると発表している。しかし、Chromeがこの「保有・運用」資産に含まれるか否かは明らかにしていない。
「問題はバックドアの定義ではない」と指摘するのが、デジタルエージェンシーのグッドウェイグループ(Goodway Group)で企業提携担当VPを務めるアマンダ・マーティン氏だ。「重要なのは、Google、そして広告主が『保有・運用』とファーストパーティデータをどう解釈しているかだろう。Googleの所有資産を考えれば、エコシステム全体を保有・運用していると捉えることも可能だ」。
また、デジタル広告企業のアド・ベーコン(Ad Bacon)の創業者であるティー・マーティン氏は、Googleがあとになって方針を変える可能性もあると指摘する。「Googleと言えども、常により良い結果を出さなければというプレッシャーにさらされている。何らかの形で改善がなされた実績を作る必要がある。将来的に、それまでタブー視されてきた分野についても再検討する可能性は否定できない」。
ID技術に対するるGoogleの姿勢
イベントのなかでディシュラー氏は、広告のターゲティングと測定を目的とした個人ユーザーの追跡に使うアイデンティティ技術に対するGoogleの姿勢についても再確認した。「サードパーティCookieや、業界で提唱されている一部の識別子は、個人情報について今の消費者が求める基準を満たしていない。規制は急速に進んでいる。長期的な視野で見ると、こういった識別子を信頼して使い続けるのは難しい」。
[原文:Google promises not to build itself privacy sandbox ‘backdoors,’ but advertisers are skeptical]
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)