オンラインマーケティング業界の巨大勢力Googleは5月第2週前半、開発者カンファレンス「Google I/O」で、サーチラボ(Search Labs)における数々の実験を実演。会話的インターフェースを提供する進行形のエクスペリエンスであるサーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス、略して「SGE」を紹介した。
「ジェネレーティブAI」は早くも、2023年のマーケティング業界における最大の話題だ。マイクロソフト(Microsoft)がChatGPTの開発/提供企業オープンAI(OpenAI)への100億円(約1兆3000億円)の投資も発表しており、広く一般にも、世のあり方を一変する革新的発明だと認識されている。
そうした状況のなか、オンラインマーケティング業界の巨大勢力Googleは5月第2週前半、開発者カンファレンス「Google I/O」で、サーチラボ(Search Labs)における数々の実験を実演してみせた。
会話型インターフェース「SGE」
オンライン広告界の巨人は実際、サーチラボ内におけるAIの可能性の活用案をしばらく前から温めていた。その最初の一手が会話型インターフェースを提供する進行形のエクスペリエンスであるサーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス(Search Generative Experience)、略して「SGE」だ。
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簡単に言うと、SGEはAIの力を借りた検索結果をもとにフォローアップ質問をくり返すことで、Googleユーザーに「トピックの概要を迅速に掴ませる」ことができる。たとえば、ユーザーが購入を考えている品物の検索をしている場合、SGEはGoogleのショッピンググラフ(Shopping Graph)を利用し、それを扱う近隣の小売店や商品レビューなどの文脈情報を提供する。
さらには会話モードにより、ユーザーはAIが質問のコンテクスト(文脈/背景)を繋ぎ合わせる様子を見ながら、フォローアップ質問をくり返すことで、質問を再形成していける。また、ユーザーインターフェースは一連のプロンプトを介し、ユーザーの会話モードへの移行を手助けもする。
AIの活用でさらに検索がアップグレード
この新機能は広告機能も備えており、現在はまだ試用段階だが、ページ上に特定の枠を設け、オーガニック検索結果上に「スポンサード」の印を伴って広告を表示する。
パフォーマンスベースの広告にうってつけ?
米DIGIDAYの取材に応えたユー・オブ・デジタル(U of Digital)のマイルズ・ヤンガー氏は、「Googleの試みは即時的な満足を求めるユーザーの欲求を満たすものであり、今回の発表には行間を読む価値がある」と話す。
「このようなケースにおける即時的な満足へのAI活用は、Googleが誇る超強力なパフォーマンスベースの広告および商業マシンに打ってつけに思える」と同氏は言う。「実際、Google自身もAI利用の広告プロダクト、パフォーマンス最大化(Performance Max)キャンペーンに言及し、その関連性を示唆している」。
さらに同氏は、「GoogleはSGEエクスペリエンスを介してAI世界への適応に努めており、さすがのオンライン広告界の巨人も、主軸である数十億ドル(数千億円)規模の広告事業を考え直す必要に迫られている」と指摘する。
なかでもとりわけ、SGEの「near me」機能はこの新パラダイムにおける商業・市場化を意識したものだと、同氏は続ける。「『near me』検索はGoogleにとって、即時的な満足を提供するために張り巡らせる巨大な堀のようなものだ。そのためには地理空間、POI(関心地点)、商業者、インベントリデータをあらかじめオーガナイズ(整理整頓/体系化)しておく必要があり、これは膨大な量という点でも、意味論的にも、対抗は極めて困難となる」。
[原文:Google attempts to flaunt AI capabilities with new search function]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)