コロナ禍で流入増も、プログラマティック広告価格は下落:「誰もが制御しようとしている」

コロナウイルスのパンデミックとともに縮小したオンラインの広告収益だが、ここにきて回復の兆しがでてきた。

本記事の執筆に際してメディア7社の役員にインタビューを行ったが、世界規模のパンデミックが発生してからパブリッシャーのウェブサイトのトラフィックは明らかに上昇傾向にある。なかには最大で30%の増加を示したパブリッシャーもあるという。ここで課題となっているのが、トラフィック上昇に貢献している記事の多くがコロナウイルス関連という点だ。これは大半の広告主が避ける内容となっている

英国ティーズ(Teads)でアドテク担当マネージングディレクターを務めるジャスティン・テイラー氏は「プログラマティック広告の価格は世界的に平均で10から20%下落している。CPVも毎週下がっており、パフォーマンスキャンペーンは増加している。現在バイヤーらはブランドよりも価格を重視する傾向にある」と語る。

あるパブリッシャーでは、閲覧数は25から30%増加しているにもかかわらず、広告主はメディア予算を削減していると明かす。収益化できるトラフィックが大幅増となっているなか、同役員はインベントリーを売りさばくため「極端な」量の広告リクエストをテックベンダーへと送っているという。ここで問題となるのが、こうして大量の広告リクエストが広告主に送られることで、逆に広告主が選り好みできるようになってしまうという点だ。そしてパブリッシャーとしても、需要にはずみをつけるため広告価格を低く設定せざるをえなくなる。同役員はリアルタイムのオークションで購入した広告については最低価格にこだわりたいとしているものの、競合他社がなんとか売りさばこうと価格をさらに下げるためそれも難しいと明かす。

いま広告を出している企業

CPMが暴落した市場にあっても、閲覧数が稼げそうな広告に高額を支払う広告主はまだ存在している。

アドテクベンダーのブラウシ(Bowsi)が2月10日から3月10日にかけてニュース系パブリッシャー3社とスポーツ系10社を対象に行った分析によれば、ビューアビリティが70%だったインプレッションは、同70%未満だったものと比べてCPMが3割以上高かったという。

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出典:ブラウシ

だが質の高いインプレッションだけで、いまの流動的なプログラマティック市場を安定化させるのは難しい。

「当社のビューアビリティは、大半の広告枠で60から80%だ。こういったケースで質は大して役に立たない」と、上記のパブリッシャー役員は語る。

実際インプレッションを求めているのは、この機に事業拡大や失ったリーチを安値で獲得しようと試みている広告主が少なくない。

北欧を拠点とするあるパブリッシャーの商業ディレクターは、米DIGIDAYに話す許可を得られていないとしつつも、次のように明かした。

「EC企業やロングテールの面からの需要が多い。当社の広告から手を引く大手ブランドが相次ぎ、より規模の小さい企業の参入する余地が生まれた。それにともない収益をなんとか確保するため、最低競売価格を半額に設定した」。

慎重な形で戻りつつある

広告を安売りせざるを得ない状況について、同役員は長続きしないと考えているという。これまでのところ、同社のデジタル広告収益はパンデミックによって前年同期比で25%減少している。これは同役員の想定ほどの減益ではなかったというが、広告主のニュース需要の少なさを端的に表している。同社の広告価格はプライベートおよびオープンマーケットプレイスのいずれにおいても昨年と比べて下落している。これはプログラマティックギャランティードについても同様だという。

「オーディエンスと再びつながりたいと望む広告主の動きが出てきている。だが、下落は少なくとも5月までは続くだろう」と、同役員は語る。また同役員は、パンデミックのピークがいつであれ、各国政府は夏までには消費者の支出を促進するための政策を打ち出すと予測しているという。

これはほかのメディア役員らにも共通する見解で、メディア予算が少しずつ、慎重な形でだがプログラマティックへと戻りつつあるという。不安定な時期において、インベントリーや価格を固定したいと考える広告主らのあいだでは、プライベートマーケットプレイスの広告のほうがオープンマーケットプレイスよりも安全とみなされている。

特にコンテキスト重視の傾向

メディアエージェンシーのエニシング・イズ・ポシブル(Anything is Possible)でCEOを務めるサム・フェントン=エルストーン氏は「いまやクライアント側は全員、制御を重視する姿勢だ」と語る。「彼らはホワイトリストやPMP、コンテキストの制御をより前面に打ち出している」。

ガムガム(GumGum)の英国商業ディレクターを務めるピーター・ワレス氏も同じ見解だ。「戻ってくる兆候はある。異なっているのは、広告主が適切なコンテンツについてより慎重になっているという点だ」。

パンデミックの最中にプログラマティックキャンペーンを展開している広告主のあいだでは、過剰にネガティブなコンテンツは避けつつ、自社の広告に関連したメディアを発見するためのコンテキストターゲティングツールの活用が増えている。

YouTubeやFacebookにも

広告主は一旦はコロナウイルス関連コンテンツを急いでブロックしていた。だが、現在は現状を反映するコンテンツとしてどれが適切でどれが不適切か、規制を緩めているという。

実際、リモートワークを支援するあるテック系広告主は、ここにきてコンテキスト広告テックベンダーのガムガムを活用して在宅勤務に関連するコロナウイルス記事に広告を出しているという。さらに、当初はコロナウイルス関連のコンテンツを広告主からブロックしていたYouTubeだが、ここにきて収益化へと舵を切った。

YouTubeやFacebookといった動画プラットフォームのブランド広告を支援するゼファー(Zefr)でマーケティング担当SVPを務めるアンドリュー・サービー氏は「NCAAマーチマッドネスといったスポーツイベントへの投資を補おうと当社を頼る広告主が増えている。リーチや質の面で優れた動画プラットフォームを求めている」と語る。「それだけの規模を誇る動画プラットフォームは少ない。YouTubeやFacebook、Huluといったところが妥当だろう」。

短期間で終わる可能性もある

プログラマティック市場に再び流れ込むようになった資金だが、これは短期間で終わる可能性もある。

テックベンダーのテラリア(Telaria)でEMEA担当バイスプレジデントを務めるビル・スワンソン氏は「懸念しているのが、現在の増加分が、各社が今四半期で使える広告予算の残りすべてではないかという点だ」と語る。「4月に入れば、広告主はパンデミックがどうなるかを見極めようとする可能性もある。第2四半期はあまり良いスタートにならないことも考えられそうだ」 。

SEB JOSEPH(原文 / 訳:SI Japan)