[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アクセンチュア(Accenture)によるクリエイティブエージェンシー、ドローガ5(Droga5)の買収は、コンサルティング企業が広告予算にどれだけ近く迫っているかを示している。それでも、コンサルティング企業がエージェンシーよりも優れていることを一部のシニアマーケターに納得させるほどではない。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アクセンチュア(Accenture)によるクリエイティブエージェンシー、ドローガ5(Droga5)の買収は、コンサルティング企業が広告予算にどれだけ近く迫っているかを示している。それでも、コンサルティング企業がエージェンシーよりも優れていることを一部のシニアマーケターに納得させるほどではない(アクセンチュアのドローガ5買収は、利益の出るボーダフォンジゴ[VodafoneZiggo]のアカウントを、WPPに持っていかれてしまう直前、つい数週間前に発表された)。
この記事でインタビューした3人のグローバルメディアディレクターによると、コンサルティング企業はマーケターに対し、メディア予算の使い方の問題点を伝えることに長けているが、エージェンシーはこうした問題点を、現実的なアクションプランに転換し、目に見える違いを企業に届けることを得意としているという。
社内の規律を統制したあと、コンサルティング企業に対し、有料検索の支出を最適化する方法について世界的な通信事業広告主に助言するよう依頼した際、その助言には疑問の余地があったと、そのプロジェクトを率いたメディアディレクターは匿名性を条件に語ってくれた。コンサルティング企業の幹部たちは、そのメディアディレクターに対して、彼らのやり方で検索広告を購入すると、どれだけコストの節約になるか明確に説明することができなかったのだ。この点で、その提言は「浅い」ものだった。
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その有料検索戦略に反対の意を示すときは、それとなく伝えることが必要だったと、メディアディレクターは語る。彼らがそのコンサルティング企業の業務に何の影響も与えないであろうことは知っているが、それぞれの上司たちとの関係が気がかりだとメディアディレクターは言う。「経営トップに話が通るコンサルティング企業には、役員室の外のシニアマーケターとして認識されていることから、ある程度の傲慢さがある」と、そのエグゼクティブは述べた。「メディアや広告に関しては、彼らは専門家ではない。しかし、彼らはその立場を利用して、うまくやり過ごすことが可能だ」。
戦略とメディア活性化
世界的なCPG(消費財)広告主の元メディアディレクターにとっては、そうしたことすべてはよくあることだった。企業のCEOに好印象を与えるために、コンサルティング企業の幹部たちは、昨年の夏にそのシニアマーケターたちと会い、予算を節約する方法ついて話し合った。決まり文句とデータを使い、そのコンサルティング企業は、メディア予算が浪費されていると感じたマーケティングチームを提示した。ここでの問題は、その戦略が一般的なものであり、何ひとつ新しいことがないことだったと、その幹部は話した。マーケティングチームは、そのコンサルティング企業と対面する1年前に設立された社内メディアチームのおかげで、その支出がどこで浪費されているのかをすでに確認していたのだ。
「コンサルティング企業の幹部たちがその部屋のなかで一番賢いと自負しているように感じられたが、高価なインベントリを確保しなければならないスポーツスポンサーシップ契約を結んでいたため、我々がインプレッションに高いレートを払っていることを、彼らは理解しなかった」と、その元メディア責任者は述べた。
これは、そのマーケターが既存の代理店の力量不足を補うことができる会社と協力することに寛容ではなかったという意味ではない。むしろ、コンサルティング企業は戦略とメディア活性化のあいだの溝を埋めることができなかったということだ。そのような場合、広告主はプロマティカ(Promatica)のような規模の小さいコンサルタント会社に、別のコンサルタント戦略を採用して、それを実現するよう依頼することがよくあると、最高戦略責任者のブライアン・レーダー氏は述べる。「CMOやその他のシニアマーケターたちからよく聞かされるのは、戦略と実行のあいだが分断されているということだ」と、レーダー氏は語る。
曖昧になってきた境界線
戦略レベルで考え抜かれたリーダーシップと戦略的な助言は、これからもコンサルティング企業にとって役員会議室へのエントリポイントであり続ける。これらの領域がほとんどのエージェンシーにとって、アキレス腱として存続しているためだ。
IPGのCEO、マイケル・ロス氏が、アクセンチュアやデロイト(Deloitte)といった企業が、彼のビジネスにもっとも大きなリスクになっていると感じる売り込みを、エージェンシーが理解していないと、アナリストたちに先月伝えた際にも、そのことは十分に見て取れる。コンサルティング企業は、既存のより変革的なプロジェクトに取り組んでいるという事実を利用し、メディア監査プロジェクトや社内プロジェクトなどの広告予算にちょっかいを出すため、ときにはIPGのエージェンシーが取り逃がすプロジェクトが出てくる。こうしたプロジェクトはエージェンシーが通常関与するようなプロジェクトではないが、同じ母体から予算が出されていることがよくある。
先ほどの元メディア責任者は、オンライン広告の購入状況の監査についてコンサルティング企業に支払いをするため、CPG広告主は、そのメディアエージェンシーの手に渡るはずだった予算を使う必要があっただろうと語る。コンサルティング企業は、そのマーケターのメディアエージェンシーと同じプロジェクトをめぐって競合してはいなかったのかもしれないが、同じ予算を奪い合っていたことは事実だ。「コンサルタント企業が我々エージェンシーに影響する可能性があると考えているのはその点だ」と、彼らの勧めた監査を断ったマーケティングエグゼクティブは述べた。
経営トップとのつながりがあるおかげで、コンサルティング企業は、彼らの提言が常に適切であるかどうかについて役員室の外からの懸念をよそに、さらに多くのマーケティング予算の活用方法に影響を与えはじめている。「デジタルトランスフォーメーションは、マーケティング部門を含むビジネス全体の予算に影響を与えはじめるために使う、コンサルティング企業が見せる名刺のようなものだ。エージェンシーは事業全体に渡るそのような信頼性を持っていない」と、通信事業広告主のメディアディレクターは語る。
すべてのマーケターがコンサルティング企業に不満を持っているわけではない。
あるテクノロジー企業のメディア責任者のように、戦略と実行のあいだの断絶をうまく解決できると考える人間もいる。アクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)は、広告主のエージェンシーが展開する購入活動のために、その広告主が戦略を考案する方法を見直す手助けをした。「アクセンチュアとの付き合いは、良い経験だった。彼らは優れた戦略と我々の課題が何であるかについての理解を提供してくれた」と、そのメディアの責任者は述べた。居心地が悪いと、そのマーケターが感じた部分は、コンサルティング企業がメディア予算の支出方法について、より積極的な役割を果たそうとしたときのことだ。
コンサル企業における矛盾
広告予算を追いかけるアクセンチュアの一部門であるアクセンチュア・インタラクティブは、メディアプランニング、およびバイイング経験がある専門家を有するプログラマティックサービス部門を持っている。アダプトリー(Adaptly)やストームデジタル(Storm Digital)のような企業は、その広告主向けのメディアのピッチに組み込まれている。
「アクセンチュアは、デジタルコンサルティングからデータ管理に至るまで、すべてにおいて役に立てると話し、我々の社内プログラマティック戦略をメディアの監査に取り入れると述べた。それから彼らは、我々のためにメディアバイも可能だと述べた。我々が彼らの監査チームとメディアバイチームのそれぞれと共有したデータをアクセンチュアが使用するかどうかに関しては疑念を抱いている」と、そのメディア責任者は語った。
通信事業広告主のメディアディレクターは、その点に関し、次のように述べている。「コンサルティング企業がメディアエージェンシーとの違いを示すためにリベートやアービトラージ(裁定取引)に関する課題を利用してきたのと同じくらい、その点に関して、矛盾を含む可能性がある」。そのメディアディレクターはコンサルティング企業にさらに多くの予算を与えるという考えを軽々しく扱っているが、「コンサルティング企業によるメディア監査およびバイイングに内在する矛盾」があるために、彼らはそれを受け入れないだろうと話している。
その一環として、アクセンチュアは、このふたつの事業は別物であると繰り返し主張しており、価格データを共有することはしない。アクセンチュア・インタラクティブのUKおよびアイルランドのマネージングディレクター、ジョイ・バタチャリア氏は、アクセンチュアはメディアの裁定取引も行わないと述べ、同事業はクライアントに透明性の高い業務モデルと業績目標に紐ついた料金体系を提供していると語る。
エージェンシーのように、コンサルティング企業のメディアオーナーとの商業的な関係は、一部の広告主にとっての懸念材料になる可能性がある。多くのコンサルティング企業があるが、彼らはGoogleやFacebookのアドテクスタックとオープンに連携し、パートナープログラムの一環として新しいビジネスをもたらすことで報酬を受け取ることが多い、アクセンチュア・インタラクティブとデロイト・デジタルは事実上の再販業者となっていると、アドテクコンサルタント企業であるアンコモン・ピープル(Uncommon People)の共同創設者であるキース・デ・ジョング氏は言う。広告主の多くは、こういった関係を認識していないか、もしくは、どう尋ねてよいのかを理解していないのだ。