ハンバーガー・チェーン店であるバーガーキングは、周囲の状況に合わせて、表示が変化する、デジタルビルボード広告をテスト運用中だ。このビルボードはどれも、ロンドンにある13のバーガーキング店舗の近くに存在しており、時間、地域のイベントとの距離、天候などに反応してダイナミックに表示内容が変更する。
バーガーキング(Burger King)は、屋外広告がもっとも効率的に店舗売上に結びつくように、デジタルの広告内容を随時変更するというシステムを試験的に運用している。
ハンバーガー・チェーン店であるバーガーキングは360iによって制作され、バイジアム(Vizeum)によって購入された100のビルボードで表示された30の異なる広告のアナリティクスを吟味している最中だ。このデータは10月のある1週間のものとなっている。ビルボードはどれも、ロンドンにある13のバーガーキング店舗の近くに存在しており、時間、地域のイベントとの距離、天候などに反応してダイナミックに表示内容が変更された。それによって、朝食、昼食後、深夜といった比較的客入りの少ない時間帯に、近くを通った人々を最寄りのバーガーキングに引き寄せようとする狙いだ。
屋外広告が獲得したオーディエンスがどれほどの量なのかを知ることは、最近まで不可能であった。しかし去年から、屋外メディアオーナーであるJCドゥコー(JCDecaux)といった企業は、ターゲットのオーディエンスに合わせてブランドがプランニングとバイイングができるようにしはじめている。JCドゥコーは今回のバーガーキングのキャンペーンも行っている。
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「屋外がデジタルとつながる」
バーガーキングは店舗内に設置されたビーコンを使って、キャンペーン前、中、後の客入りを分析し、キャンペーンの影響を特定しようとしている。ビーコンはバーガーキング内でWiFiを使用している客の数をトラッキングし、訪問数の上下をデバイスの数で記録した。たとえば、バーガーキングで提供される朝食や午前中メニューを宣伝する広告が展開された結果、この期間の店舗訪問客の数が増えた、という具合だ。
今回の試験運用に関して、これ以上の詳細は公開しないという。まだテストから、それほど時間が経っていないこともあるだろう。しかし、英国におけるマーケティングのバイスプレジデントであるレナート・ロッシ氏は、今月頭に開催されたアドテックロンドン(Ad:tech London)で、「屋外の通りが我々のデジタル環境と、さらにつながることができる」と証明されたと語っている。イベントにおいて彼は、訪問客数と売上のデータが混ざったものはアトリビューション分析として明確なものではないかもしれないと、英DIGIDAYに対して認めたうえで、屋外広告を理解し、購入していくうえでの出発点だと語った。2018年には、このモデルをさらに発展させていくと、彼は言った。
「変化をしない広告の購入を突然止めるというわけではない。現在の(屋外広告)の予算の100%をそれ(デジタル式の屋外広告)に注いでしまうと、広告がカバーする範囲があまりにも減少してしまう。それはできない。これは静的な(ダイナミックではない)広告からデジタルへと本格移行をするということではない。両方が今後も共存するだろう」と、彼は語った。
この1年で実施数は3倍に
2017年のはじめには、JCドゥコーが実施するすべての屋外デジタルキャンペーンのうちたった2.5%がダイナミック広告だった。しかし、今年の終わりまでには、その割合は3倍にも膨れ上がったと、JCドゥコーは述べる。事実、2017年はデジタル収益が静的な、従来のメディアによるものをはじめて上回った年となった。
屋外メディアは人々からのダイレクトなアクションを引き出すことができ、より責任を担うようになるだろうと、ロッシ氏は考えている。一番最初にダイナミック広告のビルボードのインプレッションを購入し、それを1年間、売上を伸ばしたい特定のロケーションに割り当てるということも考慮しているという。従来であれば、バーガーキングのような企業はレストラン1店舗につき、一定数の静的広告パネルを購入するという手法をとってきた。しかし、特定のロケーションが持つニーズに、それぞれのメディアバイがどれほど対応できているか、という点では限定されていた。
屋外メディアはバーガーキングにとって、テレビに次ぐ2番目に大きいメディアレイアウトとなっている。しかし、もっとも制限の多いチャンネルでもあると、ロッシ氏は言う。静的な広告に同じメッセージを2週間ただ表示するということは、「最大多数の顧客に当てた」プロモーションしかできないのだ。多数の人にとって魅力的に映るかもしれないが、誰も「自分に訴えてきている」メッセージだとは思わないということが起きる。
Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)