「ハイブリッド型」の内製化、ブランド各社で流行の兆し:マーケティングの新潮流

インハウスのエージェンシーの立ち上げが大流行している。だが、それでもほとんどのマーケターにとって、自社で広告とメディアの全業務をこなすのは大きな負担だ。そんななか「ハイブリッド型」のアプローチが増えている。

いまや分野を問わず、カスタマーとのより直接的なやりとりが全マーケターの目標だといっても過言ではない。実際のメディアバイイングまでの全業務とまではいかずとも、メディアプランニングや戦略など、自社で行う業務を増やしたいという思惑は確かに存在する。つまり、エージェンシーはこれまでのように計画全体に関わるのではなく、実行段階から関与するようになるということだ。

ピュブリシスと連携したマリオット

たとえば、マリオット(Marriott)で最高マーケティング責任者を務めるカリン・ティムポーン氏は、最近マーケティング部門内で新しいチームを立ち上げた。「グローバルマーケティング最適化グループ」という名前のこのチームは、カスタマー戦略全般からメディア、マーケティング、遂行、メディアバイイングといった業務を遂行する。同社にとってこれは新しい取り組みで、グローバルなメディアバイイング全般を扱う新しいメディアグループもこのチームの担当だ。

マリオットはピュブリシス(Publicis)と提携し、ピュブリシスは今年はじめにマリオットワンメディア(Marriott One Media)という専属チームを立ち上げた。マリオットのチームは戦略とプランニングを行い、ピュブリシスの専属チームがそれを実行する。

マリオットは社内でこなすメディアバイイングの割合も増やしており、とりわけ地域の個別のホテルの検索広告に顕著だ。同ブランドの社内エージェンシーもFacebookをはじめとするプラットフォーム各社とメディアバイイングについて直接的にやりとりをしている。ティムポーン氏は「社外のエージェンシーと提携していたときにはできなかったことだ」と語る。マリオットが計画を立てた段階で、ピュブリシスがFacebookを全体の計画に組み込む。つまり戦略というよりは実行を担当することになる。ティムポーン氏は「自分たちの事業にとって何が必要かを考える戦略計画を、社外に頼むわけにはいかない」と指摘する。

ティムポーン氏はチームが何人体制なのかについて言及は避けたが、チームが生まれたのはマーケターがこれまでよりカスタマージャーニーの管理に関わる必要が生じたためだと語った。

メディアプランニングだけを内製

たとえばJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)のCMO、クリスティン・レムカウ氏もインハウスのエージェンシーを効率面から強く勧めているが、インハウスのエージェンシーを実際に立ち上げるのは簡単ではない。立ち上げにかかる費用は高額だし、社内においても高いレベルの取り組みが求められる。各社のCMOも、社内のチームでは扱いきれない新しいトレンドや技術に精通するエージェンシーは、これからも必要との見解を示している。

逆に金融機関ノースウェスタンミューチュアル(Northwestern Mutual)の最高マーケティング責任者を務めるアディティ・ゴーカレー氏は、エージェンシーにすべて外注したほうが良いと考えている。同氏は「効率を考えるなら、大規模なインハウスのエージェンシーを立ち上げるのも決して非常に効率が良いわけではない」と指摘する。

そんななか同社が行った変更は、ゴーカレー氏のチームがメディアとメディアへの支出を決定するようになったことだ。「これまで伝統的にエージェンシーが価格を決めてきたが、そのやり方を変えた。私が管理し、エージェンシーはそれに基づいて実施している」。

いまやほとんどのブランドが

コンサルティング企業アーク・アドバイザーズ(Ark Advisors)の共同経営者であるアン・ビロック氏は、最高マーケティング責任者にエージェンシーとの付き合い方についてアドバイスを送っている。ビロック氏によると、いまやほとんどのブランドが「ハイブリッド型」のアプローチをとっているという。インハウスでエージェンシーのチームを作るのはコストが嵩むし、適切な人材を揃えるのも容易ではない。さらに米DIGIDAYが以前伝えたように、カルチャーの問題もある。ブランドマーケティングの人材はいままでとは違う働き方に適応する必要があるし、主要都市以外で人材を集める難しさも存在する。

クライアント企業はとりわけメディアバイイングの専門家を雇うのに苦労しているようだ。米DIGIDAYが最近行った調査によると、マーケターのうち62%がメディアバイヤーの雇用は難しいと回答している。クライアント企業がメディアバイヤーの雇用に苦労するのは、メディアバイヤーがクライアント企業のなかで出世が見込めるとは考えていないためだ。

インハウス化を進めるブランドが多いなかで、完全にエージェンシーに切り替えているブランドはほとんどないのも、そこに原因がある。GSKで最高デジタル責任者を務めるマーク・スパイチャート氏は、完全なインハウス化は考えていないと語る。いま同社で取り組んでいるのは、マーケターの社内における能力の見極めと、エージェンシーとは異なる方向でどうやってその能力を伸ばすかだという。同氏は「強い態度で臨まなければならない。社内でできることを増やすうえで、エージェンシーにもっと厳しい要求を投げかける必要がでてくるからだ。エージェンシーにはこれまで以上に厳しい要求をしている」と語った。

ビロック氏は「もっとも効率的なエージェンシーとの関係は、ブランド側が戦略を決定しつつも、ブランド戦略をいかに伝えるかという戦略に落とし込むためにエージェンシーの力を借りることだ」と指摘している。

Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)