[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ドイツの製薬会社バイエル(Bayer)が、プログラマティックバイイングのインハウス化を始めてから2年が経過した。同社によると、この1年間にグループ・エム(GroupM)のエージェンシーを外したのち、最初の6週間でプログラマティックバイイング費用を1000万~1100万ドル(約11億〜12億円)削減できたという。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ドイツの製薬会社バイエル(Bayer)が、プログラマティックバイイングのインハウス化を始めてから2年が経過した。同社は過去を振り返っていない。
バイエルのプログラマティック及びソーシャル担当責任者のポール・ゲルブ氏によると、この1年間に グループ・エム(GroupM)のエージェンシーを外したのち、最初の6週間でプログラマティックバイイング費用を1000万~1100万ドル(約11億〜12億円)削減できたという。「プログラマティック入札のメディアでは現在、エージェンシーが相当の価値を提供するのは実際のところ困難だ」と、ゲルブ氏は、5月29日に米テキサス州オースチンで開催されたプログラマティックマーケティングサミット(Digiday Programmatic Marketing Summit)のステージでこう語った。
バイエルのやり方
バイエルのようなブランドがプログラマティックバイイングをインハウス化してきたことから、メディアエージェンシーの役割は疑問視されてきた。一般に、エージェンシーは、複数の顧客に対応するプラットフォームやパブリッシャーと契約を結べるので、こうした大量のバイイングを通じて、ブランドが単独で行うよりも低い料金を勝ち取れると信じられている。
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エージェンシーは、「我々の場合と比べて信じられないほど低い料金にしてもらえる」と、サミットに参加したあるマーケターは述べた。ブランドがインハウス化で節約する金がいくらであっても、エージェンシーを通さないことで直面する割高な手数料を相殺するには十分ではない、とこの人物はいう。
だが、これはバイエルには当てはまらなかった。社名が明らかにされていないあるアドテクベンダーを除いて、同社はエージェンシーを通して支払っていた額と比べて、協働するどのベンダーともより良い料金交渉を行えてきたと、ゲルブ氏は語る。
全体的な支出の変化
バイエルはまだ、テレビ広告のバイイングでエージェンシーと協働し、あるクリエイティブエージェンシーと仕事を続けているが、デジタル広告ではマイティハイブ(MightyHive)以外のエージェンシーとは仕事をしていない。バイエルは2020年までにすべてのデジタルメディアバイイングをインハウス化しようとしているので、ゲルブ氏はマイティハイブを「移行期のエージェンシー」と表現した。
プログラマティックのインハウス化を行うと同時に、バイエルは全体的な支出が大幅に変化してきた。2015年には、バイエルの広告予算の80~90%がテレビ広告に回された。
現在においては、テレビ広告よりもプログラマティック及びソーシャル広告への支出をより増やそうとしている。そこにAmazonを加えれば、バイエルはすでにテレビよりもデジタルに多くの金を費やしていると、ゲルブ氏はいう。
エージェンシーたちの意見
プログラマティックバイイングのインハウス化でバイエルが節約した金は、バイエルがかつて協働していたメディアエージェンシーにとってあなどれない。だが、メディアコム(Mediacom)の北米担当最高デジタル責任者であるスティーブ・カーボン氏は、ブランドがインハウス化に向かうなかでの、エージェンシーの持続的な役割を論証した。
「我々はレバーを引く役割ではないが、助言する役割をまだ担っている」と、同氏はゲルブ氏のスピーチの翌日にステージで述べた。プログラマティックバイイングをインハウス化してきたメディアコムの顧客は、「(メディアコムの)最高のプログラマティック担当者を雇い続けている」と、カーボン氏は顧客名を特定せずに語った。
プログラマティックバイイングのインハウス化を検討する顧客が増え、プログラマティックで十分に経験を積んだ従業員を見つけようと四苦八苦しているなかで、エージェンシーのプログラマティック担当者は存在する理由があり続ける。
プログラマティックバイイングのインハウス化を行ってきた一部のマーケターは、「人材を自社に移させることができなかった」と、カーボン氏のステージに加わったメディアエージェンシー、ウェーブメーカー(Wavemaker)のグローバルチーフプラットフォームオフィサーであるオレグ・コレンフェルド氏は述べた。
人材獲得における明暗
プログラマティック担当者の採用は、バイエルにとっては大きな課題でなかったという。同社のプログラマティックバイイングチームはニュージャージーに設立されており、ニューヨークに通勤せず、より豊かなワークライフバランスを得られるポジションを探していた、買収されたアドテク企業で働いていたベテラン幹部を容易に採用できたからだと、ゲルブ氏はいう。「人々を雇って十分な報酬を払う意思があれば、大都市圏では(プログラマティックバイイングのインハウス化に成功)できないブランドはない」と同氏は語る。
だが、セーフオート(SafeAuto)のようなブランドにとって、こうした幹部にオハイオ州コロンバスに引っ越すよう説得するのは、課題以上になりうる。同ブランドの社内プログラマティックチームは現在、3つの空きポストがあり、「多くの役割をこなしたい人、型にはまった役割を必ずしも求めていない人」を探していると、同社のデジタルメディアスーパーバイザーを務めるクラウディア・ビール氏は、ステージでの個別セッションのなかで語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)