Amazon広告 、ブランドとの「直接取引」をさらに加速

Amazonが、広告契約でブランドとの直接取引をますます進めている。

Amazonはこれまでも、セルフサービス方式のAmazon広告をはじめとする同社の広告事業部門、Amazonマーケティングサービス(以下、AMS)のアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を介して、ブランドとの強く直接的なつながりを維持してきた。とはいえ、プロセスにエージェンシーを含まない、より大きなメディアバイのための大手ブランドとの直接取引は、Amazonにとって未知の領域だ。この件に詳しい消息筋によれば、同社は人員を大幅に増やしつつある販売チームを派遣して、マーケターや最高マーケティング責任者との直接的な打ち合わせをますます頻繁に行うようになっているという。

この試みは、マーケターから特に好評を博している。Amazon広告(Amazon Advertising)はかねてから、広告主に向けた包括的「Amazon戦略」の一部にすぎないと売り込まれてきたからだ。つまりブランドは、広告はもちろん、配送や流通、レビューの管理など、オンラインのAmazonストアが提供するあらゆるサービスについて考えればいい(ピッチではそのように言われている)のだ。

熱狂的な支持者

Amazonでグローバル広告販売/マーケティング部門のバイスプレジデントを務めるセス・ダレール氏によれば、リテールアナリティクスや、なぜ一部の商品は品切れになるのかといったようなデータ、製品やサービスの値段のつけ方といったことの掘り下げを目的として、同社は多数のブランドと直接取引を行っているという。

「最大手ブランドの一部に関しては、たとえばPrime Day(プライムデー)の契約を確保するために小売業界の同業者と協力し、そのうえで販促計画をまとめて、それを成功へと導く可能性もある」と、同氏は話す。

そうしたブランドのひとつが、テクノロジー大手のHPだ。HPはAmazonの熱狂的な支持者だ。同社でメディア部門のグローバルヘッドを務めるダン・サルズマン氏によれば、Amazonはいまや、FacebookとGoogleに次ぐ、第3のメディアパートナーだという。サルズマン氏言うところの「ファネル下部の活動」に関して言えば、HPはAmazonをもっとも役に立ってくれるプラットフォームと考えている。

とくに興味深いのは、何が功を奏しているのかに関する明確な理解をAmazonがもたらしてくれるという点だ。「Amazonの検索やレビューが、HPの顧客の多くが辿るカスタマージャーニーのカギを握っていることを考えると、Amazonの広告プロダクトは、顧客を我々のブランドへと導くための効果的なツールだ」と、サルズマン氏は話す。

直接取引の利点

広告インテリジェンス企業のスタンフォードメディアインデックス(Standard Media Index)のデータによれば、国内の広告主(つまり、フォーチュン500にランクインしているメジャーブランド)からのAmazonの広告売上は、昨年と比べて36%増加している。年度の頭から現在までの期間においては、その大半(約74%)はディスプレイ広告から来ている。

Amazonの第1四半期の業績によれば、広告売上全体は前年比で132%成長しており、20億ドル(約2200億円)に達したという。

HPは、スポンサープロダクト広告やヘッドライン検索広告、商品ディスプレイ広告でAMSと協働しており、社内チームのAmazonメディアグループ(AMG)とも直接取引を行っている。「Amazonとの直接取引の利点は、業務のスピードアップと経営効率の向上だ」とサルズマン氏は語る。

エージェンシーも重要

玩具大手のレゴ(Lego)も、とりわけ検索を目的として、Amazonのサービスを直接利用している。Amazonストアも運営しているレゴは、Amazon広告に費やす資金をますます増やしつつある。米DIGIDAYがすでに報じているように、レゴはAmazonに専用のランディングページを持っている。レゴのライバル企業はどこも、そのページには出稿できない。

Amazonのダレール氏によれば、同社はエージェンシーを利用している小規模のDTCブランドとも直接取引を行っているという。「こうしたブランドは、AMSのセルフサービスツールやDSP(Amazon Advertising Platform[AAP])を活用し、そのうえでAmazonのストア内やデバイス上でブランド認知度を高める方法に関する助言をさらに求めてくる」。

Amazonにとってエージェンシーが重要な存在であることに変わりはないと、同社は間髪を入れずに述べる。同プラットフォームは広告事業の構築を継続して行っており、エージェンシーのバイヤーもますます頻繁に連絡を受けるようになっている。

Amazonの狙い

ブランドとの直接取引は、その有効性がすでに実証されたアプローチだ。Googleも中間業者の排除を狙って同じことを行い、マーケターとの直接取引の数を伸ばした。ワンダーマンコマース(Wunderman Commerce)傘下のコンサルタント会社マーケットプレイスイグニション(Marketplace Ignition)の創業者であるエリック・ヘラー氏によれば、同氏がエクスペディアコーポレートキャピタル(Expedia Corporate Capital)のマーケティングを行っていたころ、Googleはブランドの「接待」に本腰を入れ、彼らに広告を直接売り込みはじめたところだったという。

「Amazonは間違いなく、ブランドとの直接的な話し合いを行っている」と、ヘラー氏は語る。「流行が繰り返すかどうかはよくわからない。だが、Googleによるこの取り組みののち、企業がエージェンシーを切っているという話を聞くようにはなっていないと思う」。

ヘラー氏によれば、Amazonがブランドに直接プッシュをかけている大きな理由のひとつは、大半のケースで同社は、マーケターにとって依然として三番手のパートナーの状態が続いているからだという。Amazonが同社事業のこの側面の拡大を望むのであれば、改善を行って、エージェンシーやプラットフォーム上の小規模販売業者を超える必要がある。

「中間に位置する存在」

もうひとつの問題(おそらく、こちらのほうが解決は難しいだろう)は、いまだに消えない、広告プラットフォームであると同時に小売り企業であるAmazonの役割に対するブランドの懸念だ。ブランドは、もしAmazon広告に金をかければ、その金はAmazonに注ぎ込まれることになる点を心配している。Amazonはプライベートブランド事業を拡大しつつある。したがって、ある意味で、その行動は自社のライバルを助けることにつながるのだ。テネシー州ノックスビルに本社を構えるエージェンシー、トンブラスグループ(Tombras Group)でバイスプレジデントを務めるケビン・パックラー氏によれば、同氏は常々クライアントに、Amazonは「純粋な意味でのライバルでもなければ、広告プラットフォームでもない。その中間に位置する存在だ」と言っているという。

そう考えたほうが、Amazonが介入し、ブランドに直接話を持ちかけて同社の価値を売り込んでいることにも納得がいくとパックラー氏は述べる。

「カスタマイズされたアプローチが注目されるたびに、Amazonならエージェンシーを利用するよりも直接的な会話で事に当たるはずと思っていた」。

ブランドについて言えば、プラットフォームとの直接取引は、データドリブン化の促進やメディアの掌握を試みているマーケターと密接に結びついている。大手自動車メーカーの日産でヨーロッパ方面のマーケティングを担当するバイスプレジデントのジャン=ピエール・ディエルナ氏によれば、概して同社は、四半期レビューを参考に、GoogleとAmazon、Facebookのいずれとも親密さの度合いを深めているという。「彼らは、データドリブン化の促進に向けた我が社の計画にとって不可欠な存在になりつつある」。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)