[ DIGIDAY+ 限定記事 ]一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)に従わなければならないプレッシャーにより、広告主たちは、よりよい決断が下せる状況下にある。しかし、それでもGoogleとFacebookでお金を使い続けている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)に従わなければならないプレッシャーにより、広告主たちは、よりよい決断が下せる状況下にある。しかし、それでもGoogleとFacebookでお金を使い続けている。
多くの広告主は安全を優先し、オンラインで人々をターゲット化するのに利用できるファーストパーティデータを大量にプールしている企業に、より多くの予算を投じている。しかしそれは、広告主がGoogleとFacebookのパフォーマンスを享受していると同時に、独自評価できる力を犠牲にすることでもある。GoogleとFacebookがGDPRを遵守しようとするなかで、両者は独自のアトリビューションと測定企業と共有するデータの量を制限しているため、過去12カ月のあいだでこのパラドクスが強まってきた。独立した視点がなければ、広告主は、GoogleやFacebookのようなプラットフォームで買われた広告が、彼らがいうとおりに効果的だったと信じるしかない。
スコットランド王立銀行(Royal Bank of Scotland)の最高マーケティング責任者(CMO)であるデビッド・ウェルドン氏は、DIGIDAYブランド・サミット・ヨーロッパ(Brand Summit Europe)で次のように話した。「そうしたプラットフォームは、理論上では効率的で効果的だが、実際には、プラットフォーム側が提供する計測の有効性をテストすることは難しい。彼らは、組織の最高レベルを引き込むのが得意な組織だ。大半の役員がシリコンバレー見学ツアーに参加し、話を聞いて驚愕して戻ってくる。上級マーケターとしては、そうしたビジネスに挑んでいく自信がなければならない」。
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マーケターたちの懸念
ウェルドン氏のような上級マーケターは長年、ウォールドガーデンに抵抗し続けてきたが、その効果は限定的だ。彼らは、彼らのパフォーマンスを格付けするようなプラットフォームに頼りたくないと思っているが、そうしたプラットフォームがもたらすユーザー数というとてつもない価値ゆえに、それらを見限ることもできずにいる。しかし、GDPRの施行以来、その閉鎖的なエコシステム内により多くのデータを統合しようとするGoogleとFacebookのやり口は行き過ぎだと感じているマーケターもいる。
GDPR施行前の2018年5月、Googleは、広告主が外部技術を使ってオーディエンスを追跡したり計測したりすることを禁止した。そのとき、世界的に有名なある広告主が警鐘を鳴らした。あるメディア部門責任者は匿名を条件に、マーケターたちは、自社のプログラマティック広告のプランがGoogleによる将来の制限にどのような影響を受けるかを考えはじめたと話してくれた。大きな問題は3つある。Googleがアドサーバーをデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)と統合すると決めた場合、価格にどんな影響が出るか? 広告主はアドサーバーを単体で利用できるだろうか? 仮にそうなったとしたら、広告主はすでに支払っているのと同様の広告料を払うだけでよいのか、あるいは追加のDSP料金を払わなければならないのか?
「Googleの行動を見ると、同社のDSPの顧客にアドサーバーを無料で利用させ、『悪魔の囁き』でより多くの広告主をそそのかそうとしていると、私は思う」と、このメディアディレクターはいう。「我々はそのような動きの結果に対処できなければならないので、我々のビジネスにフラグを立てるのはリスクだ」。
これは、ヨーロッパ人に狙いを絞る広告主にとっても難問だ。
ターゲット広告めぐる現状
マーケティング部門のある責任者が匿名を条件に話したところによると、広告主がGoogleとFacebookから広告を買うことをやめたら何が起きるかを見るために、2018年にはいくつかのシナリオが用意された。Googleのようなウォールドガーデンのなかで購入することと、独立系のアドテクベンダーに乗り換え、独自のアドテクの外側にいるパブリッシャーやネットワークのドメインをホワイトリスト化することは同様に簡単なことだ。しかし、その決断は、ヨーロッパの広告主のマーケティング責任者が気づいたように、ロジスティクス的、政治的に窮地に陥る可能性がある。
「我々は究極のテストをして学びたかったし、売り上げ確保がこれらのプラットフォームに直接帰属すると感じていたので、誰もがピリピリしていた」と、このマーケターはいう。一方、このマーケターは、GoogleもFacebookもより多くのデータを共有することになるとの確信を持つことができた。どちらのプラットフォームも、資金力のある広告主とのデータ共有には素直に応じることで有名だからだ。
GDPRがFacebookの広告ビジネスに影響を及ぼしつつあるサインもある。GDPRの施行以来、アプリや訪問先のウェブサイトでコンテキストを利用するにあたり、ターゲット広告を表示しない選択をする人の数が増え続けていると、Facebookの最高財務責任者(CFO)であるデイブ・ヴェーナー氏は、2019年4月の決算報告で話した。ヴェーナー氏は「ヨーロッパでも世界のほかの地域でもこれが起こっている。つまり、人々はより関連の薄い広告を見ているという意味で、これは我々のターゲット広告ビジネスには逆風になる」と語った。
デュオポリーめぐる動き
アドエクスチェンジャー(Adexchanger)はブリティッシュ・ガス(British Gas)がGoogleの利用を控え、自社でコントロールできる独立系アドテクベンダーに乗り換えたと伝えたが、アドエイジ(AdAge)によると、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)のようにすべてのアドテクをGoogleに統合したところもある。そうした広告主にとっては、スケールアップやイノベーションを考える際に、ベンダーが制限されているので、世界最大のGoogleでより多くのお金を使うという選択が容易になる。「Googleと仕事をすることには課題も多いが、我々の広告が本来の効率と効果を発揮できるようにしてくれる最高の技術を彼らは持っている」と、消費財広告主のプログラマティックメディア部門責任者(匿名希望)は述べる。
データシュー(DataXu)のCEO、マイク・ベーカー氏は、こうした視点は、間違いなく競争を阻害するものであり、2大企業に市場の力を一層集中させ、長い目で見ると価格の高騰やマーケター側の選択肢の減少を意味すると語る。
GoogleとFacebookが広告主に魅力的に見えるメカニズムは偶然にも、独占を取り締まる当局の目には、まさに独占の証拠と映るものだ。テクノロジー界の巨人たちによる、いわゆる「ネットワーク効果」は、ここ数年、世界中の議員や政治家にとって注目の話題となってきた。競争と反トラストの専門家であるデジタル・デシジョンズ(Digital Decisions)のアレクサンドラ・ラドゥレスク氏は、自社にかかる圧力の増加に彼らがどう反応するかをこれから見ていくことになるだろう、と話した。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)