TikTokクリエイターのマネジメントを行うタレントX・エンターテイメント(TalentX Entertainment)は最近、ゲームカテゴリーにTikTokのスターを引き込んでいる。TikTokは動画プラットフォームで、Twitchのような配信プラットフォームと競合するポテンシャルがあると睨んでいるのだ。
マックス・ドレスラー氏とジェイソン・ウォード氏は、それぞれTikTokで440万人、270万人のフォロワーを持つインフルエンサーだ。
現在17歳のウォード氏は3年前にTikTokを使いはじめた。同氏はダンスやコメディ動画を作成して投稿している。一方、18歳のドレスラー氏は昨年夏にTikTokをはじめ、リアクション動画で有名になった。
かつてドレスラー氏とウォード氏の収入の大部分は、ツアーやオフ会での商品販売だった。だが、こうしたイベントがコロナウイルスの感染拡大と、それに伴なう在宅指令によって中止になり、両氏はほかの収益源を探す必要に迫られた。
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そしてたどり着いた答えがゲームだった。
ふたりのコンテンツは、いまでもダンスやコメディが主だが、自身が大のゲーム好きであることもあり、今後数カ月はゲームが重要な役割を担うだろうとしている。
「TikTokにとってゲームは新しい、これまでと異なる分野だ。自分のページへの注目も集まるだろう」と、ウォード氏は語る。
ゲームに注力するTikTok
タレントX・ゲーミング(TalentX Gaming)のCEO、ジェイソン・ウィルヘルム氏によれば、TikTokにおけるゲームコンテンツはゲームのクリップやハイライト、ニュースといった内容が大半だという。だが、TikTokの新CEOケビン・メイヤー氏はすでにゲームのプレゼンスを高めること、とりわけゲームのライブ配信機能の充実をプラットフォームとしての目標に掲げている。TikTokの親会社であるバイトダンス(Bytedance)はすでにゲーム分野へ力を入れており、特に中国では新たにゲーム部門を立ち上げて自社製のゲームを制作している。
1月にTikTokはエピック・ゲームズ(Epic Games)と提携し、フォートナイトをテーマとする新しい絵文字について、TikTokユーザーから#EmoteRoyalContestのハッシュタグで意見を募集した。そして5月にTikTokは、カレージエイト・スターリーグ(Collegiate StarLeague)と提携して、eスポーツ大会を開いている。TikTokの広報担当は、この夏にさらにゲームコンテンツを増やす予定と述べている。
ゲームのスタープレイヤーのうち、たとえばニンジャ氏のYouTubeチャンネル登録者は2360万人となっている。同氏はYouTubeと同様、TikTokでもゲーム動画の投稿をはじめている。ニンジャ氏のTikTokアカウントのフォロワーはすでに320万人となっており、いいねの数は1730万を超える。
次世代の大物クリエイター
タレントX・エンターテイメント(TalentX Entertainment)は、TikTokのクリエイターのマネジメントを行っている企業だ。同社にはウォード氏やドレスラー氏以外にもスウェイ・ハウジーズ(Sway Houses)のメンバーのジョシュ・リチャーズ氏、グリフィン・ジョンソン氏、アンソニー・リーブズ氏、ブライス・ホール氏、キオ・シール氏やジェイデン・ホスラー氏などが名を連ねる。そんな同社は最近、eスポーツ企業のレクトグローバル(ReKTGlobal)と提携してタレントX・ゲーミング(TalentX Gaming)を立ち上げた。このジョイントベンチャーの目的は、すでにYouTubeやTwitch(ツイッチ)で確立した分野であるゲームカテゴリーにTikTokのスターを引き込み、TikTokにおけるゲームコンテンツを拡大することにある。
「こういったTikTokのスターたちは、次世代の大物デジタルクリエイターだ。ゲーム分野において彼らの前に大きなチャンスが広がっている」と、先述のウィルヘルム氏は語る。同氏は自身も2011年にYouTubeでコール・オブ・デューティー(Call of Duty)のゲーム動画を投稿し、YouTuberとして活躍した経歴の持ち主だ。
TikTokのスターはプレーするゲームを宣伝することもできる。たとえばライブ配信するゲームの広告や、ゲーム会社との提携といった機会が生まれるのだ。
「TikTokでゲームをはじめれば、Xboxに対して『来年発売するタイトルに参加させてくれ、自分もすごいゲーマーなんだ』と主張できる。クリエイターにとって新たな収益源になるだろう」と、ウィルヘルム氏は語る。
Twitchと競合できる可能性
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)によれば、TikTokの3月24日のデイリートラフィックは、1月21日と比べて15%増加している。
TikTokは動画がメインのプラットフォームであり、Twitchのような配信プラットフォームと競合するポテンシャルがあるとウィルヘルム氏は指摘する。
「もし迅速に取り組めば、配信市場全体を取り込めるほどのチャンスがある」と、同氏は語る。「TikTokユーザーはゲーム好きが多い。TikTokでゲームを配信できるなら、すぐにはじめる人は多いだろう。非常に手軽に始められるし、広告による収益化も容易だからだ」。
「ゲームブランドとインフルエンサーの提携はすでに確立したシステムだ。報酬もほかのカテゴリーより非常に高いことが多い」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのオビアスリー(Obviously)の創業者であり、CEOのメイ・カーワウスキー氏は語る。「まず単純に、ゲームでたくさんのオーディエンスを集められるようなクリエイターは限られている。さらにこういったクリエイターには、ゲームに時間や金を費やすことに躊躇のない熱心なターゲットオーディエンスがついてくるのだ。ゲームブランドたちにとって、その価値は極めて大きい」。
TikTokスターたちの未来
ウィルヘルム氏は米DIGIDAYに対し、TikTokのスターたちがより多くのゲームコンテンツを投稿し、YouTubeやTwitchに進出する手助けをしたいと述べている。こうしたプラットフォームでは、ゲームを録画して広告をつけ、収益化することも行われている。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)の共同創業者でありCEOのジョーギャグリース氏は「TikTokではインフルエンサーへの報酬が業界ごとに定められている。そこでインフルエンサーたちはYouTubeやインスタグラムといったより報酬の高い傾向にあるプラットフォームに目を向けている。特にゲームカテゴリーの報酬は顕著に違う」と語る。
「インスタグラムではエンゲージメント率が30から40%あり、それを収益化に結び付けられれば、もはやデジタルクリエイターとしては大物だ」と、ウィルヘルム氏は語る。「TikTokスターのファンは、スターが行くところについていく。ゲームに移行するにはこれ以上ないタイミングだ」。
Vineスターたちと似た状況
同氏は現在のTikTokクリエイターは、数年前のVine(ヴァイン)のスターと似た状況にあると語る。「かつてのVineのスター、たとえばデイビッド・ドブリク氏やローガン・ポール氏はいまや世界最大のデジタルクリエイター、デジタル業界のメインストリームとなっている。そして彼らのファン層は、TikTokのスターたちのそれと非常に似ているのだ。いずれもカルト的な人気を誇っている」。
Vineのスターたちは、オーディエンスとともにインスタグラムやYouTubeへと移行した。ウィルヘルム氏は、TikTokのスターはファン層を活用してオンラインのゲーム業界でキャリアを築けるはずだと指摘し、次のように述べた。
「ゲームはプラットフォームにおける新たな収益源なのだ」。
JAMES WELLEMEYER(原文 / 訳:SI Japan)