今シーズンのニューヨーク・ファッションウィークのまとめとして、3人の業界関係者に、2022年秋のショーで気づいた変化や、パンデミックがファッションウィークに長期的な影響を及ぼすかどうかについてなど、NYFWの現状と未来について討論してもらった。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ファッション月間は変化しており、ここ2年で進化が加速している。そこでGlossyでは、今シーズンのニューヨーク・ファッションウィークのまとめとして、3人の業界関係者にこのイベントの現状と未来について討論してもらった。
プラスサイズのデザイナーズファッションeテイラーである11オノレ(11 Honoré)のデザインディレクター、ダニエル・ウィリアムズ・エケ氏、NYFWプロデューサーのIMGフォーカス(IMG Focus)でプロダクション・シニアディレクターを務めるグレース・ロウ氏、そしてファッションマーケットプレイスのジ・イエス(The Yes)のクリエイティブ&ファッションディレクターであるテイラー・トマシ・ヒル氏の3人が、2022年秋のショーで気づいた変化や、パンデミックがファッションウィークに長期的な影響を及ぼすかどうかについて意見を述べた。Glossy+の会員限定イベントは、これらのパネリストたちがNYFWの未来に希望を託して終了した。以下は、持続可能性、ダイバーシティ、インクルージョンの向上に重点を置いたパネリストたちの最終的なコメントである。イベントの全容については、下記の動画で見ることができる。
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トマシ・ヒル氏(ジ・イエス)
私は間違いなく楽観的でいるが、私たちはペースの早い業界であると同時に、変化が遅い業界であるということも認識している。ファッションウィークのロケーションなど、まだ取り組んでいないが、簡単に解決できる課題がたくさんある。
ブランドがよりサステナブルな方向へ移行していくことについてみんなが話しているが、結局のところ、実際には非常に金と時間がかかり、とても進みの遅いプロセスであることも全員がわかっている。たとえば、今年のメイン会場はスプリングスタジオ(Spring Studios)で、かつてはミルクスタジオ(Milk Studios)だったが、そこに行けば一度に多くのショーやプレゼンテーションを見ることができる。だが、いまだにひとつのショーのためだけに橋を渡ってみんなでブルックリンまでぶらぶらと歩いて行っているという事実がある。これは持続可能なことではない。絶対にもっとうまくやれる形があるはずだ。人々がどこでショーをしたいのかをなぜ把握しないのだろうか。その上で、ブルックリンで1日、ロウアーイーストサイドで1日という形にするのか。刺激的なものになる可能性はある。ショーを歩いて回れるようにする。 ニューヨークは歩き回れる街だ。ファッションウィークを真に持続可能なものにするために実際にやれることは、大いに実行可能なのだ。サステナビリティとインクルーシビティの動きは、間違いなく大きくなることだろう。
ロウ氏(IMGフォーカス)
私が大きく情熱を傾けているのがサステナビリティで、オーストラリア・ファッションウィークではサステナビリティの取り組みをリードした。それこそ私がここニューヨークでも本当に展開する手助けをし、推進していきたいことだ。ニューヨークではショーの場所を選ぶにあたって団結する必要がある。制作の観点からすると、クリエイターはみな、非常に個性的なクリエイティブのビジョンを持っており、他者よりも目立ちたいと考えている。個性的な体験を作り出そうとすることこそが私たちの仕事の大部分である。だが、私はブルックリン・デイというアイデア、ひとつの決まった会場にショー集中させるのではなく、より広いエリアに集まろうという発想は好きだ。非常に多くのデザイナーの目的にかなう、すばらしい特定のロケーション、あるいはハブとなるものがスプリングスタジオにはある。デザイナーたちはみんなそこを独自の方法で使用している。でも私はエリアを選択するというアイデアはよいと思う。全般的に持続可能性とは、私たちが行うすべてにおいて未来への道だ。
またコレクションに関しても、デザイナーは常に適応し、革新し、生産プロセスを改善したいと思っている。そうした点にまつわるサステナビリティは間違いなく変化していくだろう。ダイバーシティにも同じことがいえる。ランウェイや舞台裏における多様性ということだけでなく、コレクションという意味でもそうだ。サンプルを制作する際にほかのサイズを取り入れることは、デザイナーにとってかなり重荷となるし、そのあたりは変えていかなくてはならない。そうしたプロセスをもっと簡単にすることが、前に進むための唯一の道だ。そのアプローチについて、もっと多様にならなくてはいけない。
ウィリアムズ・エケ氏(11オノレ)
当然ながら、さまざまなレベルで意味のある方法で(NYFWに)参加したいと思っている。それがフルのランウェイショー(の主催)なのか、ディナーやイベント付きの小規模なランウェイショーなのか、形は問わない。この時期、つまりファッションウィーク中にこのコミュニティに姿を現すことが、本当に重要なのだ。私たちはより大きなコミュニティを代表していて、そのことを肝に銘じている。それとともに私が望んでいるのは、ランウェイがよりインクルーシブに、サイズインクルーシブになることで、実際それも目にしている。たとえばクリスチャン・シリアーノ氏は、さまざまな体型、サイズ、民族、ジェンダーなど、何であれショーに参加させるというすばらしい仕事をこれまでもやってきており、それが継続していることを目にしてわくわくしている。
最後に私が望むのは、さらなる多様性だ。この業界にいる黒人や褐色のデザイナーたちの声を増幅させるイベントを企画すればするほど、集団として団結することができる。最終的にはそれが目標となるべきだ。私たちの消費者はみな同じ。たったひとりの消費者が存在するのではなく、私たち全員がこれらの商品を消費している。ではどうすれば、これらの服を買っているすべての男女に向けて、確実に語りかけることができるのだろうか。
Glossy+ Future of Fashion Week from Digiday Media on Vimeo.
[原文:Video: Fashion insiders propose a more sustainable, walkable NYFW]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)