この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。 今日の美容業界に投資するにあたって、あまりにも先進的なもの、あるいは科学に裏打ちさ […]
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
今日の美容業界に投資するにあたって、あまりにも先進的なもの、あるいは科学に裏打ちされているものは存在しない。
これが、ベンチャーキャピタル「Hベンチャー・パートナーズ(H Venture Partners)」の考え方だ。同社のポートフォリオには、麻から抽出されるカンナビジオール(CBD)を用いるブランド「プリマ(Prima)」、クリーンさを打ち出すZ世代のスキンケアブランド「キンシップ(Kinship)」、カーリーヘアのためのサロン「ナザ・ビューティ(Naza Beauty)」などがある。マネージングパートナーを務めるエリザベス・エドワーズ氏が立ち上げたHベンチャー・パートナーズは7月のデビューファンドで、消費者や小売業の専門家75名から1,000万ドルを調達した。女性や有色人種が立ち上げた会社に焦点を当て、1社あたり平均50万ドルを投資している。
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「皮膚の問題に取り組む微生物学者や、口腔ケア技術を検討する生化学者などといった科学者と話すことに、私は多くの時間を費やしている」とエドワーズ氏。「投資は、科学であると同時に金融でもある」。
エドワーズ氏はHベンチャー・パートナーズの投資哲学の背景や、美容領域で強気の見通しを示すもの、そしてD2Cブランドにうんざりしている理由をGlossyに語った。以下は分かりやすさのため要約し、編集を加えたものである。
あなたが美容業界でもっとも興味を持つ領域は?
「我々は現在、肌トラブルについて深く掘り下げている。スキンケアの中には、フォトショップ加工されたような美しさをどのように実現するかという美の側面を打ち出したものがある。その一方で、発疹や、原因不明の物質に対する副反応に悩む人々に、フォーカスを当てたものもある。私がいま楽しみにしているのは、ファージテクノロジーの領域だ。バクテリオファージは、米国では食品に使用されている技術だが、ニキビや湿疹、乾癬での使用例もある。
ホルモンが健康に与える影響についても、興味を持っている。最近は、メノポーズテクノロジー(更年期向けのテクノロジー)を扱うキンドラ(Kindra)に投資したばかりだ。更年期は人口の51%が10年間にわたって大きな変化を経験し、イライラ、不眠、髪や肌の変化、そして体全体の健康に影響が現れる。男性も女性も自身の健康を管理し、ホルモンに何が起きているのかを理解できるよう、解明しようとしている企業は数多くある」。
あなたの投資戦略は?
「アーリーステージの投資家である我々は、必ずしも銀行のように過去5年の業績推移を見るわけではない。何よりもまず見るのは、チームとテクノロジーだ。我々にはスコアカードがあり、これは過去10年間で絶えず更新してきた。もっとも重要なのは、マネジメントチーム。なぜならB評価のマネジメントチームは、A評価の製品で10億ドル規模のブランドに育てることはできないが、A評価のマネジメントチームはB評価の製品でも方法を見出せるからだ。多くの場合、それはドメインの専門知識によるもの。美容ブランドやスキンケアブランドを立ち上げるならば、果たして美容関連に時間をきちんと費やしてきたのか? これがなぜ重要かというと、その分野の専門知識がなければわからないことが多いためだ。
分野に関する専門知識と、チャネルについての専門知識、さらに過去のブランドのエグジット(投資資金の回収)や損益についての専門知識について見ている。また3万種類もの消費者向けカテゴリーを追っているほか、現在は美容やヘアケアなどのカテゴリーについては毎年深く掘り下げ、機会を探している。そうするとカテゴリー内で同じテクノロジー(例えばファージのような)を持つブランドを、同一条件で比較することができるようになる。こうすると最終的に、そのカテゴリー内で最高のブランドを選ぶことができる」。
ブランド側への関心が無くなった理由は?
「厳密に消費者との直接取引を生業とするD2Cブランドの中で、ビジネスを支えるだけのAOV(平均注文額)を売り上げているところは、現時点ではほとんどない。過去10年間でFacebook、Instagram、Googleの広告費は毎年3倍のペースで伸びた。つまり10年間で30,000%ということで、これは費用が高くつく販売方法だ。同様に、送料もD2Cにとって課題だ。配送業大手USPS(米郵政公社)は8月末に、送料を引き上げた。AOVがペロトン(Peloton)のように高くない限り、D2Cは留まるには危険な分野だ。
パーソナライゼーションについても、大好きと大嫌いの両方の感情をあわせ持っている。パーソナライズされたブランドはD2Cの事業モデルに100%どっぷりと浸かるものだが、リテールで生き残れるブランドなのかどうか、評価する必要がある。だとするなら、どのように行うのか?
パーソナライゼーションに対するもうひとつの疑問は、果たしてそれをやるだけの価値があるかという点だ。ほかの何よりもはるかに優れた体験や製品を提供しなければ、摩擦が発生してコストが増すだけだ。これではまるで、すべて記入して返送し結果の到着を待つ自宅診断キットのようなもので、消費者に多くの労力を強いている」。
[原文:VC Elizabeth Edwards: ‘DTC is a very dangerous space to be stuck in’]
EMMA SANDLER(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)