JCペニー(JCPenney)の新しいパートナーで、ビューティeコマースのスタートアップであるサーティーンルーン(Thirteen Lune)は、女優のコンスタンス・ジマー、モデルのラーセン・トンプソン、インフルエンサー […]
JCペニー(JCPenney)の新しいパートナーで、ビューティeコマースのスタートアップであるサーティーンルーン(Thirteen Lune)は、女優のコンスタンス・ジマー、モデルのラーセン・トンプソン、インフルエンサーのステファニー・シェパードといったセレブリティのインスタグラムで宣伝されているが、これは有料のインフルエンサープロモーションではない。
無償PRを行うブランドコミュニティ
これはネット小売業者であるサーティーンルーンが独自につくったバンガード(Vanguard)というグループに属する数人のメンバーによるものだ。このグループは有名人やインフルエンサー、そのほかの著名人で形成されており、オンラインにて無料でサーティーンルーンを支持している。美容業界にはこの種のグループがほかにも存在する。ヒューマンレース(Humanrace)、キーズソウルケア(Keys Soulcare)、セイロンスキンケア(Ceylon Skincare)など、ますます多くの新しいブランドがオンライン上でブランドを無償で推奨する一般向けコミュニティを築いている。ブランドにしてみれば、このブランド認知のオーガニックな手段は従来のインフルエンサーとの有料契約で行うものと違ってスポンサードを感じさせないコンテンツとなる。
「サーティーンルーンは本物であること、そして本物のストーリーを伝えることを重視している。そこで私たちは、ミッションドリブンなビジネスや業界初の包括的な小売プラットフォームのサポートという、当社の精神とビジネスの一部を創業当初から活用したいと考えた。そしてそれはお金を支払うべき類のものではないと思えた」と、サーティーンルーンの創業者でCEOのネケイオ・グレコ氏は述べている。
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サーティーンルーンのバンガードメンバーには、女優のセルマ・ブレアやナオミ・ワッツ、メイクアップアーティストのケイティ・ジェーン・ヒューズやモニカ・ブランダーのほか、モデル、テックエクゼクティブ、ブランド創業者などが名を連ねている。同社は2020年12月のローンチ以来、有料のインフルエンサーやセレブリティによるマーケティングを一切行っていない。ワッツ氏など、サーティーンルーンのバンガードメンバーの一部は投資者だが、大半のメンバーはそうではない。
「メンバーはみな初日から、というよりも2020年の夏よりもずっと以前から、大きな変化を生み出すことに本当に情熱を傾けている人々だったので、ぜひバンガードの一員になってほしいと依頼した」とグレコ氏は言う。
消費者のインフルエンサー疲れ
そのほかのブランドにも似たようなグループが存在する。たとえば音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムス氏が立ち上げたスキンケアブランドのヒューマンレースには、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター氏などをメンバーとするウェルビーイングス(Well Beings)があり、シンガーのアリシア・キーズ氏の新しいブランドであるキーズソウルケアは、ライトワーカーズ(Lightworkers)と呼ばれるブランドコミュニティを設けている。大物セレブは無報酬で自分の好きなブランドを宣伝するだけの金銭的な余裕があるが、そうではないマイクロインフルエンサーにもこのようなモデルが活用されている。スタートアップのセイロンスキンケアでは、スタートアップの創業者たちやクリエイター仲間を集めてシティボーイズカウンシル(City Boys Council)というグループをつくっている。
こうしたグループは、消費者が「インフルエンサー疲れ」、あるいはインフルエンサーのコンテンツは本物ではないという感覚を経験している時期に形成されている。
「インフルエンサー疲れとは、つまるところ本物ではないと感じることがままあるからだ。インフルエンサーは何かをやるのに、結局は金をもらってそれをやってるんだろうと思ってしまう。その点ライトワーカーズのコミュニティは、ブランドのためだけでなく互いのつながりを育むために存在しているので、インフルエンサーとは100%違う」と話すのは、キーズソウルケアの親会社E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)のブランドエクステンション・シニアディレクターのニコール・カートリー氏だ。
キーズソウルケアのファンなら誰でもライトワーカーズのメンバーになることができる。医学博士のディーパック・チョプラ氏、バレエダンサーのミスティ・コープランド氏、俳優のリッキー・トンプソン氏など、ブランドのイベントやコンテンツに参加した著名人なども一員である。
ブランドを自主的に支えるコミュニティ
こうしたグループのメンバーはそのブランドのさまざまなコンテンツの制作にかかわっている。ブランドのサイトやソーシャルコンテンツなどの記事やポッドキャスト等で紹介されることが多く、またメンバー自身が記事を書くケースもある。そのほか、ブランドのイベントに参加したり、ブランドを支援するコンテンツを投稿したり、製品をテストしたりすることもある。
サーティーンルーンと同様に、セイロンスキンケア(サーティーンルーンで販売されている)も、従来のインフルエンサーマーケティングには一切費用をかけていない。同ブランドのシティボーイズカウンシルのメンバーは、ソーシャルメディアのコンテンツに登場したり、ブランドの刊行物に執筆したりするほか、毎月開催されるクラブハウス・トークへの参加や、ブランドのためにスポティファイ(Spotify)のプレイリストの作成なども行っている。今年の第4四半期には、同ブランドではメンバーを起用したデジタルTVシリーズを制作するメディア部門を立ち上げる計画だ。
「我々はただお互いが好きなだけ。それが本当の愛というものだ」とセイロンの創業者でCEOのパトリック・ボアテン氏は言う。「我々はメンバーに『さあ、これを投稿してくれ、コンバージョン率はこれくらい、指標はこれくらいだ』とは言わない」。このモデルはインフルエンサーマーケティングに関する従来の取引の概念を否定するものだ。
「私は『コミュニティ』という言葉が大好きだ。この言葉は長年にわたって使い古され、乱用されてきた」と話すのは、レザーグッズブランドのキャル&ケイ(Cal&Kay)の創業者で、セイロンのカウンシルメンバーでもあるクワメ・ギャレット=プライス氏だ。彼はセイロンのソーシャルコンテンツに登場し、ブランドの刊行物に彼の愛についての記事を書いている。「もし彼らが私に金を払おうとしていたら、同じことをやっていたどうかすらわからない。そういうことは気にしない。すべては愛。それでなんの問題もない」。
インフルエンサーコンテンツへの不満
ブランドは「#sponcon(スポンサードコンテンツ)」の時代にインフルエンサーコンテンツをいかに本物に近づけるかについて長い間頭を悩ませてきたが、パンデミックの際、消費者は特に意欲的なインフルエンサーコンテンツに対して不満を抱くようになった。
トレンド予測会社スタイラス(Stylus)でビューティー・ファッション・APACアドバイザリーを率いるサイサンギース・ダスワニ氏は「パンデミックによって、時代にあわないと思われる発想に対する認識が高まり、それが加速した」と指摘する。「日常の消費者の多くは、こうしたインフルエンサーたちは特権的なバブルの中で生活していると感じている」。
ブランドのグループに参加するメンバーは、ファレルやアリシア・キーズといった有名な創業者とともに注目度の高いイベントに参加したり、あるいは小さなブランドのスタートアップを相互に宣伝したりすることで、自分たちの知名度を上げることができる。しかしメンバー全員がそうした関係は取引ではないと主張している。
「友人にそうしろと頼まれたからって『いいよ、ぜひやらせてくれよ』とは絶対に言わない。そういうレベルで活動しているんじゃない。我々がやっているのはそういうノリではないんだ」とボアテン氏は述べている。
[原文:The anti-influencer model]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)