景気変動が続くなか、この1年はベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ業界にとって厳しい年となっているが、この分野を他よりもうまく乗り切っている企業もある。
2022年4月、プライベートエクイティ企業のストライドコンシューマーパートナーズ(Stride Consumer Partners)は、4億2000万ドル(約605億円)で応募超過の1号ファンドを調達した。同チームはすぐにスキンフィックス(Skinfix)やパトリック・タ・ビューティ(Patrick Ta Beauty)といったブランドへの投資を開始している。ストライドコンシューマーパートナーズは、全般的に美容、食品・飲料、アクティブ・ライフスタイルに焦点を絞る。同社のオペレーティングパートナーのニコール・フォーゴックス氏は、同社の投資哲学は差別化された視点や拡張可能なビジネスモデル、強力な創業者のストーリーを中心に据えていると話す。
さらにフォーゴックス氏は、プライベート市場で目にしているものや追っているトレンド、D2Cカテゴリーへの期待についてGlossyに語った。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
景気変動が続くなか、この1年はベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ業界にとって厳しい年となっているが、この分野を他よりもうまく乗り切っている企業もある。
2022年4月、プライベートエクイティ企業のストライドコンシューマーパートナーズ(Stride Consumer Partners)は、4億2000万ドル(約605億円)で応募超過の1号ファンドを調達した。同チームはすぐにスキンフィックス(Skinfix)やパトリック・タ・ビューティ(Patrick Ta Beauty)といったブランドへの投資を開始している。ストライドコンシューマーパートナーズは、全般的に美容、食品・飲料、アクティブ・ライフスタイルに焦点を絞る。同社のオペレーティングパートナーのニコール・フォーゴックス氏は、同社の投資哲学は差別化された視点や拡張可能なビジネスモデル、強力な創業者のストーリーを中心に据えていると話す。
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さらにフォーゴックス氏は、プライベート市場で目にしているものや追っているトレンド、D2Cカテゴリーへの期待についてGlossyに語った。
ーーストライドコンシューマーパートナーズの投資哲学は何か?
「私たちは、中間市場や下位中間市場の成長株資産に注力している。消費者の深い関与と高いレベルのブランドロイヤルティがみられる、いわゆる『情熱的』なカテゴリーに重点を置いている。それがストライドが美容、食品・飲料、アクティブ・アウトドアの3つのセクターのみに焦点を絞っている理由だ。市場において魅力的な差別化ポイントがあり、持続力や独特な創業者ストーリーのあるブランドだということを示す、強力な実績のあるトップアセットに注目している。最終的には世界的に成長し、進化していく可能性があり、10年後にも通用するような、ブランドエクイティの礎となるストーリーがあることが非常に重要だ。ビジネスの観点からも重要な分野がある。私たちは明確なコンセプトの実証を必要としており、そのコンセプトが機能し、なおかつスケールアップできることが証明されていなくてはならない。それはトップラインの観点から実行可能であり、収益性への明確な道筋がなくてはならない」。
ーー景気変動はプライベートエクイティの分野にどのような影響を与えているか?
「一般的に、美容市場は回復力があるため、相反する情報を目にしている。マクロ経済の不確実性は通常、消費者市場を直撃するが、美容市場は以前のサイクルと同様にかなり回復力がある。特にプレステージ市場は活況を呈している。米国市場では、他のカテゴリーや他国で見られるような実際の経済的な影響はみられない。だが、ベンチャーキャピタル分野での反応は確かに強かった。顧客獲得コストは年々上昇し、与信枠を(新たに)確保するのが難しくなり、小売業者は最終的に必要な在庫よりも少ない在庫を発注して予防策を講じるなど、美容の分野における戦略がより複雑になったにもかかわらず、である。これは、ベンチャーキャピタル業界と若いブランドに大きな意味で影響を与えた。多くのベンチャーキャピタルは、新しいブランドに投資する代わりに、既存のポートフォリオに投資するために資金を留保した。プライベートエクイティの分野では、コンセプトの実証があり、設立方法がより確立されたブランドに(投資の焦点が)置かれている。特にストライドでは、強力な差別化ポイントのあるブランドに着目している。当社はそれほど大きな影響を受けていない。だが、ベンチャーキャピタルのディール活動が鈍化した結果、バリュエーションが下がることが懸念され、したがってより大きなプライベートエクイティ規模の企業は(株式公開を)控え、市場の動向を見守っている。しかし、M&A活動は下半期に増加し、2024年の初めには確実に活発化するだろうという予測がある」。
ーー多くの投資家がブランドにオムニチャネルリテールを取り入れるよう主張していると聞いている。それに対する見解は?
「(D2Cは)この1年半で市場がもっとも変化した分野のひとつだ。D2Cは、コンセプトをテストするための安価ですばらしい方法だった。ところが、新しい個人情報保護法やD2Cマーケティング参入コストが大幅に高くなったことで、それがあまり当てはまらなくなっている。私たちは消費者の小売に対する好みを理解してきた。Z世代の消費者は、10代といった早い時期からシーンに参入して美容を購入しており、ミレニアル世代とは逆につねに小売に着目していた。 いまはD2Cをローンチするにあたって、どのコンセプトが理にかなっているのかを考える必要がある。D2Cが有利なコンセプトがあるのではないかといまも思っている。パーソナライゼーションはそのよい例だ。(D2Cは)カスタマイズされた製品を提供する唯一の方法だ」。
ーーほかにどのような長期的な変換に注目しているか?
「研究や情報への容易なアクセスが、若い世代の原動力となっている。一般的に美容における科学が洗練され、あらゆるカテゴリーで真の専門家によるアドバイスが望まれていることを目の当たりにしてきた。スキンケアブームの初期や、皮膚科医の影響力が台頭してきたなかでそうした状況に遭遇している。ヘアケアでも同様のことがみられるし、メイクアップの芸術性の復活もみられる。
いま、メイクアップで最大のプレステージブランドは、メイクアップアーティスト主導のブランドだ。その理由はふたつある。製品の性能に真の優位性があること、そして日常的な芸術性に裏打ちされた、あるレベルの創造性があることだ。パトリック・タでは、(いまでは)タ氏のシグネチャーとなっているようなものを目にしている。彼はつねにテクスチャーで遊んでいる。彼のシグネチャー製品のひとつであるチークがひとつの例だが、彼は製品のテクスチャーの上に(ハイライトの)テクスチャーを重ねることで、まったく異なるレベルの仕上がりと深みを与えている。そして一般消費者が簡単に再現できるようなひとつの製品として、それが提供されている」。
[原文:Stride Consumer Partners’ Nicole Fourgox: There is a ‘desire for true expert advice’ in beauty]
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)