消費者の目が肥え、購買競争が激化するなか、ブランドにとってますます重要となりつつあるのが、店舗従業員や店員によるインタラクションだ。適切な担当者を確実に確保するために、ブランドの採用プロセスはさらに厳しい。ブランドのソーシャルメディアチャネルにも登場するような店員を探すのであれば、なおのことだ。
消費者の目が肥え、購買競争が激化するなか、ブランドにとってますます重要となりつつあるのが、店舗従業員や店員によるインタラクションだ。適切な担当者を確実に確保するために、ブランドの採用プロセスはさらに厳しくなっている。ブランドのソーシャルメディアチャネルにも登場するような店員を探すのであれば、なおのことだ。
「顧客やスタッフの多くは、みなそれぞれがインフルエンサーだ」と述べたのは、創業11年の英国のジュエリーブランド、アストリッド&ミユ(Astrid & Miyu)の創業者、コニー・ナム氏だ。「何百万人ものフォロワーがいる巨大なインフルエンサーよりも、(定評のある)小規模なインフルエンサーの集合体と仕事をするほうがブランドにとってよいことがわかった。そうしたインフルエンサーのオーディエンスはかなりエンゲージメントが高い。私たちにとってはさらに仕事が増えるが、そのぶん収穫も多い」。
マイクロインフルエンサーとして定評のある従業員も
アストリッド&ミユは店舗で働く人材を採用する際、マネージャーや創業者との面接を含む厳しい審査を行っている。店内だけでなく、ソーシャルチャネルでブランドの宣伝を手助けするマイクロインフルエンサーとして定評のある従業員もいる。アストリッド&ミユは、従来の求人サイトやリンクトイン(LinkedIn)を通じて人材を募集し、自分でビジネスをしている応募者やソーシャルのフォロワー数が多い応募者に注目している。どちらも、新たなオーディエンスにブランドを認知してもらう機会を提供する。
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「かなり個人的なことまで踏み込んだ面接を行っている」とナム氏。「心を開いて自分の弱さを見せることに不安になる人は、当社には向いていない。私たちは自己認識や傷つきやすさを求めている。それを顧客の中に見出してコミュニティを築くのに役立ててもらいたいからだ。採用担当者が最初にする質問は『あなたをあなたたらしめているものは何か、そのストーリーを教えてほしい』というものだ」。
スタッフが入社すると、顧客への挨拶の仕方や正しい「雰囲気」の作り方などのトレーニングが行われる。また、同ブランドはジュエリーにリサイクル金属を使用することを優先しているため、製品がどこでどのように作られているかなど、製品に関する技術的なトレーニングも行われる。店内にいる間は顧客を知ることに特に重点を置く、とナム氏は言う。
「季節的な自然な入れ替わりはあるが、正社員が辞めることはほとんどない」とナム氏。正社員の平均勤続年数は最低3年。ブランド創業以来、従業員の定着率は90%以上を維持している。
影響力のある人は優れたセールスマンになれる
店員には、テレビ番組『ラブアイランド(Love Island)』 のシーズン4に出場したダリル・サージェント氏もいる。13万5000人のフォロワーがいる彼女のインスタグラムでは、アストリッド&ミユのことや、ピアスアーティストとしての店での仕事について投稿している。
アストリッド&ミユの店員は、自分のフォロワーを活用するインフルエンサーとして報酬を得ているわけではないが、店内で定期的にアストリッド&ミユのインスタグラムやTikTok、YouTubeのアカウントを活用して、ブランドの製品の着用の仕方やサービスの利用方法について推奨したり説明したりしている。同ブランドのインスタグラムのフォロワー数は50万1000人、TikTokのフォロワー数は8万3000人である。
ナム氏は、影響力のある人は優れたセールスマンになれると話す。「(ダリルは)インフルエンサーであり、テレビにも出演していたが、またピアッサーでもあり、(副業として)ヴィンテージショップも経営している。私たちの店ではインフルエンサーやリアリティ番組のスターが何人か働いているが、みんなコンテンツを作ることになる。カメラに映るのが大好きだし、とても上手なのだ」。
店員が作成したコンテンツが新たなブランド機会に
アストリッド&ミユは今年、3800万ドル(約55.6億円)の売上を見込んでいる。英国、アイルランド、米国の20店舗に210人の店員がおり、最近ニューヨークのウェストヴィレッジに米国2号店をオープンした。2027年までに、世界で122店舗を展開する計画だ。
ブリリアントアース(Brilliant Earth)、ケイト・スペード(Kate Spade)、エバーレーン(Everlane)などのブランドも、ソーシャルメディア上で社内チームの存在感を高めることに取り組んでいる。メイシーズ(Macy’s)は2018年、店舗従業員向けに「スタイルクルー(Style Crew)」プログラムを開始した。現在、TikTokのような新しいプラットフォームや「Day in the Life(人生のひとこま)」のような人気のある動画フォーマットのおかげで、店員が作成したコンテンツに新たなブランド機会が生まれている。
[原文:Store associates are the new influencers]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)