スポーツウェアのブランド「スターター(Starter)」が、新たな時代を迎えようとしている。 1971年に設立されたスターターは、スポーツウェアの定番といえる存在となった。同社によると、米国の主要なスポーツリーグのすべて […]
スポーツウェアのブランド「スターター(Starter)」が、新たな時代を迎えようとしている。
1971年に設立されたスターターは、スポーツウェアの定番といえる存在となった。同社によると、米国の主要なスポーツリーグのすべてとライセンス契約を結んでおり、同社のジャージやアウターを着用するプロチームは他のどのブランドよりも多いという。1990年に1億2,460万ドルに達した売上は、1992年までにほぼ2倍の3億5,600万ドルに増えた。
ファッションや美容の分野でアスリートが流行を作り出すようになったことも、同ブランドの人気を押し上げることとなった。90年代初頭、スターターのサテンジャケットはスポーツ用アウターとほぼ同義といえる存在で、ヒップホップやポップカルチャーにも浸透していった。クラシックなスタータージャケットは、LL・クール・J氏、ブルック・シールズ氏、パフィー氏、ウィル・スミス氏、ランDMC氏、ミッシー・エリオット氏など当時の大物セレブが着用。また、エディー・マーフィー氏主演『星の王子 ニューヨークへ行く』など一部のファン層から熱烈に支持される映画や、ミュージックビデオ、アルバムのカバーにも登場した。
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しかし、プロリーグがアウターウェアのライセンス契約を他ブランドと結ぶようになり、スターターの市場シェアは徐々に下がっていった。競合他社には、スポーツアパレルブランドのロゴ7(Logo 7)やプロプレーヤー(Pro Player)などがある。
1999年にスターターは米連邦破産法11条を申請し、2004年にナイキに買収された。その3年後には米アパレル会社のアイコニックス・ブランド・グループ(Iconix Brand Group)に、6,000万ドル(約90億円)で買収されている。2012年にアイコニックスはスターターの経営において、NFL(米ナショナル・フットボール・リーグ)元選手のカール・バンクス氏のブランド「ジースリー(G-III)」と提携している。
ジースリーが経営に携わるようになって10年が経ち、スターターは復活のめどが立ったと、ジースリーのプレジデントを務めるバンクス氏は語る。
スターターの新たな成長段階を率いる同氏は消費者を魅了するため、戦略的なコラボレーション、ノスタルジア、高品質な製品、そしてブランドのストーリーテリングに注力する。
10月下旬には、衣料品ならびにアクセサリーのブランド「クッキーズ(Cookies)」と、2回目のコラボレーションとなるカプセルコレクションを発表した。2021年秋に発表された1回目と同様、4つのシグニチャージャケットがメンズサイズで展開されている。Starter.comならびに Cookiessf.comのサイト、そしてクッキーズの旗艦店にて購入可能だ。
2011年にラッパーで起業家のバーナー氏が立ち上げたクッキーズは、ストリートウェアやヒップホップカルチャーにも深く根差している。
「(スターターの)ブランドアーキテクチャー自体には、語るべきストーリーがたくさんある。そして、何らかの道理にかなっていたり、消費者をつないだり、つなぎ続けるようなことがない限り、そのストーリーから逸脱する必要はない」とバンクス氏。クッキーズとのコラボレーションは、これらの条件を満たすものだと語る。
バンクス氏のブランド認知度に関する戦略の一環として、スターターは9月にブランドテイクオーバーを実施し、ニューヨーク・ジャイアンツの本拠地であるスタジアムにスイートを設置した。同社はブランドテイクオーバーがシーズン中も続くのかについて明らかにしなかったが、一部は継続するとバンクス氏は認めた。さらに11月のブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)には、ニューヨーク・ジェッツとのコラボレーションも予定しているとのことだ。同月にスターターは、ニューヨークのNHLストアでの屋外広告キャンペーンのために特別に用意したコレクション「ブラック・アイス(Black Ice)」を発売予定だ。
他にも7月にはメジャーリーグ・ベースボール(MLB)と提携して、アイコニックなブロンクス・バブル・ジャケット(Bronx Bubble Jacket)の限定版をリローンチし、ロックフェラー・センターにあるMLBの旗艦店にて1週間限定で発売した。このジャケットは11月にStarter.comやMLBの旗艦店、全米の専門店でも販売される。小売価格は300ドル(約45,000円)で、現時点では3つのチーム(ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・メッツ、ブルックリン・ドジャーズ)と3色(ゴールド、シルバー、ブルー)から選ぶことができる。
「スターターについてひとつ言えるのは、ファンダム(熱心なファンのコミュニティー)を着用可能な体験にし、そしてファッショナブルにしたことだ。スターターは脇役だったジャケットを、熱狂的なファンだけでなくクールなファンにとっても必須のアイテムへと変えたのだ」とバンクス氏は語る。
バンクス氏によると、同ブランドの売上はこれまでに前年比で20%増加しているという。「これは、消費者の関心だけによるものではない。今日の人々と関連する部分のあるストーリー、人々が聞きたがっていたにも関わらず聞けなかったストーリーを、当社が伝えることができたことも貢献したと考えている」。
ブランドの次なる展開として、計画はたくさんあるとバンクス氏は語る。例を挙げると、スターターでは来年に向けて成長を維持していくために、インフルエンサーマーケティングを始め、女性向けの衣料を導入するなど品揃えを引き続き充実させていく予定だ。
「私たちは収益を上げたい、そしてこれをブランドの信頼性によって達成したいと考えている。売上のためにブランドの価値を下げることは決してしたくない」とバンクス氏。「取り扱ってほしい店舗はいくつかあるが、いずれその時は来る」。現在スターターのアパレルは、ノードストローム(Nordstrom)やアーバン・アウトフィッター(Urban Outfitters)などの大手小売店にて販売されている。
[原文:Starter’s new collaboration marks a new stage of growth for the heritage sports brand]
TATIANA PILE(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)