「スーツ」というと、巻尺に仕立て屋、パリッとしたジャケットとスラックスが並ぶ店といったイメージを連想するかもしれない。しかし消費がショッピングモールからコンピューター上へ、素材がカシミアからカジュアルへと進化する中で、ス […]
「スーツ」というと、巻尺に仕立て屋、パリッとしたジャケットとスラックスが並ぶ店といったイメージを連想するかもしれない。しかし消費がショッピングモールからコンピューター上へ、素材がカシミアからカジュアルへと進化する中で、スーツのルルレモン(Lululemon)を目指してスタートしたアパレルブランドのシーン(Sene)は、時代の変化に対応してきた。
2015年にブランドをローンチして以来、共同創業者でCEOのレイ・リー氏は、シーンはサステナブルでインクルーシブなブランドであるという価値観のもと、オンラインでカスタムスーツを提供するブランドへと移行する指揮を執ってきた。2019年、リー氏はシーンのロサンゼルスの店舗を閉鎖し、自分のサイズに合わせてカスタムメイドできるという点に焦点を合わせ、スマートフィットクイズ(SmartFit Quiz)を導入してキックスターターで(Kickstarter)でブランドをリローンチすると決定した。これによってビジネスの軌道が変わったとリー氏は言う。
「我々の使命は、誰もがいつでもカスタムメイドの服を着られるようにすることだ」とリー氏は米Glossyのポッドキャストで語っている。「しかしそこに至るまでは非常に長い道のりだった」。
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ブランドを完全にオンライン化した後、シーンは「アスレジャー素材を使用したカスタムスーツ」であるフレックステックスーツ(FlexTech Suit)を発表、その後すぐにカスタムデニムを発表している。リー氏は「カスタムデニムには170億ドル(約1兆8700億円)のビジネスチャンスがある」と考えており、シーンのデニムセレクションをショートパンツやジャケットにも広げていく予定だ。また、ジョガーのようなアスレジャースタイルも増やすことを計画している。
「あるカテゴリーに参入するたびに、自分たちが持っている製品のできるだけ最高のバージョンを作っていると感じたい」とリー氏は言う。「それを既製品のような価格で販売したいとも考えている」。
以下、対談のハイライトをわかりやすく編集して簡潔に紹介する。
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フレックステックのクローズドループ・モデルの構築
「我々が利用しているもっとも古いデニム工場のひとつは、半世紀以上もデニムを作り続けている。彼らの染色プロセスはすばらしくて、水をリサイクルしているのだが、飲めるほどきれいな水になっている。我々は実際にどうやってクローズドループ(廃棄される製品や材料を資源として循環させること)のモデルを構築したらよいかを考えている。我々は環境に悪影響を及ぼすポリエステルを使用しているため、それを逆の方向でやろうとしている。その第一歩が、この秋にローンチするフレックステックの次のバッチだ。リサイクル素材を50%使用している。
また、あまったフレックステックを新しいフレックステックにリサイクルする方法を模索しながら、デニム側でもやろうと試みている。最終的な目標は、所有する人がいない限り、どの服も作らないというものだ。だが同時に、もし返金されたり、作り直したりするものがあれば、すべてのパーツを新しい服にリサイクルしている」。
スマートフィットをショッピングのネットフリックスに進化させる
「従来のオーダーメイドは価格が高いだけでなく、時間も非常にかかる。どこかにわざわざ出向いて行って、採寸してもらわらなくてはならない。そこで、質問に答えるだけで、巻尺を使うこともなく、立ち上がることさえせずにカスタムサイズを作成できる手段としてスマートフィットを作成した。リリースは来年行う予定でいる。Netflixのように、それぞれの人が自分らしいショッピングを体験することが可能になる。来年はベータ版をローンチする予定で、スマートフィットを利用した後に独自のショッピング体験ができるようになる。その人だけに合わせたモデルやコンテンツを見ることも可能で、より関連性が高く、より親しみやすいものになるだろう」。
解決策ではなく知見を求めて顧客のもとへ行く
「我々のフレームワークでは、顧客のところに赴きニーズを理解したいと考えているが、解決策を求めて顧客のもとに行くことはない。顧客の世界を理解し、顧客が抱えているむずかしい問題を理解したいと思っている。
(女性の)デニムの顧客の場合、一般的なマイナスポイントを理解したいと思っているが、顧客のところに行って『どんな生地を使うべきか、どんなデザインでどんなカットにすべきか教えてくれ』とは言わない。最終的には、自分自身が独自のクリエイティブなインスピレーションを持たなくてはならない。思慮深くならなくてはいけないし、プロダクトをデザインするという仕事を自分でやらなくてはならないのだ。でもD2Cブランドでたまに起こる欠点として、顧客リサーチばかりに専念しすぎて顧客が言うことをそのまま実行してしまうというのがある。しかし魂を持つこと、先人たちが築き上げてきた遺産を尊重した仕事をすることは重要だ。そのうえで自分自身のインスピレーションを持って、製品を作らなければならないのだ」。
[原文:Sene’s Ray Li on creating the Netflix of fashion: ‘Each person has a unique shopping experience’]
NITYA RAO(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)