新たなテクノロジーが生み出すビジネスチャンス。そのひとつがゲームやメタバースにあると考え、いくつものグローバル企業がバーチャル空間にブランド体験やユーザーとのコミュニケーションの場を求めている。 そんななか、スポーツ・フ […]
新たなテクノロジーが生み出すビジネスチャンス。そのひとつがゲームやメタバースにあると考え、いくつものグローバル企業がバーチャル空間にブランド体験やユーザーとのコミュニケーションの場を求めている。
そんななか、スポーツ・ファッション・エンタメ業界などのトップブランドから選ばれているのが、世界最大級の没入型プラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」である。これまでにグッチやナイキをはじめとする数々のブランドが、Roblox上で独自のコミュニティを構築し、成功を収めてきた。
広告ビジネスに可能性を見出したRobloxは、没入型広告の共同開発やIPビジネスに向けて、2023年6月に電通グループを含む7社とパートナーシップ契約を締結。Robloxと提携して共同開発をする広告会社は、電通グループが世界初。電通イノベーションイニシアティブ(以下、DII)のエグゼクティブ・ディレクター青木圭吾氏は、「没入型広告モデルについては、“新たなデジタルアド” とは捉えていない」と語る。それは「ブランドが自らの世界観を提示し、それに関心を示した生活者とのエンゲージメントを確実に獲得できる “新たなメディアインターフェイス” になる」と期待を寄せているからだ。
世界の名だたるブランドが、Robloxでキャンペーンを展開するのはなぜか。Robloxがビジネス領域に強い理由、そして日本における今後の展望について紹介しよう。
ゲームの域を超え、人々をつなぐプラットフォームへ
Robloxはロールプレイング・アドベンチャー・格闘・障害物など、さまざまなジャンルのゲームを好きなときに無料で利用できるオンラインゲームのプラットフォームとして、世界中の若年層から絶大な支持を集めている。そこでの体験はゲームに留まらず、毎日180ヵ国から6,600万人以上のユーザーがRobloxを訪れ(2023年3月末時点)、コンサートや映画試写会などの没入型体験や教育コンテンツ、人とのつながりを楽しんでいる。
その第一の特徴は、多種多様なコミュニティを形成していることだ。誰もがクリエイターになることができ、プレイヤー自身がゲームやバーチャルグッズを制作したり、ほかのプレイヤーが作ったゲームで遊べたりすることからユーザー数は増え続けている。
また、マーケットプレイスでアイテムの購入やアバターをアップデートする際には専用の仮想通貨Robuxを使用するが、これがバーチャルワールドにおける新たなクリエイターエコノミーを構築し、大きな仮想経済圏のひとつになっているのも見逃せないポイントだ。さらにクリエイター自身がマネタイズするためのオプションを強化し、バーチャルワールドにおける新たなクリエーターエコノミーを構築することを目指している。
そして、ゲームだけでなくメタバース的側面を持ち合わせていることも、Robloxの特筆すべき点といえる。世界中で制作された何百万もの仮想空間で何にでもなれて、友だちと一緒に過ごしたり、ユーザー同士で会話をしたりと思い思いに過ごすことができる。国籍・人種・性別に関係なく楽しめることから、Robloxはゲームという枠を超えて、人々をつなぐプラットフォームになりつつある。
Robloxが企業やブランドから選ばれる理由
なぜRobloxはグローバル企業やトップブランドから支持されるのか。
その最大の理由は、Z世代/α世代(ザルファ世代)へのコミュニケーションとして、もっとも有効な媒体であると認識されていることにある。これらの層を中心としたデイリー・アクティブ・ユーザー(DAU)が6,600万人以上というのは、Fortniteやマインクラフトなどメタバースを手がけるほかのゲームプラットフォーマーと比べても圧倒的なスケールを誇る。
一方で、動画の早送り再生やショート動画が好まれることに象徴されるように、ザルファ世代はアテンションが著しく低いといわれている。従来のプッシュ型広告を配信しても認知拡大には貢献するかもしれないが、ブランド価値を深く理解・共感されるかには疑問が残る。ザルファ世代には趣味趣向の多様化、受動的な情報収集などの傾向も見られるが、Robloxの没入体験はこれらの課題を克服するポテンシャルを秘めている。加えて、ユーザーの1日の利用時間が平均2.4時間と、ほかのSNSと比較しても高いエンゲージメントを3D没入型の体験で実現できることも、企業・ブランドにとっては大きな魅力だろう。
分析機能を活用してターゲットリーチやどのような層からの支持を受けているかなどを検証し、ユーザーの反応を見ながら内容を調整していくことで、より良いコンテンツへと進化させることもできる。物心ついたときからデジタルコンテンツに触れてきたザルファ世代にとって、自分に合うコンテンツが次々に生み出されるプラットフォームに惹かれるのは当然といえる。趣味趣向が多様な彼らにはバラエティに富んだコンテンツが必要だが、それを実現させているのがRobloxのクリエイターコミュニティだ。
前項で誰もがクリエイターになれることをRobloxの特長として挙げたが、ゲーム内課金やアイテム販売を通してクリエイターが収益を得た金額は、2021年は5億3800万ドル(約780億円)で、2022年は6億2400万ドル(約914億円)。この合計11億ドルという数字は、その前の2年間に比べ164%増加しており、2023年だけでも約8億ドル(約1170億円)になると予想されている。
今後Robloxはクリエイター自身がマネタイズするためのオプションを強化し、バーチャルワールドにおける新たなクリエーターエコノミー構築を目指しているという。これらの掛け算が多くのブランドを惹きつけているわけだが、すでにRobloxを活用してオンライン・オフラインの購買を活性化させた事例もあるというから、そう遠くない未来にRoblox上で構築した企業のワールドがひとつのリテールメディアとなる日が来るかもしれない。
日本のコンテンツ事業者やブランドに新たなビジネスチャンス
日本市場で、セガの公認ミワールドやサンリオなど日本発のゲームが世界的に人気を博し、日本でも存在感が増していくなか、パートナープログラムの創設メンバーとしての電通グループの役割とは何か。
日本におけるRobloxの市場をどう拡げていくのか。電通グループは、没入型広告の共同開発に取り組むとともに、ゲームクリエイターとの協業も推進し、最新テクノロジーを取り入れた魅力的なインフラを構築することで、企業の新たなブランド体験を創出していく。
今回のパートナーシップについて、DII青木氏は「日本の優れたコンテンツ事業者やブランドに対して、グローバル市場において新たなビジネスチャンスを生み出すための適切なサポートを行い、日本市場全体の成長を支援することを目指したい」と意気込みを語っている。
電通グループ以外の多くの企業もRobloxのエコシステムに参画すべく動き始めている。日本のクリエイターとIPホルダーのRobloxでのエクスペリエンス開発を支援するGeekOutは、日本最大のRoblox開発コミュニティーを運営するDevloxと共にエクスペリエンスの開発方法や効率的な集客を行う方法も学べるスクール事業も開始した。また吉本興業ホールディングスといったIPホルダーも自社のIPのグローバル展開を見据え、FANY X LABの設立によるRobloxへの本格参入を表明している。
9月にブランドマーケティングイベントを開催へ
「今後、著名IPやブランドのコミュニティが参入することで、(Robloxは)生活者がさまざまなコンテンツ体験を行う、”ソーシャル・ハブ” へ進化する」とDII青木氏は考えている。それは、いずれRobloxが新たなコミュニケーション手段になる、ということだ。そうなればユーザー層はさらに広がり、同プラットフォームは一部のグローバルブランドに限らず、あらゆる企業・ブランドにとって無視できない存在になるだろう。
とはいえ、自社のブランドマーケティングにどう活かせばよいか、すぐにイメージできない人も少なくないはずだ。そんなマーケター、ベンダー、パブリッシャー、エージェンシーのために、電通グループは日本市場におけるRobloxの可能性やブランドやメディアの活用方法がわかるクローズドイベント「DIGIDAY Roblox Forum presented by dentsu」を、9月20日(水)RED゜TOKYO TOWERで開催する。
同イベントは、Roblox Head of International Zhen Fang氏とDII青木氏による基調対談のほかに、3つのセッションが予定されており、Roblox Developer Program Lead 辻潤一郎氏、GeekOut代表取締役 田中創一朗氏、株式会社FANY 代表取締役社長 梁弘一氏などが登壇し、最新事例を交えて、目指すべきユーザー体験デザインやKPIについても語られる。
これからのブランドマーケティングにおいて、避けては通れない没入型プラットフォーム。今後の動きに期待したい。
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Written by 山本千尋