ニューヨークファッションウィークではファッショナブルな略語が出回っていた。それはNYFWではない。NFTだ。9月10日金曜日に行われたレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)のニューヨークファッションウィーク(NYFW)の展示で主役となったのは、NFTと呼ばれることの多い非代替性トークンだった。
ニューヨークファッションウィークではファッショナブルな略語が出回っていた。それはNYFWではない。NFTだ。
9月10日金曜日に行われたレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)のニューヨークファッションウィーク(NYFW)の展示で主役となったのは、NFTと呼ばれることの多い非代替性トークンだ。レベッカ・ミンコフの最新ファッションコレクションの洋服やアクセサリーが15点のNFTのドロップの形で登場した。10点のNFTはファッションに身を包んだモデルの写真、5点は「デジタルガーメント」と呼ばれる洋服のバーチャルな3Dレンダリングで、これらは最終的にいくつかの未来のメタバースでアバターに用いることができる。このイベントではヤフー(Yahoo)が公式なイノベーションパートナーだった。
特筆すべきは、レベッカ・ミンコフも20周年を記念していたことだ。ショーのテーマである「アイ・ラブ・ニューヨーク」は、このブランドが2001年9月10日に初めてNYFWで披露したTシャツにちなんでいる。9月11日のテロ攻撃のあと、ミンコフではそのTシャツを販売し、赤十字に収益を寄付した。NFTの収益もフィメールファウンダーズコレクティブ(Female Founders Collective)に寄付される予定だ。NFTのオークションは9月12日日曜日の午後5時(米国東部時間)に終了。
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「このコレクションは、まさに(その体験に)インスパイアされたものだ」とレベッカ・ミンコフ氏は言う。「ニューヨークはタフで勇気がある。そして私のブランドは、チェーンやスタッズ、ジッパー(を取り入れること)で知られている。だからそうした要素を組み合わせている」。
ミンコフ氏は、シュールレアリストのメイクアップアーティストであるミミ・チョイ氏(@mimles、インスタグラムのフォロワー数160万人)に、メタバースのメタ・ガラ(Meta Gala)のために服を着せる。これはクリプトファッションウィーク(Crypt Fashion Week)中の9月17日に行われた。
ブランドの流通手段としてのメタバース
2019年、ユーザーがアバターを作り、仲間のユーザーがデザインした洋服を着せるIMVUのメタバース上にまた別のメタバースのメタ・ガラが出現した。それらの作品は現金で支払われたクレジットで購入できる。IMVUのバーチャルストアは、20万人以上のクリエイターが製作した5000万点ものアイテムを扱っている。140億クレジットあるいは1400万ドル(約15億4000万円)が、毎月2700万件以上の取引を経て交換されている。同社によると、ユーザーはパンデミック中に44%増加し、現在では月に700万人のアクティブユーザーがいる。その多くは女性または女性と称する人で、年齢は18歳から24歳だ。
「広告だろうかマーケティングだろうが、メタバースをブランドにとっての(自分たちを流通させるための)手段として考えれば、とくにこれらのビデオゲームをプレイする女性が増えていることもあり、今後はより価値があるものになっていくだろう」とミンコフ氏は言う。
ヤフーは、ブランド、クリスチャンコーワン(Christian Cowen)とも提携しており、9月10日金曜夜にランウェイショーを行った。ランウェイで初公開となるデザイナーの服だけでなく、一連のQRコードを介したフォトリアルホログラムとしてクリスチャン・コーワン氏がステージの中央に登場する。これは、人々にデザイナーを間近で見るという体験をしてもらうというアイデアだ。
「このような親密な方法で、我々のすべてのファンが自宅にいながらにしてコレクションやランウェイショーに参加できるというのは、本当に特別な感じがする」とクリスチャン・コーワン氏は言う。「手にするアイテムを顧客がじっくりと見て確認できることは、リテールの体験により多くのものを付加する」。
テクノロジーとともに進化するファッションウィーク
ここ数年、NYFWを支え続けてきたのは、テクノロジーである。ラグジュアリーなウィメンズの既製服ブランドであるセルジオ ハドソン(Sergio Hudson)は、ピンタレスト(Pinterest)とパートナーシップを結び、9月9日木曜の夜に同プラットフォーム上でバーチャルにコレクションを放映した。NYFW全体では、高価なアイテムをより経済的に入手できるようにするために、決済に特化したテクノロジー企業アフターペイ(Afterpay)がスポンサーとなっている。これまでメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)やレクサス(Lexus)がスポンサーだったこの業界のイベントにおいて、NFTやメタバース、デザイナーへの新たなアクセスなど、今シーズンは全体的にテクノロジーが民主化の手段として使われていることが注目すべき進化となっている。
一方で、AR(拡張現実)アプリのユーカム(YouCam)は、9月10日金曜日、ブラシストロークのオーバーレイアニメーションを備えた新機能を発表した。これによってブランドの特徴となるルックの完全なビューティチュートリアルをステップバイステップで提供することが可能となる。この機能の目的は、正しいメイクアップのテクニックについて顧客をバーチャルに教育し、独自のメイクアップチュートリアルを体験してもらうことだ。これは9月12日から14日にかけて、NYFWのザ・ノルチャショー(The Nolcha Shows)のメイクアップアーティストとともにデビューする。
そのほか9月10日の夜に行われるショーに、アリス・アンド・オリビア(Alice & Olivia)、コーチ(Coach)、エクハウスラッタ(Eckhaus Latta)、クリスチャンコーワン(Christian Cowan)、ブランドンマックスウェル(Brandon Maxwell)がある。NYFWのアフターパーティは、午後6時(米国東部標準時)よりジミーソーホー・ルーフトップ(Jimmy SoHo Rooftop)にてラセッテ(LaSette)のホストで開催される。
マルカリアン(Markarian)のアレクサンドラ・オニール氏への4つの質問
同名の銀河にちなんで名づけられたブランド、マルカリアンは、設立4年目にして初のNYFWショーを開催した。イメージにふさわしいレインボールーム(Rainbow Room)で開かれたショーでは、ジントニックやマティーニ、フレンチ75などのカクテルが招待客に振る舞われた。
ーー今日のショーとロケーションの背景は?
ウエストヴィレッジにあるショールームに来たときのような体験を提供したかった。少し親しみやすいショーにしたかったし、旧世界の延長にあるような雰囲気にもしたかった。洋服に関しては、美しいがちゃんと着用できる上に(さらに)風変わりで幻想的な作品へと回帰している。レインボールームはクリスタルで覆われているが、私ほどクリスタルを愛している人間はいない。
ーーこれが初となるNYFWショーだが、この瞬間はあなたにとってどんな意味を持つか?
私たちはニューヨークに根ざしていて、(作っているものは)すべてニューヨークで製造している。私たちには、ガーメントディストリクトとそこに存在する美しいクラフトマンシップを支えていくという強い信念がある。ニューヨーク・ファッションウィークに参加し、ファッションショーを開催できることは、信じられないほどエキサイティングなことだ。さらなる方法でニューヨークをサポートすることができるのは、このうえなく嬉しい気持ちだ。
ーー今回のコレクションでは、どこからインスピレーションを得た?
私はいつも、旅をすること、さまざまな場所でさまざまな人に出会うこと、建築物などから多くのインスピレーションを得ている。もちろん旅行はいまかなり制限されているので、もっとローカルなものに目を向けている。古い映画もたくさん観た。これは子どもの頃に祖父母と一緒によくやっていたことでもある。私のお気に入りの作品は『上流社会』『フィラデルフィア物語』『マルタの鷹』。それから『百万長者と結婚する方法』も私たちのショーの参考にしている。
ーーショーが終わったら、どのようにして祝ったり、くつろいだりする予定?
正直に言うと、ただひたすら寝てのんびり過ごすだけになりそう。
NYFWで耳にした会話
「理解できない。どうしてこの靴がショーにあるの? これは返却すべきだったのに」ーーアリス・アンド・オリビアの従業員バックステージにて
NYFWで目にしたこと
9月9日木曜日に開催されたラカン・スミス(LaQuan Smith)のショーでは、多くの招待客が会場へのエレベーターに乗るのに1時間以上も待たされ、その結果、何人かは定員オーバーで帰ってしまった。ラカン・スミスは、エンパイア・ステート・ビルディングでショーを開催した初めてのデザイナーだ。モデルのカイリー・ジェンナー氏や歌手のシアラ氏などの著名人が出席し、スーパーモデルのバルバラ・パルヴィン氏やテイラー・ヒル氏がランウェイを歩いた。
女優のケイト・ハドソン氏とヘイリー・スタインフェルド氏は、9月10日金曜日の早朝にシアター・ディストリクトで開催されたマイケルコース(Michael Kors)のランウェイショーに姿を見せた。ショーノートによると、マイケルコースのスプリングコレクションのテーマは「アーバン・ロマンス」で、ニューヨークへのラブレターを表現している。Covid-19で壊滅的な影響を受けたことに続き、また9.11の同時多発テロから20年を迎えたいま、ニューヨークへの叙情歌は広く浸透しているテーマである。
[原文:NYFW Briefing: Fashion brands take a democratizing approach to technology]
Photo:写真提供:IMUV.com
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)