ここ3年間、アディダスやパンガイア、オールバーズなどのブランドが、より持続可能な製品を作る方法を模索しつつ、アクティブウェアのパフォーマンスの限界を押し上げる新しい素材を開発している。新素材の多くは外部企業によるものなのだが、新素材を研究開発するために自社に社内ラボを設けるブランドが増えている。
ここ3年間、アディダス(Adidas)やパンガイア(Pangaia)、オールバーズ(Allbirds)などのブランドが、より持続可能な製品を作る方法を模索しつつ、アクティブウェアのパフォーマンスの限界を押し上げる新しい素材を開発している。
自社ラボを設立したメンズウェア、ローンの軌跡
そのような新素材の多くは外部企業によるものなのだが、新素材を研究開発するために自社に社内ラボを設けるブランドが増えている。過去にはルルレモン(Lululemon)がそうであったように、コネチカット州スタンフォードに拠点を置くメンズアクティブウェアブランド、ローン(Rhone)は、9月14日、ナノプロジェクツ(Nanoprojects)というラボについて発表した。ナノプロジェクツは今年初めに始動した。
ナノプロジェクツは、ローンの共同創設者であるカイル・マクルーア氏が設立した。ナノプロジェクツの名のもとにローン内のハイエンドレーベルに使われる新素材と新製造技術を開発するのが目的だ。9月14日にローンチしたナノプロジェクツの初コレクションは、ブレザー、アウターウェア、チノパンで構成され、価格は98〜595ドル(約1.1〜6.6万円)。
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この初コレクションがアクティブウェアではなくプレタポルテであることは、ラボが意図するものだとマクルーア氏は言う。ナノプロジェクツは、同ブランドが新カテゴリーや新製品を試す機会なのだ。通常、ローンはアクティブウェアを約80〜120ドル(約9000〜1.3万円)で販売しているが、ナノプロジェクツコレクションは限定版で、製品の中には100点以下しか製造されないものもある。これは、通常何千点も製造するローンの標準的な製品よりもはるかに少ない。
マクルーア氏にとって、社内にイノベーションラボを設立することが魅力的だった理由のひとつには、ブランドが成長してもスタートアップの創造的な精神を持ち続けられることがあった。
「アイデンティティを確立するために、多くのブランドは初期にさまざまなことを試みている」とマクルーア氏。「その後、事業を専門化して拡大できる期間がくるが、その過程でクリエイティビティが少し失われることもある。我々は、イノベーションが会社から流出してしまうことを望まなかった」。
マクルーア氏によると、イノベーションラボへの投資は主にすでにあるリソースからのものだそうだ。スタンフォードにあるローンの既存のオフィスで働くラボチームは社員で構成されているが、重要な新メンバーが1人加わった。それは、フェンティ(Fenty)、プーマ(Puma)、ONS クロージング(ONS Clothing)を担当してきたフリーランスデザイナーのレイチェル・ロッジ氏だ。マクルーア氏が採用を決める前に、ナノプロジェクツの開発を主導するためにコンサルティングを行った。マクルーア氏は、ロッジ氏がナノプロジェクツのローンチには不可欠だったと述べている。
マクルーア氏によると、現時点でのナノプロジェクツの最大の焦点は繊維会社や繊維工場と協力して、現在ローンのレインコートに使われている再生ナイロンのような新素材を開発することである。ローンのイタリアの製造パートナーが開発したインディゴ染色の新プロセスは、ローンが手がけた初めてのジーンズに使われている。これは、染色によってインディゴデニムのように見えるナイロンとスパンデックス製のパンツである。
マテリアルイノベーション企業、オールバーズの取り組み
アクティブウェアブランドは、昨年、素材開発にいっそう頻繁に取り組むようになっている。たとえば、オールバーズの先月のアクティブウェアのローンチについては、持続可能性責任者のカジムラ・ハナ氏が、専任チームは、製品の開発と、ポリエステルの代替となるユーカリベースの新素材や新技術の開発に分かれていると述べている。
「我々は、基本的にはマテリアルイノベーション企業だ」とカジムラ氏は8月にGlossyに語った。 「チームの半分は製品、あとの半分はイノベーション担当。つねに新素材を求めており、新素材を初めて市場に投入しようと試みている」。
フィットネスとアウトドアアパレルのパンガイアは、自称「マテリアルサイエンスブランド」だ。 8月には、社内で開発した植物や果物ベースの繊維から作られた新しいスウェットを発表した。下着ブランドのニックス(Knix)は、米国の新しいオフィスに専用イノベーションラボを設立予定で、来年始動することになっている。また、新素材と新しい製造技術にもフォーカスする。
イノベーションラボには継続的なサポートが必須
イノベーションラボを成功させる秘訣は継続的なサポートだと述べているのは、以前存在していたニーマン・マーカスイノベーションラボを運営して、2019年に同社を退職したスコット・エモンズ氏だ。
「継続的なサポートは本当に必要だ」と、エモンズ氏は昨年Glossyに語っている。「ラボを立ち上げただけで、すぐに成功に結びつくわけではない」。
マクルーア氏は、ナノプロジェクツは3年間進行しており、これからも何年にもわたり支援したいと述べている。ラボの製品はプレタポルテとは限らず、個々のナノプロジェクツコレクションはデザイナーやエンジニアが次に作り出す素材やテクノロジーによって牽引されるという。
[原文:More activewear brands are creating innovation labs to pursue new technologies]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)