メイクアップ用の照明をローンチするとしたら、メイクアップ・バイ・マリオを立ち上げ、キム・カーダシアン・ウェストのメイク全般を担当するマリオ・デディバノビッチ氏を超えるパートナーはいないだろう。ビューティに特化した照明の新企業、イリオスの創業者、ケリー・モンドラ氏はデディバノビッチ氏を共同創業者として迎え入れた。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
メイクアップ用の照明をローンチするとしたら、メイクアップ・バイ・マリオ(Makeup by Mario)を立ち上げ、キム・カーダシアン・ウェストのメイク全般を担当する、マリオ・デディバノビッチ氏を超えるパートナーはおそらくいないだろう。
メイクアップ用拡大鏡と照明を組み合わせた製品のローンチ
ビューティに特化した照明の新企業、イリオス(Ilios)の創業者、ケリー・モンドラ氏は、同社のローンチ前にデディバノビッチ氏を共同創業者として迎え入れた。イリオスは、2021年7月、主要製品のビューティリング(Beauty Ring)(249ドル、約2.8万円)で市場に参入。これは、メイクアップ用の拡大鏡とリングライトの機能を兼ね備えたものだ。
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同社は、セレブや業界の専門家、インフルエンサーなどから注目を浴びており(詳細は後述)、目が離せないブランドである。
自然光に近い照明付き鏡の開発プロセス
モンドラ氏は、プロ用写真・ビデオ照明機器を製造するF.J.ウエストコット(F.J.Westcott)での18年間の勤務経験など、照明業界において数十年の経験を持つ。2016年、同氏は、F.J.ウエストコットの自分の持ち株を売却して、自分で事業を起こすことを決心。当時、12歳だった娘から、退職前にリングライトがもらえるかと聞かれた。「娘が、リングライトが何かを知っているなんて知らなかった」とモンドラ氏。「娘から、『クロエ・カーダシアンが(運転免許の更新のときに)免許センターにリングライトを持参していったらしい。ポートレート写真に最高の照明なんだって』と言われた」。これがインスピレーションになって、モンドラ氏は既存のリングライト市場の調査を開始して、次のような結論に至った。「自然光を意識した照明について考えて、メイク時に実際細部を見るのに十分な明るさのある鏡を作って、それをリングライトにした人は誰もいなかった。そこで、私は製品のスケッチを描き始め、2017年に仮特許を申請した」。
こうして生まれた製品は、直径9インチ(約23cm)と、ほかの製品よりも大きめである。また、鏡は片面は1倍、裏面は5倍の倍率になっている。携帯電話のホルダーも内蔵されている。「我々の経験は、プロの写真家や映画製作者向けの照明に限られていた」と同氏。「メイク用鏡やリングライトの光の質がひどいのを知ってショックを受けた。我が社は、メイクアップとスキンケアの改善のためにプロ品質の照明を消費者のビューティ分野に提供した最初の企業だ。どんな細部ももっと良く、もっと明るく、実際の色味で見ることができる。日光の下でメイクをするようなもの」と言い、業界では自然光が「完璧な照明」だと考えられていると語っている。
メイク専門家としてのデディバノビッチ氏の関与
デディバノビッチ氏は、モンドラ氏からメールを受け取ったとき、関心があるとすぐに返信した。「メイクアップの出来は照明によって決まる」と同氏は述べている。なんといっても彼は華やかなイベントや雑誌のメイクを何十年も担当しているメイク専門家なのだ。
「照明によってすべてが生き生きとしてくる。私が顧客に行うメイクの多くは、光を意識しているものだ。若い世代はソーシャルメディアで活動しており、セルフィーを撮ったり、Zoomを使っている。なので、(モンドラ氏と協力して)照明に取り組めたのは素晴らしかった。自分にぴったりだと思ったし、本物だと感じた」。
この製品の製造プロセスについては、「テストセッションを何度も行った。(モンドラ氏から)製品を受け取ってはフィードバックを返して、変更をしていった。目標は、業界で最高品質のメイクアップ・リングライトミラーを完成させることだった」。
現在、デディバノビッチ氏は、自分の顧客や自分のZoomコール、製品開発にこのイリオスのライトを使っている。同氏のチームが将来の製品サンプルをテストする部屋にはこのライトが5つ設置されている。
優れた鏡の重要性を考えると、セフォラ(Sephora)で取り扱いがないのは意外である。一方、アルタビューティ(Ulta Beauty)で「ミラー」を検索すると29件の結果があった。20ドル(約2300円)のコンエアー(Conair)製品から、鏡ブランドのリキ・ラブズ・リキ(Riki Loves Riki)の200ドル(約2.3万円)を超えるものまで様々な製品の取り扱いがある。
セレブからの反響と愛用
デディバノビッチ氏は、イリオス製品をキム・カーダシアン・ウェスト氏をはじめ、多くの人たちに渡したという。「数人のインフルエンサー、ユーチューバーやTikTokers、私の顧客らに送った」。以来、セレブ御用達メイクアップアーティストのジータ・バス氏から勧められたということで(女優の)デブラ・メッシング氏からイリオス製品のリクエストがあった。メッシング氏はイリオス社のアカウントへのDMで、「ジータから、これまでで最高の鏡付きライトだと言われた。ジータは物事を誇張する人ではない」と述べている。
また、セレブ担当スタイリストのジェン・アトキン氏は、イリオス会社へのDMで、「ベラ・ハディッド氏を担当したとき、私のライトをすごく気に入ってくれた」と語っている。ステファニー・バレンタイン氏(グラムジラという別名で有名)やミケイラ・ノゲイラ氏らメガインフルエンサーもこの製品について絶賛する投稿をしている。
デディバノビッチ氏はこう述べている。「キム(カーダシアン・ウエスト)は私と同じように照明が大好きで、素晴らしい照明についてこだわりがある。それは彼女のキャリアの一部だから。私は、彼女の家やメイクルームで照明の変化を目にしているので、きっとこの製品を気に入ってもらえるだろうと確信していた。そのとおり、彼女にはすぐ気に入ってもらえ、いくつも欲しいと言われた。これはすばらしい兆しだった。彼女は(インスタグラムの)ストーリーにすぐ投稿して、「これは私がこれまで使った中で最高のライト」だと言ってくれた。これはとても嬉しかった。『やったぞ。長い間取り組んだかいがあった。皆から愛用されている。それこそ私が望んだことだ。製品が(メイクの)サポートになって欲しいし、信頼できる製品を手に入れたときの喜びを皆に感じて欲しいと思っている』。
[原文:Mario Dedivanovic on creating a makeup mirror for ‘the younger generation’]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)