ケリングは、3月22日水曜日、2020〜2023年の2回目のサステナビリティ進捗レポートを発表した。その5日前にニューヨークシティで行われたプレスイベントでは、2021年と比較して2035年までにガス総排出量を40%削減するという新たな取り組みが発表された。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
ケリング(Kering)は、3月22日水曜日、2020〜2023年の2回目のサステナビリティ進捗レポート(Sustainability Progress Report)を発表した。その5日前にニューヨークシティで行われたプレスイベントでは、2021年と比較して2035年までにガス総排出量を40%削減するという新たな取り組みが発表された。2017年、ケリングは長期的な持続可能性戦略を定義し、3年ごとに目標を更新している。前回の2020年はパリで開催されたイベントで進捗状況が共有された。
ケリングのチーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者であるマリー=クレール・ダヴー氏は、プレスイベントの前に「持続可能性について語るとき、透明性が重要だ」とGlossyに語った。
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ケリングの2025年に向けた持続可能性目標には、同グループのスコープ3の排出量を40%削減することがあった。同社は2021年にその目標を上回り、41%の削減を達成している。
また、このレポートにはサイエンス・ベースド・ターゲッツ(Science Based Targets)イニシアチブの摂氏1.5度未満に抑えるという計画に従って、サプライチェーンの排出量を削減するというケリングの計画も記載されている。さらに、同社は2021年以降、毛皮の禁止、持続可能な財務部門の設立、100%再生可能な電力の達成を行ったと記載されている。また、従来の農業を再生型農業に変えることを中心とした2つのファンドを共同で立ち上げている。
「(業界の)パラダイムを変えたいのなら、『自分で全部やろう』とは言わずにもっと幅広く行う必要がある」とダヴー氏。「自分でやることは本人には素晴らしいことだが、地球とほかの人々のための変化は十分ではない。イノベーションは我々のセクターの同業者からも生まれている」。
現在、ケリングは約250のスタートアップと協働していっそう持続可能なサプライチェーンを実現している。また、ファッションの中心地にある主要な大学と協力して持続可能性にフォーカスしたプログラムを立ち上げている。また、リシュモン(Richemont)所有のカルティエ(Cartier)と共同で、セクターの持続可能性を促進することに基づいたウォッチとジュエリーのイニシアチブを作成した。ケリングは2019年にファッション協定(Fashion Pact)を発表し、それに基づき昨年末には共同仮想電力購入協定(Collective Virtual Power Purchase Agreement)を導入した。
トップマネジメントによる持続可能性へのコミットメントも企業が進歩を遂げる能力にとって極めて重要だとダヴー氏は述べている。同氏は、ケリングのCEO兼会長であるフランソワ=アンリ・ピノー氏のリーダーシップにより、社内では継続的な変化が、業界全体では変革的なイニシアチブが推進されていることを称賛した。
ダヴー氏はまた、持続可能性に関連した現在の課題や消費者センチメント、ラグジュアリーブランドの「義務」についてGlossyに語った。
持続可能性に関するケリングの進歩は、ケリンググループのラグジュアリー購入客にとって現在どの程度重要だと思うか?
「消費者にとって持続可能性(の重要性)は複雑だ。もっとも若い顧客にとって、それは古い顧客や従来の顧客とは異なっている。従来の顧客は製品が完璧であることを確認したいだけだ。『完璧』には(美しい)デザインと品質だけではなく、(ブランドが)人と地球に注意を払っていることも含まれる。数年前とは異なり、気候変動はいまや西側諸国の現実であり、実感されている。従来の顧客はブランドに尋ねたりはしない。ラグジュアリーブランドの場合、会社と製品の品質は信頼されている。
しかし、Z世代は何らかの証拠を求めて質問してくる。また、詳しく学ぶことに心から興味を持っている。(たとえば)『気候変動の絶対的な目標は?』などとは尋ねないが、原材料がどこから来ているのかを知りたがり、会社のウェブサイトをチェックする。そのため、ケリングのブランドは企業レベルの情報を多く共有している。若い人々にとって、大きな違いはソーシャルメディアから生まれている。若い世代はラグジュアリーを購入する準備ができており、ラグジュアリーが大好きだ。だが、(企業が)持続可能性に留意していることを知りたがっている。この動きは世界中で起きており、高まり続けるだろう。
また、当社が(公開)企業であることも考慮する必要がある。当社は財務と従業員の観点の両方から多くの利害関係者を考慮に入れている。現在の従業員、特に若い世代にとって持続可能性は重要なトピックだ。人事担当者は面接で(持続可能性の観点から)会社は何をしているのかと多くの応募者から問われている。また、応募者は会社がどれだけ迅速に実行しているかも知りたがっている。ケリングではウェブサイトに多くの情報を掲載しているが、皆からはもっと知りたいと思われている。そこで、同僚の最高財務責任者と共にESGロードショーというものを始めた。ESGでは多くの疑問が提起されている。投資家やアナリストはリスクの観点からESGロードショーを捉えている。彼らは動物保護や社会的(責任)面で起こっていることを含めてあらゆることが適切に管理されていることを確認したいと思っている。…これは、部分的には、企業のみならず銀行や投資家に対しても厳しくなっているヨーロッパの(持続可能性)規制にも関連している」。
2025年の排出量目標を達成するにあたり、イノベーションで有名なメゾンは(ケリンググループ内の)それほど進んでいないほかのメゾンを埋め合わせたのか?
「かなりバランスが取れていた。課題はブランド別でもセクター別でもなく、実際には原材料によるものだ。たとえば、宝石に関して課題があるため、ウォッチ&ジュエリー・イニシアチブ(Watch & Jewelry Initiative)を立ち上げることにした。当社には美しい(ジュエリー)ブランドがあるが、量を考えると、サプライチェーンを変えるほどの量ではない。宝石と半貴石の完全なトレーサビリティを達成することは非常に複雑だ。時間がかかるだろう。たとえば、赤や青、緑の石の場合は市場はかなり小さい。また、宝石はさまざまな場所で採れる。だが、当社の金の購入は現在では100%エシカルだ」。
持続可能性へのアプローチを長持ちする製品を作ることに制限しているラグジュアリーブランドに対してはどう考えている?
「ラグジュアリーブランドは高品質で美しい原材料を注文するので(ほかのブランドより)サステナブルだ。持続可能性が会社のDNAに組み込まれている。だが、ラグジュアリーブランドでさえも向上し続けることはできる。子供が15歳になっても進歩し続けるように、向上はとどまることがない。ラグジュアリー分野にある企業には他社にはない責任がある。私は持続可能性はオプションではないと常に言っている。それは必須事項だ。そして、ラグジュアリー分野の企業にとっては義務である」。
[原文:Marie-Claire Daveu on Kering’s new sustainability targets: ‘Gen Z wants evidence’]
JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)