オレゴン州に拠点を置く160年の歴史を誇るペンドルトン(Pendleton)が大きく話題となったのはずいぶん前のことだ。正確にはあれは25年前だった。90年代後半、俳優のジェフ・ブリッジス氏が映画『ビッグ・リボウスキ(The Big Lebowski)』の撮影現場に同ブランドのウェスタリーセーターを着て現れた。いまではシグネチャーとなっているその衣装は、自分が演じるキャラクターのためにブリッジス氏自身が自宅のクローゼットから選んだものだった。
「ジェフ・ブリッジスに祝福あれ」と、ペンドルトンのマーチャンダイジング&デザインエグゼクティブバイスプレジデントで、この家族経営企業の6代目であるピーター・ビショップ氏は言う。もともと1972年にデザインされたそのセーターは、それ以来、「売れ筋」なのだという。「あの映画には本物のファンがいるし、あのような電撃的なものを生み出すのは難しい。私たちはいつも、次の『ビッグ・リボウスキ』のセーターは何だろう?と自問している」。
ハイエンドなメゾンと歴史あるアメリカンブランドのコラボ
多くの公式製品コラボレーションへの参加は、ペンドルトンが話題を集めるためのひとつの方法となっている。最近では、フランスのファッションメゾンであるメゾン・マルジェラ(Maison Margiela)とコラボレーションを行い、2023年秋にメゾン・マルジェラのランウェイコレクションでデビューした。そのスタイルは8月2日にメゾン・マルジェラの店舗とeコマースサイトで発売されている。価格帯はパンツの1200ドル(約17万4800円)から、フリンジカーディガンの2700ドル(約39万3000円)までとなっている。
メゾン・マルジェラはこのラインのプレスリリースで、ペンドルトンの「信頼性」と「クラシック」なスタイルを強調している。ペンドルトンは米国に残る4つのウール工場のうち2つを所有し、自社アイテムを生産している。そして、このコレクションは「クリエイティブな対話」であり、「米国の伝統的な織り職人による格子縞と、クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノ氏のオートクチュールの文法を融合させたものである」と表現されている。
もちろんハイエンドなファッションメゾンが歴史あるアメリカンブランドと手を組んだのは、これが初めてではない。リックオウエンス(Rick Owens)は2019年からチャンピオン(Champion)と、そして2021年からコンバース(Converse)とコラボレーションしている。あるいは2017年秋のヴェトモン(Vetements)×リーバイス(Levi’s)を思い浮かべてもいいだろう。だが、このトレンドは最近勢いを増している。
8月中旬だけをみても、ピーター・ドゥ(Peter Do)がギャップ(Gap, Inc.)のバナナ・リパブリック(Banana Republic)との今後のコラボレーションを発表しているし、ウィリーチャバリア(Willy Chavarria)はディッキーズ(Dickies)とのラインをデビューさせている。比較的入手しやすい層では、コムデギャルソン・シーディージー(CDG by Comme des Garcons)がザ・ノース・フェイス(The North Face)とのラインをデビューさせ、コンテンポラリーブランドのガニー(Ganni)はニューバランス(New Balance)とのスニーカーを発表した。そして、8月上旬に発表されたパレス(Palace)xマクドナルド(McDonald’s)も忘れてはならない。
オレゴン州に拠点を置く160年の歴史を誇るペンドルトン(Pendleton)が大きく話題となったのはずいぶん前のことだ。正確にはあれは25年前だった。90年代後半、俳優のジェフ・ブリッジス氏が映画『ビッグ・リボウスキ(The Big Lebowski)』の撮影現場に同ブランドのウェスタリーセーターを着て現れた。いまではシグネチャーとなっているその衣装は、自分が演じるキャラクターのためにブリッジス氏自身が自宅のクローゼットから選んだものだった。
「ジェフ・ブリッジスに祝福あれ」と、ペンドルトンのマーチャンダイジング&デザインエグゼクティブバイスプレジデントで、この家族経営企業の6代目であるピーター・ビショップ氏は言う。もともと1972年にデザインされたそのセーターは、それ以来、「売れ筋」なのだという。「あの映画には本物のファンがいるし、あのような電撃的なものを生み出すのは難しい。私たちはいつも、次の『ビッグ・リボウスキ』のセーターは何だろう?と自問している」。
ハイエンドなメゾンと歴史あるアメリカンブランドのコラボ
多くの公式製品コラボレーションへの参加は、ペンドルトンが話題を集めるためのひとつの方法となっている。最近では、フランスのファッションメゾンであるメゾン・マルジェラ(Maison Margiela)とコラボレーションを行い、2023年秋にメゾン・マルジェラのランウェイコレクションでデビューした。そのスタイルは8月2日にメゾン・マルジェラの店舗とeコマースサイトで発売されている。価格帯はパンツの1200ドル(約17万4800円)から、フリンジカーディガンの2700ドル(約39万3000円)までとなっている。
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メゾン・マルジェラはこのラインのプレスリリースで、ペンドルトンの「信頼性」と「クラシック」なスタイルを強調している。ペンドルトンは米国に残る4つのウール工場のうち2つを所有し、自社アイテムを生産している。そして、このコレクションは「クリエイティブな対話」であり、「米国の伝統的な織り職人による格子縞と、クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノ氏のオートクチュールの文法を融合させたものである」と表現されている。
もちろんハイエンドなファッションメゾンが歴史あるアメリカンブランドと手を組んだのは、これが初めてではない。リックオウエンス(Rick Owens)は2019年からチャンピオン(Champion)と、そして2021年からコンバース(Converse)とコラボレーションしている。あるいは2017年秋のヴェトモン(Vetements)×リーバイス(Levi’s)を思い浮かべてもいいだろう。だが、このトレンドは最近勢いを増している。
8月中旬だけをみても、ピーター・ドゥ(Peter Do)がギャップ(Gap, Inc.)のバナナ・リパブリック(Banana Republic)との今後のコラボレーションを発表しているし、ウィリーチャバリア(Willy Chavarria)はディッキーズ(Dickies)とのラインをデビューさせている。比較的入手しやすい層では、コムデギャルソン・シーディージー(CDG by Comme des Garcons)がザ・ノース・フェイス(The North Face)とのラインをデビューさせ、コンテンポラリーブランドのガニー(Ganni)はニューバランス(New Balance)とのスニーカーを発表した。そして、8月上旬に発表されたパレス(Palace)xマクドナルド(McDonald’s)も忘れてはならない。
斬新なパートナーシップで新しさを提供
中級ブランドが苦境に立たされ、ラグジュアリーブランドが成長を維持するのに苦労している今、こうした新鮮なコラボレーションは、両者にとって新たな消費者習慣を狙うチャンスとなる。トップクラスのラグジュアリー購買層は、経済的影響に対して並外れた回復力があると証明されている一方で、長年の実績があるヘリテージブランドは、品質を表現し、価値観を醸成し、ノスタルジアを掻き立てる。しかも価格が安いことが多い。さらに斬新なパートナーシップで新しさを提供することは、戦略としても実証されている。
「私たちはヘリテージブランドであるため、当社には次々とブランドから声がかかる」とビショップ氏は言う。「しかし社内のチームには市場に対する優れた洞察力やペンドルトンブランドに対する情熱があり、ブランドを守っている。だからチームはいつも『なぜ当社はこれをやるのか?』という質問からスタートする」。
ビショップ氏によれば、そもそもコラボレーションの相手としてメゾン・マルジェラが理にかなっていたのは、それがペンドルトンブランドと大きく異なっていたからだ。コレクションとそれに関するランウェイショーが提供する創造性と「パフォーマンス」は期待を裏切らなかったとビショップ氏は述べた。
メゾン・マルジェラ×ペンドルトンを開発するために、ペンドルトンのプロダクトライセンスおよびブランドコラボレーション責任者であるヘザー・アモレビエタ氏がマルジェラのデザインチームと協力した。ガリアーノ氏はペンドルトンのアーカイブから3種類の織物を選び、パーカーからチュールスカートまでのデザインに取り入れた。
ビショップ氏いわく、このコレクションを取り上げたブランドのソーシャル投稿へのコメントはさまざまで、「圧倒された」「興奮した」というフォロワーもいれば、明らかにそのルックに困惑しているフォロワーもいたという。
「過去に、私たちは自らの路線を守りすぎていると批判されたことがある。自分たちのオリジンから大きく逸脱することはないからだ。でもそれがプラスに作用している」とビショップ氏。「当社には扱うべき歴史や深いアーカイブがある。それをつねに新鮮で関連性があり、予想外のものにしておくことが課題だ」。
変革の旅に取り組むバナナ・リパブリック
創業45年のバナナ・リパブリックの場合、マーケティング責任者ミーナ・アンバリー氏いわく、2年前から近代化と高度化を中心とした「変革の旅」に取り組んでいる。その一環として、ニューヨークを拠点とするデザイナー、ピーター・ドゥ氏とのコラボレーションコレクションが10月に新たに発表される。
「私たちの伝統とピーターの個性的なデザインセンスが交差することで、顧客にとって新鮮なルックを作り出す」とアンバリー氏は語った。
新たな顧客にリーチし、ブランド認知を変化させ、バナナ・リパブリックのブランドと商品に対する欲求を高めることも目標のひとつだという。ドゥ氏が参加しているソーシャルメディアのコミュニティがそれらの取り組みをサポートするはずだと、アンバリー氏は言及した。
そのコレクションを説明するにあたって、同氏は典型的なラグジュアリーブランドの代名詞であるディテールに焦点を当てた。スタイルの「非の打ちどころのない」仕立てと職人技、そして質の高い素材と時代を超越したデザインに基づく製品寿命などだ。
ワークウェアコレクションを手がけるウィリー・チャバリア
そして、その対極にいるのがウィリー・チャバリア氏だ。ニューヨークを拠点とするこのデザイナーは、自身の名を冠したファッションブランドを入手しやすくするため、101年の歴史あるディッキーズとコラボレートし、ワークウェアコレクションを手がけることにした。そのコレクションは8月16日に発表されている。チャバリア氏は、8年前に立ち上げた自身のブランドを非独占的なラグジュアリーブランドだと表現した。コア・コレクションのTシャツは265ドル(約3万8600円)で、ディッキーズとの共同ブランドのジャケットは250ドル(約3万6400円)だ。
また、若い頃にディッキーズを愛用していたチャバリア氏自身のノスタルジーもコラボレーションの原動力になったという。包括性と信頼性という価値観において両ブランドが一致していたことも要因となった。
「このコラボレーションの背後にある伝統や職人技、そしてデザインに込められた豊かな歴史とのつながりを感じてほしい」とチャバリア氏は語った。「新しいオーディエンスへの扉を開く上で、コラボレーションは強力なものとなり得る」 。
コラボは創造性を発揮し、新たなオーディエンスにリーチする機会
ペンドルトンはそのことを熟知している。2009年、ペンドルトンはオープニングセレモニー(Opening Ceremony)と初めて大規模なファッションコラボレーションを行った。「それによってファッション業界の人々が当社を違った角度から見るようになり、私たち自身もペンドルトンを違った角度から見るようになった」とビショップ氏は語った。創造性を発揮し、新たなオーディエンスにリーチする機会を得たペンドルトンは、それ以来、定期的なコラボレーションに参加している。たとえば2015年にはカナダグース(Canada Goose)と組み、昨年はコールハーン(Cole Haan)とコラボした。2023年末までに、さらに2つのペンドルトンのコラボレーションがローンチされる予定だ。
コラボレーションはマーケティング戦略のひとつであり、「売上の大きな原動力になることはほとんどない」とビショップ氏は言う。だがこのブランドが、30代から50代の男女をコア顧客層としつつ、20代の購買層が増えていることは注目に値する。それは同社にとって長年の目標だった。
2011年にペンドルトンはポートランドコレクション(Portland Collection)を発表している。このコレクションは、カーハート(Carhartt)のカーハートWIP(Carhartt WIP)の流れを汲む、ファッションに敏感な若者購買層をターゲットにしたスピンオフラインだった。ビショップ氏によれば、社内で取り組むには楽しいラインであり、話題を集めたという。しかし、高級な素材、プレミアムなディテール、オリジナルなフィット感を取り入れたスタイルのため、販売価格は180ドル(約2万6000円)から850ドル(約12万3700円)と高額だった。そのため、このラインは「商業的に困難」であることが判明し、2014年に廃止された。
現在、ペンドルトンの家庭用事業は最大の収益を生み出すカテゴリーであり、ウールの毛布がその中心的な原動力となっている。第2位は、アウターウェア、ウールフランネルシャツ、セーターなどのメンズおよびウィメンズのトップスだ。卸売りと消費者への直接販売の割合は半々で、マーケティングミックスはソーシャルメディアや印刷カタログに重点を置いている。
ビショップ氏によると、パンデミックのあいだは、アウトドアにインスパイアされた衣料品や家庭用品への新たな需要のおかげで、予想外に売上が急増したという。だが、売上はバランスが取れてきた一方で、材料費、人件費、運賃は過去2年間で「大幅に」上昇しているという。
「価格圧力は感じている」とビショップ氏は述べた。「顧客が喜んで支払う金額には限界があり、適切なバランスを見つけることが課題となっている」。
「投資家への売り込みは難しい」:タペストリーの第4四半期決算が語る同社の未来
コーチ(Coach)、ケイト・スペード(Kate Spade)、スチュワートワイツマン(Stuart Weitzman)を所有するタペストリー(Tapestry, Inc.)は、8月10日にカプリホールディングス(Capri Holdings)の買収を発表して以来、アメリカンファッションの話題の中心だった。だが、8月17日に発表された第4四半期決算は、16.2億ドル(約2359.8億円)と、ウォール街の予想を下回った。
決算発表の直後、エドワード・ジョーンズ(Edward Jones)の消費者自由裁量アナリストであるブライアン・ヤーブロー氏は、今回の大規模な合併や、6つの関連ブランドの将来にそれがどのような意味を持つのかについて、Glossyに対し意見を述べた。以下は、わかりやすくするために若干編集された会話のハイライトである。
「タペストリーの株は買いだったが、カプリホールディングスの買収を発表した時点で格下げした。
小売企業の買収の歴史はあまりよくない。うまくいくものよりもはるかに多くの災難や問題がある。そして(大きな)買収をした2つの会社がうまくいかず、突然これらすべての会社を合併することになった場合、どうなるのか心配になる。事態は複雑になるだろう。だからこそ投資家への売り込みは難しい。
(さらに)カプリホールディングスの買収のために80億ドル以上(約1.2兆円)の負債を背負い、業績が低迷し始めたら、複数のブランドが苦境に立たされることになる。それはリスクを伴う状況に陥る可能性がある。
タペストリー単体であれば、私は(今回の業績について)もっと前向きに考えていただろう。
コーチはすばらしい仕事をしているが、スチュワートワイツマンとケイト・スペードはまだ開発途中だ。まずまずの四半期が続き、その後悪い四半期が続く。この経営陣が1年半近くかけて立て直しを図っているにもかかわらず、どちらも勢いを持続させることができない。ケイト・スペードは延々と70%オフのセールを続けており、消費者が異常なまでの値引きに夢中になっているのではないかと心配している。
コーチは商品に関してすばらしい仕事をしているし、何より商品がすべてだ。私は常々、CEOよりもクリエイティブディレクターの方が重要だと言っている。なぜなら、CEOが何をやろうが、商品が消費者が望むものでなければ売れないからだ。
コーチは値引きもあまりしていないし、生産性の低い小売店を大量に閉鎖した。さらに百貨店での販売も(最小限に)抑えている。百貨店は非常に販促的であり、ブランドを傷つける可能性がある。
だが、(やや気になるのは)コーチは過去数年間でマーケティング投資を倍増させているにもかかわらず、まだ市場ほど急速に成長していない点だ。
ヴェルサーチ(Versace)やジミー・チュウ(Jimmy Choo)はラグジュアリーブランドとみなされていた。これを買収してカプリホールディングスとし、高級ファッションメゾンに変身させる、それがマイケル・コース(Michael Kors)の魅力だった。
LVMHが成功を収めたことで、誰もがLVMHを模倣したいと思っている。だが、それは異なるモデルなのだ。まずひとつに、LVMHは値引きをしない」。
[原文:Luxury Briefing: Why luxury x American heritage brand collaborations are suddenly everywhere]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)