9月と10月の2024年春のファッションマンスは特筆すべきものになる。ブランドに最後の別れを告げるデザイナーに加えて、新たに任命された多くのクリエイティブディレクターが、輝かしいブランドのヴィジョンを体現する初のファッションコレクションを披露するからだ。そうしたブランドに、ホルストン(Halston)とエルベ・レジェ(Hervé Léger)がある。
7月12日から13日までニューヨークで開催されたリードイノベーションサミット(Lead Innovation Summit)のセッションの壇上で語られたように、2022年8月に就任したホルストンのクリエイティブディレクター、ケン・ダウニング氏と、2018年からエルベ・レジェを統括しているセントリック・ブランズ(Centric Brands)のシニアバイスプレジデント、メリッサ・ルフェル=コブ氏は、それぞれ約60年と40年の歴史があるラグジュアリーブランドを近代化すべく大きな変化を起こしている。
ルフェル=コブ氏にとって、その一環となったのは、6月にクシュニー・エ・オクス(Cushnie et Ochs)の創業者の片割れであるデザイナーのミッシェル・オクス氏を起用したことだった。身体にぴったりとフィットするバンデージドレスで知られるエルヴェ・レジェと同様に、クシュニー・エ・オクスもボディコンのシルエットの代名詞となるブランドだった。同ブランドは2020年にクシュニーという名前で閉鎖しているが、オクス氏はその2年前に会社から身を引いていた。
ダウニング氏とオクス氏は、どちらも現在の役職にてクリエイティブを完全に支配下におき、この9月に初のコレクションを発表する。ダウニング氏はホルストンに移籍した後、暫定的な「後始末」の期間を必要としていた。それは「すでに購入した生地と、(彼が)存在を知らなかったあちこちに散らばっている製品のライセンスの整理」に取り組むためだった。同ブランドの前クリエイティブディレクター、ロバート・ロドリゲス氏は2022年2月に同社を去っている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
9月と10月の2024年春のファッションマンスは特筆すべきものになる。ブランドに最後の別れを告げるデザイナーに加えて、新たに任命された多くのクリエイティブディレクターが、輝かしいブランドのヴィジョンを体現する初のファッションコレクションを披露するからだ。そうしたブランドに、ホルストン(Halston)とエルベ・レジェ(Hervé Léger)がある。
7月12日から13日までニューヨークで開催されたリードイノベーションサミット(Lead Innovation Summit)のセッションの壇上で語られたように、2022年8月に就任したホルストンのクリエイティブディレクター、ケン・ダウニング氏と、2018年からエルベ・レジェを統括しているセントリック・ブランズ(Centric Brands)のシニアバイスプレジデント、メリッサ・ルフェル=コブ氏は、それぞれ約60年と40年の歴史があるラグジュアリーブランドを近代化すべく大きな変化を起こしている。
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ルフェル=コブ氏にとって、その一環となったのは、6月にクシュニー・エ・オクス(Cushnie et Ochs)の創業者の片割れであるデザイナーのミッシェル・オクス氏を起用したことだった。身体にぴったりとフィットするバンデージドレスで知られるエルヴェ・レジェと同様に、クシュニー・エ・オクスもボディコンのシルエットの代名詞となるブランドだった。同ブランドは2020年にクシュニーという名前で閉鎖しているが、オクス氏はその2年前に会社から身を引いていた。
ダウニング氏とオクス氏は、どちらも現在の役職にてクリエイティブを完全に支配下におき、この9月に初のコレクションを発表する。ダウニング氏はホルストンに移籍した後、暫定的な「後始末」の期間を必要としていた。それは「すでに購入した生地と、(彼が)存在を知らなかったあちこちに散らばっている製品のライセンスの整理」に取り組むためだった。同ブランドの前クリエイティブディレクター、ロバート・ロドリゲス氏は2022年2月に同社を去っている。
再びファッションの人気ブランドになることを目指して
だが、パンデミックがファッションやそのほかのあらゆるものに与える影響を考えると、目下の課題としては、停滞している歴史あるブランド(これはブランド自体を軽視しているわけではない)を復活させる以上のことが求められている。それぞれの刷新を成功させるには、消費者の新しい行動、つまり、買い物客が最優先する価値観やノスタルジー、経験、文化的関連性などを考慮しなければならない。またロイヤルティに関していえば、移り気な買い物客の新たな傾向をブランドが克服できるかどうかもカギとなる。また、その傾向はZ世代だけにみられるものではない。
オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)で10年のキャリアを持つルフェル=コブ氏は、エルベ・レジェに入社した理由を、そのブランド・エクイティと、同ブランドを再びファッションの人気ブランドにするというエキサイティングな挑戦にあると語った。エルベ・レジェの最初の「ピーク」は80年代半ばで、ブランドのファンであるスーパーモデルによって人気を博した。その20年後、レイチェル・ゾー氏のクライアントであるセレブリティのおかげで、このブランドは再び脚光を浴びることになった。
それ以降の数年間、このブランドは、ジマーマン(Zimmermann)といったブランドとともに、よりソフトでフェミニンなルックの台頭といった挑戦を経験してきた。また、キム・カーダシアン氏の悪名高いスタイルのイメージチェンジも影響した。カニエ・ウェスト氏がクローゼットの整理整頓などを指示した際、カーダシアン氏にエルベ・レジェのスタイルをすべて捨てるよう命じたのだ。
ルフェル=コブ氏がエルベ・レジェに入社して最初の3年間は、ブランドの製品、プレス、生産の改善を含む再建計画が中心となった。エルベ・レジェを「一点豪華主義」のバンデージドレスブランドから進化させるべく、デザイナーのクリスチャン・ユール・ニールセン氏が迎えられたが、同氏は2022年に自身のブランドに専念するため会社を去っている。同時期に、エルベ・レジェが「人々に見られる」という「絶え間ない鼓動」を生み出すよう、PR会社カーラ・オットーPR(Karla Otto)が起用されたと、ルフェル=コブ氏は語った。その後、ジェニファー・ロペス氏がこのブランドを着用している。マーケティング予算が少なかった当時、ブランドのウェブサイトとインスタグラムのアカウントを作り直したことも重要だった。また、製品コラボレーションもオーディエンス拡大に役立っている。たとえば、エルベ・レジェはフランス人デザイナーのジュリア・レストワン・ロワトフェルド氏とコラボレーションし、リサイクル可能な糸を使用した洋服コレクションを発表している。これをきっかけに、エルベ・レジェはすべてのバンデージスタイル、つまり品揃えの65〜70%をよりサステナブルな素材で永続的に生産するようになった。また、消費者からの要望をもとに、パッケージもリサイクル可能なものにリニューアルした。ルフェル=コブ氏いわく、偶然にもレストワン・ロワトフェルド氏とのコラボレーションは、パンデミック後に「世界が開けた時」に発表された。スタイリストのロー・ローチ氏とのコラボレーションがこれに続き、さらに多くのセレブリティがこのブランドを着用するようになった。
『ヴォーグ(Vogue)』から『ザ・カット(The Cut)』にいたる出版物に掲載された2021年から2022年にかけてのエルべ・レジェの復活に関する記事では、何らかの形で「バンデージドレスが復活した」と宣言されており、この3年の計画は明らかに成功している。
過去から受け継ぎ、未来に目配せをする製品を
ルフェル=コブ氏とダウニング氏の両氏は、ブランドの伝統を適切な範囲で守ることの重要性を説明する際に同じような例を引き合いに出している。ルフェル=コブ氏は、エルベ・レジェのドレスを着ているときに夫に会ったという買い物客の話を引用した。かたやダウニング氏は「娘のブライズメイドのドレスはホルストンがデザインした」という買い物客のコメントを紹介している。 要するに、どちらのブランドにも昔からブランドに通い、ブランドを愛している忠実なファンがいるということだ。
「大事なものを無用なものと一緒に捨てることはしたくない」とダウニング氏は言う。しかし同時に、「スタジオ54(Studio 54)が閉鎖されて何十年も経っている時代」に、「スタジオ54の瞬間」を目指したくはない。彼がバランスを取る方法は、服を通じて女性たちを「解放する」というブランド創業者エルベ・L・ルルー氏の名声に沿って、女性たち、そして彼女たちが今日望む生き方に応えることだという。
人によって意見は分かれるところだが、ホルストンは2021年にNetflix(ネットフリックス)がブランド創業者を描いたドラマシリーズ『HALSTON/ホルストン(Halston)』を放映し、ある意味幸運に恵まれた。それ以前は、2世代にわたってホルストンの名前を知らない消費者がいたとダウニング氏は述べた。
ブランドを支配する際、さらに「古臭さを取り払う」ために、ダウニング氏はイブニングウェア中心の品揃えにスポーツウェアを導入した。ただし不快な変化を避けるため、夜に着用してもおかしくないスポーツウェアというラインを守っている。いまのところ、ドラマチックな演出を加えるカシミアのケープや着物風ガウンなどのアイテムがある。
小売アドバイザーで投資家でもあるケン・パイロット氏はこのアプローチを支持している。彼は、ブランドが復活を遂げるためには、「過去から受け継ぎ、未来に目配せをする」ような商品を出す必要があると述べた。また今日の市場において「優れた商品を持つ優れたブランド」の重要性を改めて強調した。
古いものはすべて新しく生まれ変わる
SAPのエグゼクティブファッションアドバイザー、ロビン・バレット・ウィルソン氏は「こうした役割を担うクリエイティブディレクターは、成功しなかったことを理由に退職することが多い。つまりそれはブランド(のDNA)から離れすぎてしまった場合だ」と語る。「自分たちを証明する期間として2、3シーズンしか与えられない」。
それでもウィルソン氏は、リーバイス(Levi’s)やカーハート(Carhartt)など、数十年の歴史があるブランドが進化に成功している点を指摘した。
さらにダウニング氏は、ホルストンのオーダーメイド(made-to-order)サービスを復活させ、「made to desire(デザイアメイド、欲望を作る)」と名称を変更した。顧客はクチュールレベルの体験を通じて、細やかなプロセスを経て作られるカスタマイズされた服に代金を支払う。これにはダウニング氏とのランチ・ミーティング、スケッチ・レビュー、生地選び、採寸とフィッティング、そしてそのルックを着用する日の着付けサービスが含まれている。
ダウニング氏はブランドの倉庫から発掘した30年分のアーカイブ・ファッションをもとにホルストンの「クチュール・クローゼット」も設立、スタイリストはクライアントのレッドカーペットイベントのためにアーカイブにアクセスすることができる。
現在のノスタルジーへの固執を指摘し、バレット・ウィルソン氏は「古いものはすべて新しく生まれ変わる」と述べ、その一例として、マーゴット・ロビー氏が映画『バービー(Barbie)』のレッドカーペットで披露したアーカイブからのルックを挙げた。
アーカイブへの新たなアクセスの提供とあわせて、より多くのブランドが結果的に社内で再販をローンチするようになるだろうとバレット・ウィルソン氏は予測している。そうすることで、ブランドは顧客生涯価値を高めると同時に成長トレンドに乗ることができる。
初のホルストンコレクションについて、ダウニング氏は「若々しい活力」と「グラマラスな魅力」を期待していると語った。ブランドはニューヨーク・ファッションウィーク(New York Fashion Week)中にそのルックの内覧会を開催する予定だ。それにあわせてウェブサイトやソーシャルメディアでブランドの新しいルックアンドフィールを更新し、タイムズスクエアのビルボードでも発表する。ダウニング氏は対応するマーケティングキャンペーンにさりげなく触れ、「ホルストンはジェンダーレスな名前」であり、ホルストンの服を着ていれば「誰でもホルストンになれる」と指摘している。同ブランドは来年中にメンズウェアをローンチする計画である。
[原文:Luxury Briefing: How Halston and Hervé Léger are hitting refresh for the post-pandemic era]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)