世界最大のファッションの持続可能性イベント、グローバルファッションサミット(Global Fashion Summit)が6月27〜28日、コペンハーゲンで開催された。LVMHやPVHなどの大手コングロマリット、ヒロス(Hilos)やサーキュローズ(Circulose)のような革新的な新興企業、オア財団(Or Foundation)などの慈善団体、EUの規制当局などが参加した。
今年は、規制が強まるファッション業界の将来への準備に焦点が当てられ、参加者にとって重要なポイントが2点あった。まず、ブランドはサプライチェーン全体にわたって信頼できるデータを収集すべきだということ。加えて、EUの新しい規制に沿ってビジネスモデルを再構築する準備を整え、新しい要件を満たすためにリソースを割り当てる必要があるということである。
データ収集の重要性
現在、ブランドの多くには、規制の制定時に必要となるサプライチェーン、製品、廃棄物処理に関する重要な情報が欠けている。今後、ブランドには、商品の構成や原産地、あらゆる段階で関与する関係者などを含めてサプライチェーン全体で商品を追跡することが義務付けられることになる。
再販プラットフォーム、ヴェスティエールコレクティブ(Vestiaire Collective)の共同創業者、ソフィー・ハーサン氏は次のように述べている。「ブランドは通常、どの商品が市場に出回っているかを知っている。だが、何が売れたか、何がデッドストックか、何が過剰在庫か、何が廃棄物なのかを理解していない。サプライチェーンには欠落しているデータがある。必要に応じて、データの欠落領域を特定するためにデータを長期間にわたって厳密に収集することが重要だ」。
データインテリジェンス会社、ワールドリー(Worldly)の最高戦略責任者、ジェームス・シェーファー氏は、「サプライチェーンに関するデータをもっともっと収集したい」と語った。ワールドリーはグリーンウォッシングのスキャンダルの後、5月にヒッグ指数(Higg Index)を使用せずリブランディングしている。
ワールドリーは5月、持続可能性認証に関する信頼性の強化を目指す認証サービス会社SGS(以前の名称はSociété Générale de Surveillance)との提携を発表した。「だが、当社は顧客やユーザーに対して、サプライチェーンにおいてカーボンの影響が最大である第2段階でカーボンを削減するための行動を起こすなど、データを使っていろいろなことを行い始めてほしいと思っている」とシェーファー氏は述べている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
世界最大のファッションの持続可能性イベント、グローバルファッションサミット(Global Fashion Summit)が6月27〜28日、コペンハーゲンで開催された。LVMHやPVHなどの大手コングロマリット、ヒロス(Hilos)やサーキュローズ(Circulose)のような革新的な新興企業、オア財団(Or Foundation)などの慈善団体、EUの規制当局などが参加した。
今年は、規制が強まるファッション業界の将来への準備に焦点が当てられ、参加者にとって重要なポイントが2点あった。まず、ブランドはサプライチェーン全体にわたって信頼できるデータを収集すべきだということ。加えて、EUの新しい規制に沿ってビジネスモデルを再構築する準備を整え、新しい要件を満たすためにリソースを割り当てる必要があるということである。
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データ収集の重要性
現在、ブランドの多くには、規制の制定時に必要となるサプライチェーン、製品、廃棄物処理に関する重要な情報が欠けている。今後、ブランドには、商品の構成や原産地、あらゆる段階で関与する関係者などを含めてサプライチェーン全体で商品を追跡することが義務付けられることになる。
再販プラットフォーム、ヴェスティエールコレクティブ(Vestiaire Collective)の共同創業者、ソフィー・ハーサン氏は次のように述べている。「ブランドは通常、どの商品が市場に出回っているかを知っている。だが、何が売れたか、何がデッドストックか、何が過剰在庫か、何が廃棄物なのかを理解していない。サプライチェーンには欠落しているデータがある。必要に応じて、データの欠落領域を特定するためにデータを長期間にわたって厳密に収集することが重要だ」。
データインテリジェンス会社、ワールドリー(Worldly)の最高戦略責任者、ジェームス・シェーファー氏は、「サプライチェーンに関するデータをもっともっと収集したい」と語った。ワールドリーはグリーンウォッシングのスキャンダルの後、5月にヒッグ指数(Higg Index)を使用せずリブランディングしている。
ワールドリーは5月、持続可能性認証に関する信頼性の強化を目指す認証サービス会社SGS(以前の名称はSociété Générale de Surveillance)との提携を発表した。「だが、当社は顧客やユーザーに対して、サプライチェーンにおいてカーボンの影響が最大である第2段階でカーボンを削減するための行動を起こすなど、データを使っていろいろなことを行い始めてほしいと思っている」とシェーファー氏は述べている。
規制に関する混乱
ほとんどのファッション企業は、グリーンウォッシングに関するEUの懸案中のガイドラインの影響を受けることになるだろう。また、すでに影響を受けているところもある。EUはまた、デジタル製品パスポートを義務化し、循環型生産に関する規則を施行し、製造業者の責任を拡大している。
サミットでは全会一致で持続可能性に関する規制が求められたが、規制がいつ実施されるのか、さまざまな規模のブランドに及ぶ影響はどのようなものか、規制が矛盾する場合にブランドはどうすべきかなどについてはほとんど明らかではなかった。これにはいくつかの要因が考えられる。
北欧のカルトブランド、ガニー(Ganni)は、自社がどの規制が影響されるかを徹底的に調査した。共同創業者のニコライ・レフストラップ氏は次のように述べている。「現在、当社にある程度関連する約40の異なる法律を監視しており、そのうち16件は当社業務に直接影響を与える法律であると特定した。これらには、デジタル製品パスポートや製造者の拡大された責任など、革新的なものがある」。
そのような措置は両方とも、サプライチェーンを理解し、追跡し、責任を負うという、より大きな責任をブランドに課すものである。
デジタル製品パスポート要件は、ラベルとテクノロジーを通じて今後数年間のうちにEUにより導入される。その目的は、消費財がどこから来たのかを追跡し、持続不可能な供給源からのものには課税することである。
EUの廃棄物枠組み指令(E.U. Waste Framework Directive)の一環として、製造者の拡大責任は「製品のライフサイクルの廃棄段階の管理について、製品の製造者が財務的責任、または財務・組織的責任を負うことを保証するために加盟国が講じる一連の措置」と定義されることになる。
「我々は規制に全面的に賛成だ。なぜなら、それによって競争の場が平等になり、持続可能性のアジェンダを前進させられるからだ」とレフストラップ氏。「だが、法案の大部分は2025年か2027年までは成立しないとEUから聞かされていることを懸念している」。
この遅れは、来年行われる選挙のせいである。その選挙により、誰が責任者になるかが決定し、消費者製品に対するEUの新しい原則の実施方法は間違いなくシフトするだろう。2024年までにパリを持続可能な都市にすることを目指すパリ・グッド・ファッション・イニチアチブ(Paris Good Fashion initiative)の顧問を務めるイザベル・ルフォール氏は次のように語っている。「3カ月以内に欧州議会の政治家や代表者らが選挙活動を開始することになる。したがって、規制はどれもゆっくりと進行しており、適用されないものもあるだろう」。
レフストラップ氏は、規制のなかには矛盾していたり、責任を完全にカバーしていないものがあると述べている。
中小企業に対する課題
ブランドが取り組むべきほかの課題には、規制基準を満たすためのリソースの割り当てなどがある。データの収集とデジタル製品パスポートの導入には大規模な投資が必要になるかもしれない。大手ブランドはすでにこのテクノロジーに投資しているが、ヨーロッパで事業を展開している中小企業にはそのレベルの投資を満たすための支援が必要になるだろう。
下着ブランド、ヌーデア(Nudea)のCEO、プリヤ・ダウンズ氏は「小規模で新興のブランドやデザイナーの将来がどうなるのかと疑問に思わずにはいられない。彼らには工場に対応できる交渉力もなく、現在義務付けられているレベルまでサプライチェーンを追跡するために必要なテクノロジーに投資する予算もない」と述べている。同氏はシャネル(Chanel)やバーバリー(Burberry)での職歴を持つ。ヌーデアはヨーロッパで事業展開する中小企業であり、現在、規制要件を満たすために調整を行っている最中だ。
「すべてのブランドにとっての大きな課題には、製造品目の量を減らすビジネスモデルへとどう変更するかということもある」とルフォール氏は述べている。過剰生産を排除し、ビジネスモデルを変更することはより持続可能な未来を実現するための基盤であるが、多くの企業は商品の製造から脱却する新戦略を策定することに依然として遅れをとっている。
気候活動家でストーリーテラーのアディティ・メイヤー氏は次のように語った。「グリーンウォッシングが横行する時代において、(リソースの割り当てや追跡テクノロジーへの投資などの)これらの変革は、企業が自社の社内活動を伝える方法を選ぶ際の基盤になるだろう。口先だけではなく証拠を示してもらいたいものだ。それによって、最終的には、ブランドが実際どれだけ持続可能であるかについて消費者が最終判断を下せるようになるだろう」。
[原文:Inside the Global Fashion Summit: The impact of the EU’s regulation on fashion goods]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)