製品のインクルーシブ化を推進しているビューティーブランドが、ARを活用したバーチャルトライオンを採用している。ザ・リップバーとフェンティビューティは、パーフェクト株式会社の技術を用いて、D2CサイトにARを使ったバーチャルトライオンを追加した。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
製品のインクルーシブ化を推進しているビューティーブランドが、ARを活用したバーチャルトライオンを採用している。
ザ・リップバー(The Lip Bar)とフェンティビューティ(Fenty Beauty)は、パーフェクト株式会社(Perfect Corp.)の技術を用いて、D2CサイトにARを使ったバーチャルトライオンを追加した。幅広いシェードを提供するインクルーシブなブランドであるザ・リップバーとフェンティビューティは、この技術を複数の製品カテゴリーに活用している。そのなかには、バーチャルトライオンの技術で最大の課題のひとつだった顔色に関する製品も含まれている。
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ザ・リップバーの新しいバーチャルトライオンツールは8月にローンチされ、まずはリップグロス、リキッドマットリップカラー、ティンテッドスキンコンディショナーの3製品からスタートした。
需要が増すバーチャルトライオン
ザ・リップバーのCEOであるメリッサ・バトラー氏は、9カ月に及んだ開発プロセスにおいてティンテッドスキンコンディショナーが「最大の課題だった」と述べている。「バーチャルトライオンを市場に出すまでのプロセスは長かった」と彼女は振り返る。「もっと早くすることもできただろうが、顧客が期待している結果を忠実に提供するために、できるかぎり正確なものにしたかった」。同ブランドでは、次はコンシーラー、4in1フェイスパレット、アイシャドーでバーチャルトライオンを導入する予定だ。
また8月には、フェンティビューティがウェブサイトにバーチャルトライオンを導入し、顔色、チーク、目、リップの各カテゴリーの400点以上のシェードの製品を試せるようになった。
AR試着は、物理的なテスターに代わる技術として美容ブランドから大きな関心が寄せられていたが、パンデミックの際にその需要が加速している。
「現実には、私たちのまわりにはテクノロジーがあふれており、その動きがあまりに速いため、顧客はバーチャルトライオンのようなテクノロジーツールに期待している」とバトラー氏は言う。「できるかぎり最高のD2Cビジネスを実現するためには、常に最新技術を取り入れていなくてはならない」。
あらゆる肌の色を正確にマッチング
これらのブランドがこの機能を採用したのは、オンラインでのメイクアップのトライオンにおけるインクルーシビティについて美容業界が取り組んでいるからだ。たとえば、セフォラ(Sephora)は最近、シェードマッチングシステムのカラーiQ(Color iQ)のシェード数の拡大を発表した。テクノロジーにおけるバイアスは、アルゴリズムや日常的な技術に関する議論においてますます注目されるようになっている。
「バーチャルトライオンを活用しているブランドは、いまでは周囲の環境や照明も考慮しながら、あらゆる種類の肌色を評価することができる。これはもっとも正確なマッチングを保証している」と言うのは、パーフェクトのCEOアリス・チャン氏だ。「何千枚もの臨床画像に裏打ちされたバーチャルトライオン体験は、信じられないほど幅広く多様な肌の色のスペクトラムを包括し、その精度も保証できる」。
顔色に関しては遅れていたトライオン技術
だが、顔色に関する製品のバーチャルトライオンは、口紅やアイメイク、さらにはネイル用品よりもずっと遅れて登場した。美容ブランドだけでなく、Google、Snapchat(スナップチャット)、インスタグラム、ピンタレスト(Pinterest)などの技術系プラットフォームも、今回のパンデミック中にARによるメイクアップトライオンの機能を拡充・追加している。ほとんどのプラットフォームは、まずリップと目もとの製品からスタートしている。
バトラー氏によると、顔色を正確に判断するのは「取り組む気にさえなれば」可能だという。
「顔色(に関する製品)を把握するのに数カ月かかった」と彼女は言う。「この技術をさまざまな違う肌の色の人でテストして、常に正しい色になるようにした」。結果の精密度を確約するために、部屋の照明がマッチさせるのに十分でない場合には、ユーザーに警告を発する機能も含まれている。
「年々、テクノロジーは向上しているが、それはより多くの人が導入するようになったことも理由のひとつ」とバトラー氏は言う。「そのおかげで、ザ・リップバーのようにごく自然にインクルーシブなブランドが、こうしたサービスに簡単にアクセスできるようになった。それは私たちがそのサービスを提供できるようになったからだ。バーチャルトライオンを活用するザ・リップバーのようなブランドは、さらに多くのサンプルを入手することができるので、時が経つにつれてこのテクノロジーは間違いなくさらに向上していくだろう」。
[原文:Inclusive beauty brands are embracing AR makeup try-on]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)