2011年創業のハッチは、何度も着られるブライドメイド用ドレス、「第4トリメスター(出産直後)」向けの製品など、製品カテゴリーを次々と生産。2020年には、コンテンツプラットフォーム、ベイブを立ち上げた。急成長を遂げるハッチの創業者、アリアン・ゴールドマン氏のインタビューをお届けする。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
アリアン・ゴールドマン氏は、専門分野をもつシリアルアントレプレナーだ。ゴールドマン氏は最新の米Glossyポッドキャストで、「人々から必要とされているものを作ろうと常に努めている」と語っている。これは、2007年には、何度も着られるブライドメイド用ドレスにフォーカスしたツーバーズ・ブライドメイド(Twobirds Bridesmaid)のローンチを意味した。そして、2011年には、ハッチ(Hatch)が誕生した。
妊娠中にひらめいたアイデアから生まれた事業
「長女を妊娠していたときのことだ。出産についてはワクワクしていたが、教えてくれる人もおらず、また、何を話していいのか、何を探していいのかわからなかった」とゴールドマン氏は述べている。「そのときにアイデアがひらめいた。自分が感じているように、ほかの女性たちもきっと出産について話し合える相手やアドバイスを求めているに違いないと思った」。
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こうして、ゴールドマン氏は、妊娠前から妊娠中、出産後に着られる服を中心としたD2Cブランドのハッチを立ち上げた。同氏によると、現在では顧客の20%が妊娠していない女性なのだという。同社はその後、ビューティ製品や、授乳用ブラなどの「第4トリメスター(出産直後)」向けのものを含む製品カテゴリーへと拡大。2020年には、ベイブ(Babe)というコンテンツプラットフォームを立ち上げた。
ハッチの成功の中心には、驚異的な活動をしてその成長を促進してきた熱心なコミュニティの存在がある。同社の年間売上高は2021年に80%増加し、ゴールドマン氏は2022年には40〜50%の成長を予測している。
同氏は、パンデミックで店舗が休業しているときにも、学びのイベントを利用してハッチがどのようにコミュニティを成長させていったかについて語ってくれた。以下に、ポッドキャストの会話のハイライトをいくつか紹介する。読みやすさのために若干の編集を加えてある。
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コミュニティの構築のためにイベントを利用すること
「ハッチを始めたとき、使う人たちが気分が上がる製品を提供したいと思った。ブランドの進化やビューティビジネスと小売業の構築のさまざまな層を何年も経験してきたが、コミュニティがブランドとしてのハッチの成功の大きな要因になるとは想像もしていなかった。我々の小売店の階下にはスペースが設けられており、そこで、学習、助産婦、出産前の話や流産についての話などの対面式のイベントを開催することができた。どれも女性たちをつなげる実に素晴らしい方法だ。
来店した女性が買い物をして帰っていくとは限らないが、女性をサポートしているハッチというブランドを知って、笑顔で店を去っていく。これこそがハッチの姿。製品だけでなく、コミュニティや学びを通じて解決策を提供する有意義なブランドに成長した。
コロナ以前でも、ニューヨークやロサンゼルス以外の女性たちに学びの機会や指導者たちとのつながりを持ってもらおうと、イベントのデジタル化をすでに始めていた。だが、(パンデミックによって)我々のコミュニティに向けて、海外でも国内でも全女性のために、提供している優れた情報へのアクセスを届けたいという現実は加速された。
そして、コロナ禍中でイベントをデジタル化した。ひとつのイベントで2000人を超える申込者があり、我々はこれから母親になる人たちの家庭に関わることができる。彼女たちの自宅に質問があったら話し合える信頼できる人々の輪があることになる。我々がそのような女性たちにとってのリソースになっていると感じられることほど、ハッチを構築する上でやりがいのあることはない。ほかの女性たちとのつながりや集まりの重要性を信じているので、対面式イベントに戻っていくつもりだ。だが、イベントのデジタル化は我が社にとって偉大な瞬間だった。それによって我が社を未来へ推し進められると思っている」。
認知度を築くこと
「最初の6年間は事業をひとつひとつ積み上げていった。資金は入ってこなかった。私は自分をブランドビルダーとして考えているが、ブランドをゼロから築くのが好きだ。つまり、人々から必要とされている優れた製品に対する草の根のアプローチということになる。最初の5年間は実際に製品を持って国じゅうを旅して回り、トランクショーを開いたり様々な人たちと会ったりした。私は、地道に活動して、ハッチを気に入ってくれた女性たちが友人に勧めたりして、そうやってクチコミでブランドについて知ってもらえるようにしたかった。PRはしていたが、当時はセレブとの協働のための資金はなかった。そんなわけで、我々が市場で唯一の会社だったので、本当にオーガニックな方法で知られるようになった。どの製品もすばらしいので、セレブから自然にアプローチされて、知名度が広まっていった。
いまではセレブから絶賛され推薦されているが、セレブはハッチの成功のための唯一の方法とは限らないと思う。今日の顧客はもっと賢いと思う。我々がソーシャルメディアを通じて得ているコンテンツ量はとても豊富なので、セレブに注目する瞬間もあるが、それは本当に短いあいだだけ。そうなると、本当に影響を与えるにはどうすればいいのか、ということになる。
また、各自の分野で信頼性と有効性をもつ他企業とのコラボレーションは、我々にとって大成功だったと思う。J.クルー(J.Crew)との協働もあったし、ターゲット(Target)ではザ・ナインズ・バイ・ハッチ(The Nines by Hatch)という低価格の優れたラインを販売している。これは、より手頃な価格で大勢の女性にリーチするための素晴らしい方法。他分野の小売業者と協働することは、ブランド認知度の観点から、注目してもらい理解してもらうためには抜群の方法だった。私はコラボレーションを100%支持している」。
資金調達について
「女性の人生において、出産は明らかに期間限定。(ローンチした)10年前は、投資家コミュニティは圧倒的に男性中心だった。私にとっては、自分が成功するコンセプトを持っていることを世界に証明するのが鍵だった。最初の6年間はとにかく地道に活動して、事業をゼロから構築することが私の概念実証だった。なので、市場進出をしたときに一気に事業を加速すべきだとわかっていた。概念実証を握っていたのだから。『投資家の皆さん、私は何を言われようとできると信じている。任せてくれ。我が社の成長ぶりや女性たちから必要とされている様子を見て。顧客から求められている。
そして我が社には、新入生の顧客(新しい妊婦や出産したばかりの女性)たちが毎年やってくる。(投資家が気にするような)重要点はすべて対応してある。事業はうまく行っているのだから、私に投資してくれ』と言うことができた。こうして素晴らしい投資家たちを得られて、毎年成長を続けられている。社歴10年になるが、まだまだハッチは始まったばかりだ」。
JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:小玉明依)