業界のリーダーや専門家、友人をカリフォルニア州ランチョ・ミラージュに招き、現在の課題にどのように対応しているか、そして2022年に向けて取り入れようとしているトレンドなどについて話を聞いた。数多くの変化の要因の中でも重要なのは、以下の3つの動向である。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
重要なホリデーシーズンに突入しているが、2021年を締めくくる前にビューティブランドにはまだ多くの仕事が残されている。とはいえ、戦略的な重大な決断はすでに下されているし、計画も実行に移され、マーケターは来たるべき次の問題を予測して対応しているところだ。
次の問題とは、多くのブランドがまっさきに思い浮かべるのはサプライチェーンに関するものだろう。製造や出荷の遅延から、材料調達のトラブル、度重なる問題によるドミノ効果にいたるまで、サプライチェーンにまつわる問題はさまざまな形でブランドに影響を及ぼしている。いまもなおCovid-19によるパンデミックによる連鎖反応が美容業界全体に感じられる。ブランドは仕事の未来に関して大きな決断を迫られており、「大退職時代」という文脈では、かつてないほどの危機的状況に陥っている。ほかの業界と同様に、雇用問題は美容小売業界にも波及し、美容ブランドがフィジカルリテールとデジタルリテールの相互関係を再考する際にも影響を与えている。
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変化のスピードは速い。Glossyは美容業界で起きている多くの変化やイノベーションに期待を寄せている。さまざまな出来事が続けざまに起こった今年が終わろうとしているなか、Glossyのビューティ&ウェルネスチームは、美容業界の動向を探るべく、業界でもっとも優秀な人々が集う2021年ビューティサミットを主催した。11月15日から17日にかけて業界のリーダーや専門家、友人をカリフォルニア州ランチョ・ミラージュに招き、現在の課題にどのように対応しているか、そして2022年に向けて取り入れようとしているトレンドなどについて話を聞いた。数多くの変化の要因の中でも重要なのは、以下の3つの動向である。
・これからのリテールの形
・消費者、特にZ世代は、かつてないほどスキンケアに精通している
・ビューティブランドが新たなオーディエンスにリーチするのを助けるのは、業界をまたがるクリエイティブなコラボレーション
以下では、上記の動向を浮き彫りにするエグゼクティブインタビューを取り上げるとともに、来年に向けて具体的な計画を立てる際に知っておくべき、Glossyビューティサミットでの話題をいくつか紹介する。
これからのリテールの形
ほかの小売カテゴリーと同様に、美容業界もかつてないほどの変化を遂げている。実店舗が復活したものの、Covid-19のパンデミックによって一気に広まったeコマースが以前の状態に戻ることはないだろう。美容小売業の未来はオンラインとオフラインショッピングの融合にあり、ブランドはAR、VR、AI、ライブストリーム技術などを活用して完全にシームレスなショッピング体験を生み出そうとしている。
現在、もっとも興味深い発展のひとつが、ビューティブランドと大型店舗との革新的なパートナーシップだ。ターゲット(Target)やコールズ(Kohl’s)といった店舗が、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)やセフォラ(Sephora)のような美容小売業とそれぞれタイアップして「店舗内店舗」を設置している。こうした協定は、大衆向け大型店舗の美容売り場を即座にアップグレードするに等しく、美容小売業者は自社製品を新たなオーディエンスに提供することが可能となり、消費者はほしいものを買いたいときに手に入れられるようになる。
量販店もまた、美容ブランドとのコラボレーションによって包括的で多様な製品ラインを生み出している。ウォルマート(Walmart)でスペシャルティヘアケアのマーチャンダイジングを担当するエンジェル・ビーズリー氏と、プロクター・アンド・ギャンブル・ビューティ(Procter & Gamble Beauty)の北米ヘアケア・バイスプレジデントであるレラ・コーフィ氏は、多孔質なカーリーヘアやコイリーヘアのために考案された保湿ヘアブランドのノウ(Nou)を両社が協力して開発したと語った。
エグゼクティブインタビュー
アルタ・ビューティのチーフ・マーチャンダイジング・オフィサーであるモニカ・アルナウド氏と、ターゲットのビューティ・バイスプレジデントおよびジェネラルマネージャーであるカサンドラ・ジョーンズ氏が、最近もっとも注目を集めている美容小売のコラボレーションの背景や、よい結果を出すためのアイデアについて語った。
プリヤ・ラオ(Glossyエグゼクティブ・エディター):今回、アルタとターゲットの双方にとって非常に理にかなった、成功した事業となった理由は?
モニカ・アルナウド:この分野はとても混乱しており、我々が一緒に何かをするにはタイミングとしては完璧だった。まず第一に、アルタ・ビューティには強みがある。当社はビューティに集約されたすばらしい専門知識を有しており、ブランドパートナーと非常に良好な関係を築いているし、プレステージについて理解している。プレステージビジネスについては熟知しているため、他社とは比較にならないほどの品揃えがある。またアルタには固定ファンがいる。こうした点をターゲットの長所と組み合わせた。ターゲットは多くの顧客に気に入られている小売店であると同時に、固定客という観点でも優秀だ。ターゲットには優れたオムニチャネルがあり、多くのトラフィックのある複数のカテゴリーにおよぶ商品が揃っている。だからこそ、当社とターゲットそれぞれの持ち味を融合することは、互いにとってまさしく適切なことだった。
ラオ:ターゲットはビューティにおいて全面的に変革を行っており、あなた自身もその多くに関わっているが、店舗の品揃えに関してアルタ・ビューティに参加してもらったのはなぜか。存在感を高めるためか、あるいは変化のためか。それとも顧客に重厚なイメージを与えるため?
カサンドラ・ジョーンズ:私たちがよく話し合っていたことのひとつには、顧客からのそうした要望があったということが挙げられる。いまでは顧客に気に入ってもらえているのをわかっているが、当時はそのニーズに応えるにはどうするのがいちばんよいのか、と話していた。どうしたら市場に安心感を生むことができるだろうか、どうやったら市場で差別化を図ることができるのか。そして、その空間で何か違うものを定義するには何をしたらよいのか、そうしたことをじっくり検討した。モニカと私たちのチームには、プレステージブランドやその品揃えのキュレーションに関する優れた知識や経験があった。それを活かして協力することで、私たちの顧客は以前よりも頻繁に商品を手にして購入できるようになり、日々の買い物で店舗を訪れたときに安心と喜びを感じられるようになった。
ラオ:何か驚いたことは? 顧客が興味を持つカテゴリーやブランドは? それらは予想通りだった?
アルナウド:驚いたことのひとつは、開始早々からヘア関連へのトラクション(顧客をつかむ牽引力)が大きかったことだろう。ヘア製品は当社でもとても調子がよいが、ヘアブランドの商品はかなり数を絞ってセレクトしていたにもかかわらず、信じられないほど好調だった。パターン(Pattern)、ウェイ(Ouai)、ドライ・バー(Dry Bar)といったブランドが人気がある。ほかのカテゴリーで現在もっとも期待しているのは、まずメイクアップが復活していること。メイクアップは再浮上し、トラクションが多い。スキンケアも強いし、我々が導入したフレグランスもとても好調だ。思い浮かぶいくつかのブランドと製品で言うと、まずはタルト(Tarte)のシェイプテープ(Shape Tape)というコンシーラー。それからカテゴリー全体ではマスカラも好調で、トゥーフェイスド(Too Faced)のベターザンセックス(Better Than Sex)、MACのマジックエクステンション(Magic Extension)、ベネフィット(Benefit)のバッドギャルバン!(Badgal Bang!)といったマスカラが売れている。
消費者、とくにZ世代は、かつてないほどスキンケアに精通している
必然的に、今回のビューティ・サミットではいかにしてZ世代のオーディエンスと関わり、若い消費者とコミュニケーションをとるかということが繰り返しテーマとして取り上げられた。この1年間、多くのブランドが積極的にTikTokに関わっており、ユーザー生成コンテンツがどのようにブランドに利益をもたらしたのか、またフリップ(Flip)やニューネス(Newness)といった新しいプラットフォームをブランドはどのように開拓しているのかといった、参考事例を聞くことができた。
Z世代は教育的で有益な美容コンテンツを求めていると指摘したのは、ガルダーマ(Galderma)のジューン・リザー氏だ。ガルダーマが所有するセタフィル(Cetaphil)では、TikTokのインフルエンサーと協力して、「教育や科学を活性化しようと試みた際には、より教育的で情報満載で、かつ楽しく親しみやすい方法で行った」とリザー氏は述べている。Z世代は美容製品の使い方だけでなく、製品に何が使用されていて、どのように製造されているのかという点にも強い関心を持っている。美容の世界でこのニーズにうまく応えているのは、製品を深く掘り下げて紹介する動画でTikTokでは数百万人のフォロワーを引きつけているスキンフルエンサー、ハイラム・ヤーブロ氏をおいてほかにはいないだろう。
エグゼクティブインタビュー
スキンフルエンサーのスターであるハイラム・ヤーブロ氏は、最近ジ・インキーリスト(The Inkey List)とのコラボレーションで自身のブランドとなるセルフレス・バイ・ハイラム(Selfless By Hyram)をローンチした。今回のサミットにはヤーブロ氏と、ジ・インキーリストの共同設立者マーク・カリー氏およびコレット・ラクストン氏が参加し、消費者へのスキンケア教育やZ世代のオーディエンスの興味を引くための視点について共有した。
リズ・フローラ(Glossyシニアビューティおよびウェルネスレポーター):あなたがたは明らかに科学に注力したアプローチをとっており、製品に多くの新成分を使用している。スキンケアの成分について、消費者をどのように教育しているのか?
マーク・カリー:なぜそれが自分に合っているのかを消費者が理解することがトリガーポイントとなると考えている。スキンケアのあらゆることに興味がある人や混乱している人、どんな人に対してもその人たちが触れるものすべてに関する知識のすばらしさを伝えるために、まさしくインキーリストは存在している。私たちのパッケージを見てもらえれば、知識がすべてだとわかるだろう。成分をどのようにいうか、それを日常のルーティンにどうやってきちんと組み込むのか。その製品とどのように接するかを問わず、消費者にはあらゆるものに関する知識を提供しなければならない。
フローラ:以前の世代と比べて、Z世代はスキンケアについての知識があるのか?
ハイラム・ヤーブロ:Z世代はスポンジのように情報を吸収する。そういうところがとても好きだ。視聴者があまりに知識豊富で常に学んでいる空間をナビゲートするのはむずかしいので、時にはイライラすることもあるが、すばらしい機会だと思っている。おかげでひとつひとつの成分の配合など、あらゆることについて可能な限り多くを学んでいると確認できるだけでなく、消費者もブランドの水準を高く保とうとしている。そこが本当にすごいことだし、まさに業界をポジティブな方向へと導いてくれる機会となっている。
フローラ:ハイラムにとって間違いなくTikTokで最高の1年だったと思うが、TikTok以前はYouTubeにかなり多くのファンがいたかと思う。Z世代がスキンケアの情報を得る場所について教えてほしい。すべてTikTokなのか、それともほかに利用しているプラットフォームがある?
ヤーブロ:どんなレベルの情報を求めているかによるが、ほぼ均等に分布していると思う。TikTokのメリットは、とても短い形式のコンテンツであること。スピードがかなり速く、すばやく理解できる情報をパッと得られる。業界を問わず、Z世代の大半がTikTokを利用していると思うが、とくにスキンケアに関してはそうだ。最近では、たくさんの皮膚科医やエステティシャン、化学者たちがTikTokで評価されるようになったのを目にしていて、とてもいいことだと思う。より専門的なスキンケア情報に若い人たちが簡単にアクセスして理解できるよう、民主化しているからだ。
YouTubeは、スキンケアの情報をもっと深く知りたいと思っている人や長編コンテンツを求めている人、製品の機能を理解したいと思っている人にとってすばらしいプラットフォームだ。全体的にみるとZ世代でも傾向が分かれていて、必ずしもTikTokにいるのはZ世代だけで、ミレニアル世代以上はYouTubeにいるというわけではない。というよりも、自分の場合はおすすめの製品など、決まったタイプのコンテンツをそれぞれのプラットフォームに合わせて制作する必要があるのだと思う。
ビューティブランドが新たなオーディエンスにリーチするのを助けるのは、業界をまたがるクリエイティブなコラボレーション
現在、ビューティマーケティングで扱いにくいのは、潜在的なオーディエンスがオンラインのどこに存在しているのかを把握することだ。今日のカルチャーは、ミレニアル世代が育った世界と比べて非常に多様で断片的になっている。そのため、ゲーム、音楽、アニメなど、ほかの方法ではリーチできないようなコミュニティに入りこむためにクリエイティブなコラボレーションを行うなど、ビューティブランドは思い切って新たな領域へと進出している。
ファレル・ウィリアムス氏のスキンケアブランドであるヒューマンレース(Humanrace)の共同設立者で社長のレイチェル・マスカット氏は、アディダス(Adidas)とコラボレーションしてヒューマンレースシコナ(Humanrace Sičhona)というスニーカーをリリースしたことに触れ、それがスキンケアやボディケア製品のラインをどのように補完したのかについて語った。またネイルブランドのマニミー(ManiMe)の共同設立者でCEOのジュヨン・ソン氏は、マニミーがハローキティと行ったように、セレブリティやIP(知的財産)との提携は「製品のデザインや実際のパッケージを通じて、その製品がどのように見えるかを再構築する」方法だと述べた。一方、アーバンディケイ(Urban Decay)のジェネラルマネージャーであるマレーナ・イゲラ氏は、さまざまなサブカルチャーとの関わり方や、美容の世界を作り変えようとしている変化の中で強気でいる理由など、魅力的な深い話を聞かせてくれた。
エグゼクティブインタビュー
メイクアップブランドのアーバンディケイのジェネラルマネージャーであるマレーナ・イゲラ氏は、マーベル・スタジオ(Marvel Studios)やプリンス氏の遺産との最近のパートナーシップ、Twitch(ツイッチ)を通じたゲームへの進出など、美容業界がこれまで敬遠してきた分野におけるコラボレーションについて語った。
リズ・フローラ(Glossyシニアビューティおよびウェルネスレポーター):興味深いコラボレーションをたくさん行っているが、アーバンディケイのコラボに対するアプローチや、理想的なコラボパートナーの選び方について聞かせてほしい。
マレーナ・イゲラ:まずはアーバンの原点の物語に戻って、そこから始めなくてはならないと思う。コンサルタントのサイモン・シネック氏の言葉を借りるなら、人は「何を売るか」ではなく「なぜ売るか」を買う。私がアーバンをとても気に入っているのは、違いについて誰も語っていなかった時代に、ほかとは違うことを支持していたことだ。今、アーバンが優れているのは、私たちのようにある意味違いを称えていて、違いを求めているパートナーと本当に協力すること、それを確実に行うために常に挑んでいるという点だ。たとえばマーベルの場合、マーベルのキャスティングは非常に目的意識が高く、数年前のマーベルと比較してもまさしく今の時代に合っている。だからこそ、アーバンの違いのDNAを活かしたいし、仲間に引き入れたパートナーと「1+1=3」という方程式を作るにはどうすればよいのかを考えている。
フローラ:最近のコラボレーションではポップカルチャーに注目している?
イゲラ:アーバンではカルチャーのスピードに合わせてフォーカスしている。私自身はとくに、サブカルチャーで何が起きているかを理解することに夢中で、具体的には、より小さいコミュニティを大々的に世に喧伝するのがかなりおもしろいと思っている。コミコンのコミュニティや熱狂的なプリンスのコミュニティに属している人たちのことを思い浮かべてもらえれば、まちがいなく共感できるはず。カルチャーのスピードに合わせて、コミュニティやマニアを賞賛することが大切だと思う。
フローラ:架空のキャラクター、アニメのキャラクター、映画のキャラクターとのコラボレーションがますます増えており、こうしたことが美容業界で起きているのはとても興味深い。これらは新たなビューティインフルエンサーなのか?
イゲラ:みんな楽しいことを求めているのではないか。とくにここ数年は大変だったし、それぞれが個性を発揮する時期なのだと思う。メイクアップに起きていることで本当にエキサイティングなのは、メイクアップのカテゴリーが復活していることで、しかも違う形で戻ってきた。それがいい。私たちにとってもよいことだと思う。新鮮な視点を与えてくれるし、これまでの美容で当たり前だったことが変化して、メイクアップとの関わり方や楽しみ方も変わる。本当にわくわくする時代になるだろう。業界の向かう先に何が待ち受けているのか、とても楽しみだ。
そのほか、知っておきたいこと
ヘリテージブランドは業界の変化に対応する方法を模索している。レブロン(Revlon)のアメリカのプレジデントであるヘザー・ウォレス氏は、パンデミックの際にD2Cコマースを展開して成功したことについて語った。実店舗が復活したことで、顧客はレブロンを求めて小売店に戻ってきているとウォレス氏は述べたが、ブランドは過去2年間の経験から「利便性」が再定義されたことを受け入れなければならないとも話している。「利便性とは、単に地元にある店舗のことではない。すぐに店に入ったり出たりできるということだけではない」と彼女は指摘する。「オンラインでもオフラインでもスムースに移動できて、好きなときに好きな場所で買い物ができるということだ」。
また美容業界の多くのエグゼクティブは、将来の仕事のあり方についてどのような結論を下すべきか、いまも迷っている。オフィスに戻るのか、チームがリモートで仕事をするのか、あるいはその両方を組み合わせるのか。ウォレス氏は、レブロンの未来の仕事の方針は「大切な瞬間」という考え方に従うようになるとして、フルタイムでオフィスに戻ることはないだろうと述べた。その代わり、対面でのミーティングに重きを置くのは、実際に会ってコミュニケーションする必要があると判断される場合のみとなるだろう。「女性を支援し、女性に向けて製品を販売する会社であるなら、社内においてもそのことをしっかりサポートする企業でなくてはならない」。
リモートワークを続けるチームは、バーチャル会議に勝る個人的なつながりを構築し、チーム意欲を維持するように努めるべきだ。タワー28(Tower 28)の創業者でCEOのエイミー・リュー氏は、新入社員が同僚と顔を合わせる場を設けたり、長年の同僚同士で再び集まる機会を作るために、パームスプリングスでリトリートを開催したのがうまくいったと述べた。
当然ながらサプライチェーンの問題は美容業界にとって大きな打撃であり、すべてのブランドがそれぞれに異なる痛手を負っている。リュー氏いわく、新しい製品ラインを立ち上げることは、仮に最盛期であったとしても小規模なブランドには難しいという。多くのブランドにとって、いまローンチを行うのはあまりにもリスキーだ。「私たちは小さなブランドなので慎重に成長しようとしている」とリュー氏は話す。「大きなローンチで失敗することはできない」。
注目の事柄
Flip(フリップ)
ライブコマースモバイルアプリのフリップは、米国でソーシャルコマース革命を起こすプラットフォームになり得るだろうか? タワー28をはじめ、フリップの可能性をすでに模索している多くの美容ブランドに話を聞いてみた。ライブストリーミングは、中国ではeコマースの主力となっているが、米国の消費者の多くはまだこのフォーマットにはそれほど関心を寄せておらず、ライブコマースでの購入も少なかった。だがようやく米国でもライブストリーミングの勢いが増しつつあり、ライブストリーミングが真に主流となるのは単純に時間の問題だろうと、あらゆる兆候が示している。
おわりに
今回のビューティ・サミットを終えて、2022年に業界にはどんなことが待ち受けているのか、非常に楽しみになっている。予見できないこともあるし、今後の課題を軽視しているわけではない。パンデミックの影響はこの先もまだ進歩を遅らせるだろうが、来年にはサプライチェーンの問題が解決して、より自由でスムースに商取引が行えるようになることを願っている。とはいえ、今年始めの業界の状況を思い出してみよう。店舗は閉鎖されているか活気が失われ、私たちの多くはスウェットパンツをはいてノーメイクのまま自宅で過ごしていた。
来年は美容業界にとってすばらしい年になると考えている。この2年間にビューティビジネスを揺るがしたいくつかの大きな変化の成果を、実際に目にすることになるだろう。美容小売店とブランドの間ではさらにクロスオーバーが行われるようになり、美容消費者の多様性に対応した製品ラインが増えることが予想される。ビューティブランドは、消費者を喜ばせ、新たなファンを獲得するようなコラボレーションをするだろう。そしてライブストリーミングブームの到来から、ARストアを融合したシームレスなショッピング体験、バーチャルトライオン、マスタークラス、リモートビューティアドバイザーへのアクセス、実店舗への新たなアプローチにいたるまで、私たちはまさにビューティリテールとマーケティングの魅力的な新時代の最前線に立っている。さらにメタバースについては、来年以降もっと多くのことを耳にするようになるはずだ。それではホリデーシーズンを楽しんで。2022年のGlossyの次のイベントでお会いしよう。
[原文:Glossy Report: What’s next for beauty in 2022?]
IAIN SHAW(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)