インスタグラムは2月、「クリエイターがフォロワーとの交流を深めるための新しい方法」として一斉配信チャンネル(Broadcast Channels)を発表、6月には一部のユーザーに対してこの機能の利用を開始した。それ以来、 […]
インスタグラムは2月、「クリエイターがフォロワーとの交流を深めるための新しい方法」として一斉配信チャンネル(Broadcast Channels)を発表、6月には一部のユーザーに対してこの機能の利用を開始した。それ以来、多くのインフルエンサーがさまざまな方法や頻度でこのツールを試している。
インスタグラムによると、一斉配信チャンネルはクリエイターにのみ正式に展開されているが、クリエイターアカウントを持つことで利用できるようになった企業もあるという。インスタグラムからはこの記事に対して、さらなるコメントをもらえなかった。
そうした企業に、創業者ミーガン・ストラチャン氏のアカウントを経由したジュエリーブランドのドーシー(Dorsey)がある。その一斉配信チャンネルには738人のフォロワーがいて(ストラチャン氏のフォロワーは3万人)、最近では8月21日の秋のコレクションのティーザーなど、いくつかのアップデートをシェアしている。だが、ストラチャン氏はそれ以降はチャンネルに投稿していない。一方、9月26日にKJH.ブランド(KJH.brand)をローンチしたメイクアップアーティストのケイティ・ジェーン・ヒューズ氏は、ザ・KJH.ブランドデイリーという一斉配信チャンネルを持っており、4400人のメンバーがいる。ヒューズ氏はそこに何度か投稿しており、最近では10月5日に笑える動画をシェアしている。またこのチャンネルを使って、ブランドローンチまでの数週間にわたり宣伝活動を行った。9月28日には、自分を信頼して初めての商品を試してくれたメンバーに向けて感謝の言葉を綴っている。
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一斉配信チャンネルを活用するアパレルブランド
だが、もっと大々的にこの機能を採用しているのが、フェイバリット・ドーター(Favorite Daughter)だ。インフルエンサー、ポッドキャスター、ライター、俳優、投資家でもあるサラとエリンのフォスター姉妹が共同で創業したアパレルブランドで、姉妹は2015年にVH1のモキュメンタリー『ベアリーフェイマス(Barely Famous)』を共同制作している。
同ブランドは9月13日に一斉配信チャンネルを開始した。そこでは9月から、サラとエリン・フォスター氏、そして二人の妹でブランドのスタイルディレクターであるジョーダン・フォスター氏、ソーシャルコンテンツマネージャーのローラ・ガルヴァン氏の4人が、今日のルックやブランドの新しいスタイル、ファッションのヒントについておしゃべりをしたり、特に姉妹が得意とする軽いノリの雑談を披露したりしている。
最初の紹介メッセージを投稿した後、同ブランドはチャンネル開始とともに次のような投票を行った。「ねえ、みんな聞いて! 私たちは今、24年春物の検討会議をしていて、このガーゼのセットにとても興奮しているところ! 何色にすべきか決めるのにみんなの助けが必要!」。一斉配信チャンネルは一方通行の会話であり、オーディエンスは絵文字を介してのみ反応できる。88人の参加者が絵文字のハートで「投票」を行った。
翌日、ブランドは新しい色のジーンズ、エリン(Erin)を発売したことをシェアして、「フィットに関する質問があればDMで教えて」と付け加えた。
コミュニティと気楽にコンテンツを共有
フォスター姉妹は、それぞれが手がける多くのプロジェクトに支えられ、3人ともたくさんのフォロワーを抱えている。サラのインスタグラムのフォロワーは71万6000人、エリンは61万4000人、ジョーダンは9万2000人である。そして多くの人が、フェイバリット・ドーターの一斉配信チャンネルを通じて姉妹に近づくことを選んでいる。チャンネルを運営する4人の女性たちは全員が、一斉配信チャンネルはブランドのコミュニティとコンテンツを共有するプレッシャーの少ない選択肢であることに気づいている。フェイバリット・ドーターのインスタグラムのフォロワーは12万5000人で、そのうち1500人が一斉配信チャンネルに参加している。同ブランドは、誰が参加したかというデータはまだ持っていない。
日によってチャンネルに積極的に関与する日もあれば、そうでない日もあり、エンゲージメントもさまざまだ。「平均的な」投稿には30の「いいね!」がつくこともある。一方、ジョーダン・フォスター氏がレースのブラがのぞくシルクの黒いブラウスを着ている写真には、炎の絵文字を含む90のリアクションがあった。サラ・フォスター氏の「あああああああ、自堕落に過ごす時もいい感じ!楽しいよね!」という返答には135件の反応があった。ナショナルドーターズデイ(National Daughter’s Day)に合わせたクーポンコードも好調で、106のリアクションを得ている。最後に、10月11日の朝に送られたエリン・フォスター氏のメモは435のリアクションを獲得した。その内容は「今、世界は怖い。ただ、みんなに愛を送りたい。あなたが大丈夫であることを願っている❤️」というものだ。
DMでのコミュニケーション手段に代わるもの
「20代から30代の女の子たちは、(エリンとサラを)アドバイスをくれるクールな姉妹のような存在として見ている。そしてジョーダンは、オーディエンスとこうした独特なスタイルの関係性を築いていて、人々はしょっちゅうジョーダンにスタイルに関する質問をしている。姉妹は全員がDMを受け取っている」と述べたのは、フェイバリット・ドーターの親会社であるセントリックブランズ(Centric Brands)のマーケティングおよびeコマースのシニアバイスプレジデント、ジェニファー・ホーキンス氏だ。同ブランドは現在6700人のフォロワーがいるTikTokでの存在感の拡大に取り組んでおり、TikTokショップをローンチしている。そして、バンブーザー(Bambuser)とライブショッピングを開始する準備をしているところだ。
「初日からフェイバリット・ドーターがこれほどうまくいっている理由の大部分は、顧客が私たちを知っていると感じてくれていることだ」とジョーダン・フォスター氏は語った。長い間、DMがブランドにとって重要なコミュニケーション手段だったが、3姉妹が受け取るメッセージすべてに答えることは不可能に近いという。「毎日一日中DMをしているわけにはいかない。あまりにたくさんの人がいる。だから一斉配信は、自分たちらしくありながら、人々を受け入れるのに完璧な方法だ。ブランドについてのミニ・リアリティショーのような感じ」と同氏は述べた。一斉配チャンネルをフォローすると、時には姉妹がお互いをからかうような場面もあり、内側を覗いているような気分になる。
「顧客との友情のような感じ。ブランドとつながっていると確実に思える方法だ」とジョーダン・フォスター氏は付け加えた。
目的は顧客との関係の強化
特に、このチャンネルの新しさや、グリッドへの投稿とは異なりまだ期待されていないという事実を考えると、ブランドや個人がこの機能をどのように利用するかに関しては、はるかに柔軟性がある。「それぞれにとってちょうどいいタイミングで、ただオーガニックに参加する。編集カレンダーは存在しない」とホーキンス氏は言う。「『ああ、今日コンツンツを作らなくては。私と一緒に準備しようの動画をやらなくちゃ』というプレッシャーを感じずに、コンスタントにコンテンツが作れる。(一斉配信では)完璧でなければならないとか、貴重なものでなければならないというプレッシャーは一切感じない」。
時には、コンテンツがオリジナルでないことさえある。「ほかのチャンネルに投稿されたものを投稿している。でもエンゲージメントはずっと高い」とホーキンス氏。ブランドのキャンペーン画像とくらべて、フォスター姉妹のコンテンツはつねに多くのエンゲージメントがあるという。
ホーキンス氏いわく、「オーディエンスは、それが本物でオーガニックだと感じることができる。それが真に最大の利点だと考えている」。とはいえ、いずれブランドはこのチャンネルをもっと体系的に活用するようになるだろうと同氏は述べた。
正確な相関データを定義するには時期尚早だが、ホーキンス氏とジョーダン・フォスター氏の両氏は、一斉配信チャンネルで特定のアイテムについて触れると、売り上げが上昇するのを目にしている点を指摘した。「ウィリアムセーター(William Sweater)を投稿したとき、売り上げが少し上がった」とジョーダン・フォスター氏は言う。これは彼女の専門である実用的なスタイリングのアドバイスも含まれていたからかもしれない。
それでもジョーダン・フォスター氏によれば、一斉配信チャンネルの目的は、販売や商品の推奨ではなく、ブランドの「顧客との関係」を強化することなのだ。
スペイト・トレンドウォッチ:エスプレッソ・アイは、食べ物に関連したメイクアップのトレンドは今も昔も変わらないことを証明している
秋のトレンドが登場しているが、TikTokで好評のひとつが、前月比51万7000%の人気急上昇を誇る「エスプレッソ・アイ」だ。この新しいトレンドは週平均2500ビューしかないものの、その成長ぶりから注目の的となっている。このトレンドは、ブラウンのシェードのスモーキーなアイメイクのことで、黒のウイングアイライナーを使うことが多い。秋といえば、暖かく心地よいアースカラーの代名詞でもあるので、特に画期的なトレンドではない。
NYXコスメティックス(NYX Cosmetics)は、このトレンドに関連するTikTokの投稿でもっとも多くのビュー数を獲得している。非常にシンプルな9秒間のクリップで、同ブランドはアイライナーを塗る様子をクロースアップで見せている。その投稿のコメントでは、動画に写っている女性が使用しているのは、同ブランドのスリムアイペンシル(Slim Eye Pencil)のダークブラウンと、ワンダーペンシルマイクロハイライター(Wonder Pencil Micro Highlighter)だという。
重要なのは、「エスプレッソメイク」や「ラテガールメイク」のようなトレンドは、決して新しいものではない点に留意することだ。むしろこれらが生き生きと表しているのは、TikTokにおいて次の大きなトレンドに向かってフォーカスし、何かを主張したいという執着心だ。こうした創造的な再発明は、古いトレンドに新しい息吹を吹き込み、美容の分野をつねに進化し続けるアイデアの遊び場にしている。
こうしたトレンドは「美容とは、クリエイティビティとイノベーションが織りなす、つねに進化しているタペストリーである、ということを思い出させてくれる。古いものが新しくなり、トレンドが進化し続けることで、美容がいつまでもエキサイティングで変化し続ける領域であることを保証している」と、スペイト(Spate)の共同創業者ヤーデン・ホロウィッツ氏は述べている。
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)