美容業界を注視している人にとっては、ブランドや小売業者が毎日のように閉鎖しているように感じられる。美容のような混雑した市場での運営はもともと難しいものだが、これに世界的なパンデミック、その後のインフレ、非常に高い金利、予期していなかった法的なトラブル、そして、消費者へのアプローチに影響を及ぼす急速に変化しているテクノロジーが加わると、閉鎖の原因が浮かび上がってくる。
今回の告白者は、この6年間、事業において上に挙げた障害の多くを経験しているが、それは事業閉鎖が人に及ぼす精神的負担の一部に過ぎないと言う。この女性創業者は金融分野での経歴があり、2017年に企業での経験を自分が心から愛する分野である美容に活かせる機会があると考えた。そこで、まず、実店舗ビジネスを開始し、その後パンデミック中にD2Cに移行した。
彼女が受けた資金総額は200万ドル(約3億円)未満で、そのうち友人や家族からのラウンドが2回、機関投資家のラウンドが1回あった。パンデミックのあいだ、この事業は45人の従業員を雇用し続けるためにさまざまな政府融資を受けたが、今夏までには持ちこたえることが不可能になった。
彼女のプライバシー保護のためにブランドについての詳細は含まれていないが、この創業者からは、希望やアイデンティティ、債務、いつ先に進むべきかについてが率直に語られた。
美容業界を注視している人にとっては、ブランドや小売業者が毎日のように閉鎖しているように感じられる。美容のような混雑した市場での運営はもともと難しいものだが、これに世界的なパンデミック、その後のインフレ、非常に高い金利、予期していなかった法的なトラブル、そして、消費者へのアプローチに影響を及ぼす急速に変化しているテクノロジーが加わると、閉鎖の原因が浮かび上がってくる。
今回の告白者は、この6年間、事業において上に挙げた障害の多くを経験しているが、それは事業閉鎖が人に及ぼす精神的負担の一部に過ぎないと言う。この女性創業者は金融分野での経歴があり、2017年に企業での経験を自分が心から愛する分野である美容に活かせる機会があると考えた。そこで、まず、実店舗ビジネスを開始し、その後パンデミック中にD2Cに移行した。
彼女が受けた資金総額は200万ドル(約3億円)未満で、そのうち友人や家族からのラウンドが2回、機関投資家のラウンドが1回あった。パンデミックのあいだ、この事業は45人の従業員を雇用し続けるためにさまざまな政府融資を受けたが、今夏までには持ちこたえることが不可能になった。
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彼女のプライバシー保護のためにブランドについての詳細は含まれていないが、この創業者からは、希望やアイデンティティ、債務、いつ先に進むべきかについてが率直に語られた。
ーーあなたのブランドを何年も見守ってきたが、外部から見ると、とてもユニークで成功しているように見えた。一体何があったのか?
「どの企業もそうだが、我々も浮き沈みを多く経験した。この夏、会社は成長していたがまだ利益を上げていなかったので、資金をもっと調達する必要があった。その時点では、長いあいだやってきたと感じていたので、何か新しいことをしたいと思っていたが、資金調達をまた行う気はまったくなかった。いまのような環境では、たとえやったとしても集まらなかったと思う」。
ーーブランドの収益が落ち込み始めた頃はどのようだったのか?現在に至るまでの最大の障害は何だったのか?
「おそらく最大のものは、顧客獲得コストだったろう。2022年の夏にCMOを雇用したが、彼が入社した時点では顧客獲得コストは70ドル(約1.1万円)前後で推移していた。優れた作業を多く行って、9月までに顧客獲得コストを45ドル(約7000円)までに削減できた。これで(再び)拡張を始めるための適切なユニットエコノミクスが得られたので、スケーリングを開始した。
維持できると想定していた将来の成長をサポートするために、当社は在庫をさらに購入した。新型コロナウイルスの追い風があった2020年と2021年はD2Cは順調だったが、Apple iOS14のアップデートのせいでアプリ間でユーザーを追跡できなくなり、広告の効率が大幅に低下した。当時は(Metaも)大きな混乱に見舞われて、広告料金が大幅に上がってさらに不安定になった。
顧客獲得コストはしばらく維持していたが、1月には55ドル(約8300)までになり、その後65ドル(約9800円)まで上がった。閉鎖時には80ドル(約1.2万円)になっていた」。
ーーそれは心痛だっただろう。
「何が起こったのかを理解して、顧客獲得コストを10月の水準に戻すために社内で多くのリソースを費やした。D2Cがもはや機能しなくなっていたので、実際にやるべきことだったのはチャネル戦略の完全な方向転換だったのだが。D2Cはもはや以前とは同じではない」。
ーーこの経験全体が多大な精神的負担をもたらしたことは、想像がつく。
「閉鎖までの数カ月が非常につらかった理由のひとつには、創業者として、そしてリーダーとして、二重の生活を送らなければならないということがあった。現金が枯渇するという現実に直面しており、会社を存続できなくなる可能性がある。また、私個人も事業を続けるために多額の自分の金を注ぎ込んでいた。すでに多々尽力していたので、『なんとか会社を機能させなければ!』と思っていた。
一方では『存続できるかもしれない。だとしたら、すべてがうまくいっていると皆に思ってもらわなければ』という二面性があった。
私が閉鎖を決断する前日まで、広告を購入したり新製品に投資していた。その決定を下すまでは、100パーセントかゼロか、どちらかだった。個人の心理的な観点からも、そのような状況を同時に経験しているのは非常につらいことだ」。
ーー閉鎖すべきだと気づいたのはいつだったのか?
「ハーバード・ビジネス・スクールのクリスティーナ・ウォレス教授の言葉だったと思うが、『スタートアップは、希望も資金もなくなったとき、廃業する時が来たことを知っている』という素晴らしい言葉を耳にした。
希望はあるが、リソースがなくなった場合は、次の資金を見つけるだろう。存続する方法を見つけるだろう。希望がなくてリソースがある場合は、ロボットモードになって経営を続けるだけだ。だが、希望もリソースもなくなったとき、それは創業者にとって非常に厳しい状況であり、おそらく廃業の時なのだ」。
ーーこのプロセスを通じて学んだことで、ほかの創業者にとって役立つと思われることは何かあるか?
「良くも悪くも、現在、製品を作るのはとても簡単だが、本当に異なるものを作るのは難しい。かつては、D2C(のビジネスモデル)によって、ブランドは顧客とつながりやすくなると考えられていた。しかし、ブランドを始めるのはとても簡単で、あまりに多くのブランドがあるので、顧客とつながるのはいまでは実際にはかなり難しい。(美容業界は)非常に混雑しているため、顧客がブランドと真のつながりを見つけるのは難しい」。
ーー美容業界で驚いたことで、まだ心に残っていることはあるか?
「環境への影響を考えると悲しくなる。私はイノベーションと製品とブランドが大好きだ。すべてが大好きだ。何かをローンチするのが容易になっていて、人が想像力を発揮できることがとても気に入っている。だが、同時に『世界にはまた新しいセラムが本当に必要なのだろうか?』とも感じる」。
ーーこうした会話で取り上げられない話題のひとつには、負債構造がある。個人的に借金を負わずにここまで来ることができたのか?
「残念なことだが、事業からの借金を個人的に少し抱えることになった。この数カ月が非常につらかった理由のひとつには、事業を続けるために私が個人的なリスクを負っていた点があった。閉鎖を決断するまでの日々は、資金確保の新たなチャンスを与えてくれたが、それはまたリソースを消費している日々でもあり、もし乗り越えられなかったら私自身の経済的債務が増えることを意味していた。
最初は、借金があるということを受け入れ難かった。しかし、私は自分が感じていたストレスと恥辱心を和らげるために、役立つリフレーミングをたくさん行って、マインドフルネスと瞑想を実践した。具体的には、借金を、大学やビジネススクールの授業料と同じように、起業家として得た教育と経験の対価として捉え直した。また、一緒に仕事できた人たち、喜びを届けることができた顧客、世界に広めるのに貢献できた製品への感謝の気持ちにもフォーカスした。…そのほうが、借金や『失敗』にフォーカスするよりもはるかに有益で生産的だった」。
ーーブランドを解体するのか、それとも売却を試みているのか?
「ブランドを売りに出している。我々はブランド名が品質とデザインを意味するように長年尽力してきており、まだブランド資産は多くあると思う。たとえば、このブランドのおかげで、有料マーケティングを一切使わず、新製品1点でeコマースサイトを立ち上げて初日に5桁の売上を達成することができた。潜在的な買収者と予備的な会話を行っており、新しい所有者のもとでブランドが存続するのを見られたら嬉しい」。
ーー過去に戻って何かを変えられるとしたら、何をする?
「自分の直感をもっと信じると思う。以前に何かをやったことがあり、何らかの経験があるアドバイザーがいたとしても、彼らの経験が自分の経験と完全に一致するわけではない」。
編集者注:告白シリーズでは、ファッション・美容業界の関係者に匿名で彼らの視点を共有してもらい、読者に真の洞察を提供することを目指している。告白の記事の著者は、話し手の身元を認識しており、その人の肩書きと立場を確認している。
[原文:Confessions of a founder closing her beauty brand: ‘DTC isn’t working right now’]
LEXY LEBSACK(翻訳:ぬえよしこ、編集:)