数カ月ごとに新しい男性用化粧品ブランドがローンチしているが、そのたびに男性用メイクは成功するのかということが話題になる。
メイク経験あり男性を対象にしたアポストル
男性メイクの普及を目指す最新のブランドは、アポストル(Apostle)だ。7月12日に12色展開のティンティドモイスチャライザー1製品(26ドル、約3600円)でローンチした。Glossyの以前の記事によると、世界の男性グルーミング市場は2021年に約550億ドル(約7.6兆円)と評価されており、2030年までに1100億ドル(約15.3兆円)に達すると予想されている。アポストルのチームは男性が美容・身だしなみ製品に毎月平均29ドル(約4000円)を費やしているという自社調査を引用して、米国の男性用グルーミング市場は220億ドル(約3.1兆円)の価値があると推定している。しかし、メイクアップはまだ米国男性のあいだで主流にはなっていない。
欧米の男性用化粧品ブランドが顧客獲得に苦労している理由を、化粧品業界は突き止めることができずにいる。アポストルの共同創業者兼CEOのトニー・レシー=シーワート氏によると、同社の当初のコンセプトは男性にメイクアップを紹介することだったという。それは洗顔料、モイスチャライザー、リップクリーム、ティンティドコンシーラーの4ステップのルーティンだった。しかし、アポストルは500人の男性を対象にした調査で、男性の3分の1が化粧品の使用に反対ではないことを知った。その結果、レシー=シーワート氏と共同創業者兼アーティスティックディレクターのジェイミー・メルボルン氏は、メイク初心者の一般男性を対象とする従来の戦略ではなく、注力ターゲットを変えたと語る。そのターゲットとは?
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
数カ月ごとに新しい男性用化粧品ブランドがローンチしているが、そのたびに男性用メイクは成功するのかということが話題になる。
メイク経験あり男性を対象にしたアポストル
男性メイクの普及を目指す最新のブランドは、アポストル(Apostle)だ。7月12日に12色展開のティンティドモイスチャライザー1製品(26ドル、約3600円)でローンチした。Glossyの以前の記事によると、世界の男性グルーミング市場は2021年に約550億ドル(約7.6兆円)と評価されており、2030年までに1100億ドル(約15.3兆円)に達すると予想されている。アポストルのチームは男性が美容・身だしなみ製品に毎月平均29ドル(約4000円)を費やしているという自社調査を引用して、米国の男性用グルーミング市場は220億ドル(約3.1兆円)の価値があると推定している。しかし、メイクアップはまだ米国男性のあいだで主流にはなっていない。
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欧米の男性用化粧品ブランドが顧客獲得に苦労している理由を、化粧品業界は突き止めることができずにいる。アポストルの共同創業者兼CEOのトニー・レシー=シーワート氏によると、同社の当初のコンセプトは男性にメイクアップを紹介することだったという。それは洗顔料、モイスチャライザー、リップクリーム、ティンティドコンシーラーの4ステップのルーティンだった。しかし、アポストルは500人の男性を対象にした調査で、男性の3分の1が化粧品の使用に反対ではないことを知った。その結果、レシー=シーワート氏と共同創業者兼アーティスティックディレクターのジェイミー・メルボルン氏は、メイク初心者の一般男性を対象にする従来の戦略ではなく、アイデアを調整してすでにメイクに精通した男性に注力することにした。
「なぜ男性にはインクルーシブで入手しやすく共感できるプレステージ製品がないのか? 広告キャンペーンに男性を登場させて、自社ブランドをユニセックスと呼ぶのでは不十分だ」とレシー=シーワート氏は語る。
アポストルのブランディングはアウトドア的で素朴な雰囲気であり、インスタグラムにはビーチや海岸、山の写真がたくさん掲載されている。パッケージはネイビーブルーの小石の形で、シャネル(Chanel)のハンドクリームを彷彿とさせる。「アポストル」とは、ギリシャ語でメッセンジャーを意味する「アポストロス(Apostolos)」に由来した名前で、ブランドの哲学は美しい肌は世界に対して力強いメッセージを発信するというものだ。
アジアからの注目
アポストルは当初、外部からの資金調達に100万ドル(約1.4億円)を求めたが、その額は達成できなかった。現在の製造パートナーであるコスマックスUSA(Cosmax USA)をリード投資家として、友人や家族のラウンドを通じて最終的に50万ドル(約6900万円)を調達した。コスマックスは韓国の企業であり、アポストルに対するもっとも熱心な意見はアジアの投資家からだとレシー=シーワート氏は語っている。
米国と比較して、アジア、特に中国や韓国などの国々では男性用メイクアップブランドはもっと受け入れられている。シャネルは2018年に韓国でメンズメイクアップラインを立ち上げており、トムフォードビューティ(Tom Ford Beauty)、ディオールビューティー(Dior Beauty)、ボビイ ブラウン(Bobbi Brown)はいずれもブランドアンバサダーとしてアジア人男性セレブと契約している。また、ハイパーマスキュリンなアイルランドのブランド、ウォーペイント(War Paint)は2018年にローンチしたが、2023年の時点で世界200カ国以上に25万点以上のメイクアップを販売したと主張している。
「米国の男性たちが憧れるアメリカのセレブリティは皆、カメラの前では(メイクアップ)製品を使っている」とメルボルン氏。
メイクに対する米国人男性のタブーに対処
レシー=シーワート氏は、男性のメイクをタブー視する文化的認識を変えるために、ミスターポーター(Mr Porter)を模範にしていると述べ、ミスターポーターのエディトリアルコンテンツと教育第一のアプローチを挙げている。創設から12年のミスターポーターはネッタポルテ(Net-a-Porter)のメンズ部門であり、質の高い洗練された編集記事を毎日発行し、ザ・ジャーナル(The Journal)という週刊ウェブマガジンも発行している。また、ミスターポーター誌を年に6回発行している。これにインスピレーションを受けたアポストルはソーシャルメディアファーストのアプローチを採用して、男性オーディエンスに同ブランドや製品、視点について教育している。
アポストルはファッションエディターのフィリップ・ピカルディ氏と協力し、写真撮影のためにそれぞれ1万〜20万人のフォロワーを持つインフルエンサーとトレンドを作り出す人12人を特定した。この12人の男性らは、撮影モデルのほかに、アポストルの支持者としても活動しており、ユーザー生成コンテンツを作成して報酬を受け取っている。また、アポストルはセレブのアポストルのファンにリーチする裏口的な方法として、男性セレブのメイク担当者らに製品を無料で提供する取り組みも行っている。K-Popスターのような男性セレブを化粧品の宣伝に用いることは主要な戦略であり、アジアの国々で購入されやすくなる機会を広げている。
しかし、特にすべての購買と購買影響力の80%を女性が占めているため、女性へのアピールも必然的にビジネスモデルの一部となっている。2022年、創業7年のスキンケアブランド、ジオロジー(Geologie)は購入者のかなりの割合が女性であることを知り、男性用グルーミングブランドからユニセックス製品に注力する方向に転換した。また、クラランス(Clarins)が2021年に英国の男性1000人を対象に調査を行ったところ、半数が気づかれることなくパートナーの女性たちのスキンケア製品を「盗んだ」ことがあると回答した。
レシー=シーベルト氏は次のように述べている。「彼女や妻などの女性を活用して、コンシーラーやティンティドモイスチャライザーを手にしたことがない男性に売り込む方法について社内で話し合っている。女性にも気に入ってもらえる商品を開発したいと考えていた。妻やガールフレンドが夫やボーイフレンドのトイレタリーバッグから借りたいと思うような製品が作れるとわかっていた」。
[原文:Apostle aims to finally make men’s makeup a thing]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)