4月22日は地球や環境のことを考える日、「アースデイ(Earth Day)」だが、今年の5月はアースマンス(Earth Month)となりそうだ。現在、オフィスへの出勤再開を計画する企業の間で、エコフレンドリーな取り組みが急ピッチで進んでいる。
現在、アメリカではオフィスへの出勤再開を計画する企業のあいだで、エコフレンドリーな取り組みが急ピッチで進んでいる。
無論、「地球環境に優しく」というコミットメントは目新しいものではない。ただし今、こうした取り組みがビジネスにもたらすメリットの大きさに熱い視線が注がれている。廃棄物の減量や企業イメージの向上は言うまでもないが、収益増加にもつながるからだ。
コロナ下で加速するサステナビリティ
パンデミックのさなか、電力や紙の消費量は大幅に削減された。さらにはオフィスの使用自体が減ったことにより、サステナビリティが一躍、注目のテーマとなった。
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グローバルエージェンシーの持株会社IPGは、5月を、環境保護の取り組みを強化する「アースマンス」とした。サステナビリティチームを立ち上げ、5月の3週間で二酸化炭素5万キロと水100万リットルの消費削減目標を掲げた。さらに社員に対してSNSでサステナビリティ関連の取り組みを共有するよう奨励し、二酸化炭素の排出量を1キロ抑えた先着100名に、保温性の高いタンブラーをプレゼントする社内キャンペーンも展開した。
「世界の環境が大きな被害を受けている。注目されず、人知れず苦しんでいる地域が沢山ある。コロナ禍に直面している今、世界中の人々の健康を支えるクリーンな空気と安全な水の重要性はかつてないほど高まっている。環境・社会・ガバナンスの課題に対する当社の取り組みは真剣そのもの。ゴミを減らすことをはじめ、私たち一人ひとりが行動を変えることにより、最終的には気候変動の問題解決に寄与できると信じている」と、IPGは表明している。
エージェンシーのR/GAで事業運営担当VPを務めるジェス・アスター氏によると、「IPGはパンデミック前から経営スローガンのひとつにサステナビリティを挙げ、オフィススペースの断続的な縮小を敢行。2020年もグローバルオフィスを縮小し、将来を見据えた適切なオフィス計画を実践している」という。「毎日通勤する社員が少ないなか、社員同士の連携や共同作業のためのスペースを優先し、デスク予約のシステムも導入されている」。
R/GAは、オフィスのスペースやリソース使用について先進的かつ根本的な見直しを進めている企業として、ニューヨーカー(The New Yorker)の最新記事でも紹介されている。
業務のシンプルな変更で廃棄物削減
一方、オフィススペースソリューション大手のインダストリアス(Industrious)は、米国の100以上の拠点(敷地面積にして27万平方メートル以上)で紙とプラスチックの廃棄を25%削減するという目標を発表した。
最高商務責任者(CCO)のアンナ・レバイン氏は、「業務におけるシンプルな変更で廃棄物を削減することを追求し、メンバー企業や自社チームからのフィードバックをもとに、サステナビリティプログラムを作成した」と話す。同社の社員は1日あたり6から9時間をオフィスで過ごし、そのあいだに使われる紙やプラスチックのコップは平均で5個となっているという。
レバノイン氏は、「サステナビリティによる経営上のメリットは以前から指摘されていた。たとえば再利用可能な商品やバルク商品を購入することで、長期的な運用コストを削減できる。社員の側も、こういった改善に貢献していきたいと本気で望んでいる」と語る。さらに次のように話す。「そして、一人ひとりの小さな取り組みも、集団として積み重なれば大きな変化につながると考えている。この夏には世界中で、社員のオフィス出勤が進むと想定している。そこでも『大きな変化のための小さな努力』を続けられると考えている。これはグループで働くからこその強みであり、そのことを忘れないで欲しい」。
「空間/場所」の変化
リモートワークやハイブリッド型の就業が増えたことで、サステナビリティにも明確な影響が出ている。プロフェッショナルサービス企業のGHDが最近発表した調査によると、米国の消費者の78%が、仕事や私生活における生活習慣が長期的に変化していくと考えているという。
また、37%が「オフィスで仕事が可能になったあとでも、パンデミック以前よりもリモートワークを増やして欲しい」と回答した。さらに30%が「就職先を選ぶにあたって、企業の環境への姿勢を重視する」としている。
GHDでサステナビリティ・レジリアンス・環境ソーシャルガバナンス諮問責任者を務めるグレッグ・カーリ氏は、「職場環境の変化は、交通機関やデジタルインフラから、都市やオフィスの空間をどう構成していくかまで、私たちの社会への捉え方をも変化させていく」と述べる。
リソース削減によるコスト削減
クライアント企業のサステナビリティ支援を行っているレゾナンス・グローバル(Resonance Global)の共同創業者兼最高イノベーション責任者、スティーブ・シュミダ氏は、環境に配慮したオフィス出勤についてアドバイスを提供している。シュミダ氏は出張の削減やオフィススペースの縮小を提唱しており、自身もこれらを率先して行っている。
「パンデミックが長引くなか、レゾナンスはオフィスを縮小した。たとえオフィス出勤が進んでも、リモートワークは広く普及しており、このトレンドは今後も続いていく」と、シュミダ氏は話す。「オフィススペースを減らせば、コストと二酸化炭素排出量が減る。リソースの消費を抑えられ、経営面でのメリットは大きい」。
TONY CASE(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)