新モバイル動画サービス「Quibi」は、果たして成功するか? : 鳴り物入りのデビューと期待はずれの新機能

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ジェフリー・カッツェンバーグ氏が手がけるモバイル動画サービスのQuibi(クイビー)が4月6日、2年あまりの準備期間を経てついにスタートした。だが、当初公開された番組を見る限り、「携帯電話向けに制作された映画クオリティの番組」を提供するという触れ込みとは裏腹に、このサービスがモバイルの小さな画面のみをターゲットにした理由はよくわからない。

当初の番組ラインナップに含まれている番組は、そのほとんどがいわゆる短尺のプレミアム動画だろう。番組の出演者は、クリッシー・テイゲン、ソフィー・ターナー、チャンス・ザ・ラッパーといったメインストリームのセレブリティが占めている。また、明るい照明と複数のカメラを使って撮影されているため、クオリティはウェブ動画よりも従来のテレビ番組や映画に近い。番組の尺は短く、各エピソードの長さは10分未満だ。さらに、携帯電話を横向きにしても縦向きにしても、全画面モードで視聴できる。ただし、Quibiがサービス開始に合わせて配信した50本の番組のいくつかを見てみた限りでは、番組をテレビで視聴できないようにした理由は判然としなかった。

米DIGIDAYが以前報じたように、QuibiはもともとコネクテッドTVアプリでの配信を計画していたが、2019年になってモバイル専用サービスへと戦略を転換した。この戦略転換に合わせるように、Quibiは「ターンスタイル(Turnstyle)」という技術を開発し、縦向きでも横向きでも番組を視聴できるようにした。Quibiがテレビにコンテンツを配信しない主な理由は、どうやらこの機能の存在にありそうだ。

「これはテレビ向けに作られたものではない」と、カッツェンバーグ氏はデッドライン(Deadline)が3月27日に公開したインタビュー記事のなかで述べている。「これは携帯電話向けに特化したものだ。当社がこのために開発し、特許を取得した技術によって、携帯電話で高画質の視聴ができるようにしている。これは特別なものなのだ。テレビを縦向きに置くことはできない」。

縦向きにする必然性とは?

たしかに、テレビを縦向きに置くことはできないかもしれない。だが、Quibiの番組を存分に楽しむために画面を縦向きにしなければならない理由はなんだろうか。

サービス開始に合わせて配信された番組を見る限り、ターンスタイル機能が視聴体験にそれほど大きな影響を与えているようには思えない。ゆくゆくは、指示に従って携帯電話の向きを変えれば、特定のシーンで画面からはみ出ていた映像が見られるようになったり、一度見たシーンを反対側の視点から見なおしたりできる特典が提供されたりするのかもしれない。だが現時点では、ユーザーが携帯電話を好きな向きで持ちながら番組を見られる手段を提供する以上のものではなさそうだ。

現在配信されている番組は、横向きで見れば画面全体が表示され、縦向きで見ればズームインされるようだ。したがって、これらの番組は基本的に横向きの視聴を想定して作られたと思われる。縦向きに表示すると、たいていのシーンが、縦長にトリミングされた高解像度映像のような感じに見える。まるで、Snapchatの「ディスカバー(Discover)」チャンネルに当初から参画したテレビネットワークの動画のようにだ。そのため、現状のターンスタイル機能は、YouTubeが2017年に発表した、画面の向きに合わせて動画サイズが自動的に変わる動画プレイヤーと大差ない。

公平を期すためにいえば、Quibiは2020年に175本を超えるオリジナル番組を配信する予定で、そのなかにはターンスタイル機能をもっと活かしたものもあるだろう。また、90日間の無料トライアルが実施されているため、これぞ携帯電話向けに作られたといえるような映画クオリティの番組が配信されるまで、人々はQuibiのアプリを試し続けるかもしれない。しかも、ターンスタイルの機能が最低限しか活用されていないような現状が、このアプリのデビューに大きく影響することはなかったようだ。

差別化は機能するのか?

モバイルアプリストアの分析を手がけるセンサータワー(Sensor Tower)によれば、Quibiのアプリは米国東部時間4月6日、iPhoneアプリのダウンロード数ランキングで4位にランクインしたという。同じくアプリ分析を手がけるアップアニー(App Annie)も、東部時間4月6日午後2時の時点で、米国で4番目にダウンロード数が多い無料iPhoneアプリになったと報告している。

Quibiのアプリは、外出中にストリーミング動画を楽しむためのサービスとして設計されたが、多くの人が自宅に隔離されているいま、この位置付けは意味を失っている。当面のあいだ、QuibiはインスタグラムやTikTok、Snapchatのようなモバイル専用のエンターテインメントアプリと競争するだけでなく、NetflixやDisney+(ディニープラス)、それにYouTubeと競合することになるだろう。

当初の番組ラインナップを見る限り、Quibiはこれまでなかったような視聴体験を提供して最初からニッチを目指すのではなく、ニッチとメジャーの中間を行く戦略を採っているようだ。したがって、クオリティの面では現在人々が楽しんでいる他社の動画の多くと勝負できる可能性がある。ただし、Quibiの動画は携帯電話でしか視聴できない。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)