現在の情勢下で需要の落ち込む服もある一方、自宅にいる人が増えたことでスウェットやレギンス、部屋着などの需要は拡大している。この新しい需要に対応しキャッシュフローを維持するため、ブランド各社のあいだで生産方法の調整が行われている。
現在の情勢下で需要の落ち込む服もある一方、自宅にいる人が増えたことでスウェットやレギンス、部屋着などの需要は拡大している。この新しい需要に対応しキャッシュフローを維持するため、ブランド各社のあいだで生産方法の調整が行われている。
レジャーウェアブランドのライブリー(Lively)は、通常この時期は水着に力を入れている。例年3月と4月は同社のECサイトや卸売パートナーのノードストローム(Nordstrom)で、水着がもっとも好調な売れ行きを示すためだ。だが、創業者のマイケル・コーデイロ・グラント氏によれば、現在もっとも売れているのは部屋着だという。3月1日からの売り上げは200%増にもなっている。
「いまや部屋着がもっとも重要なカテゴリーとなった」と、同氏は語る。「これに対応するため即座に行動を開始した。在宅勤務や自宅にいる人に向けてサプライチェーンやコンテンツ、マーケティングを調整している」。
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コーデイロ・グラント氏が最初に行ったのが、サプライチェーンへの対応だった。工場から米国の流通センターになるべく多くの部屋着を送るよう手配したのだ。ライブリーは製造パートナーに着心地の良いブラレットの注文を増やしたほか、部屋着やそれ以外の着心地の良さを重視した「1日中着ていられる生地」のモーダルレーヨンで作られた服の生産も増やしている。着心地の良い服や部屋着はすべてウェブサイトのトップに移され、購入者にはシュシュが無料特典としてついてくる。さらに同社はインスタグラムページでも大規模に宣伝している。
「スウェットと部屋着が好調だ」
ボストンを拠点とするスポーツウェアのD2Cブランド、トラックスミス(Tracksmith)でCEOを務めるマット・テイラー氏はランニングウェアと部屋着の売れ行きが好調だと語る。同社が販売する部屋着の「トラックハウス」は2月から3月にかけて92%、長袖スウェットの「ハリアー」は122%の売れ行き増となっているという。
「生産増加はまだ行っていないが、スウェットと部屋着の売れ行きが伸びているのは間違いない」と、テイラー氏は語る。「スポーツウェアや当社ブランドは特に現在の需要にマッチしている。製造に遅れが生じたが、さほどの影響はなく売れ行きは実に好調だ。創業者仲間のなかにはレイオフをせざるを得ないなど、かなりひどい状況の企業もある。いまのところそういったことは当社にはない」。
テイラー氏によれば、トラックスミスは現在「トラックハウス」や部屋着をカスタマーへのメールで宣伝しており、需要が伸びるようであれば、さらにこれら製品を重視することも視野に入れているという。
着心地の良い服へシフトする企業も
レギンスやスウェットパンツといった製品と縁遠いブランドですら、着心地の良い服へと生産をシフトしているところがある。カスタムスーツブランドのアルトン・レーン(Alton Lane)は通常はフォーマルな服を展開しているが、デニムなどほかのカテゴリーを重視するようになっている。
創業者のコリン・ハンター氏は感染拡大前からスーツ以外のカテゴリーへのシフトを計画していたが、そこへの投資をさらに増やしているという。アルトン・レーンは3月第2週から同月末にかけてチノクロスへの投資を4倍にしたほか、スニーカーやモカシンなど、履き心地のよさを重視した新しいタイプの靴を発売している。
「現在、製品開発へのリソースを倍増させている」と、ハンター氏は語る。「対象はカスタマイズできるポロシャツやゴルフウェア、デニムなどだ。稼働しているが製品需要が低下している工場が世界各地にある。そのおかげで通常の倍近い速度で当社の製品開発に協力してくれているのはありがたい。当社は在宅勤務を行う方のための製品を提供できる状態にある。特にターゲットとしているのが、着心地の良い服を求めつつも動画会議のためにブレザーやポロシャツを着る必要のある人たちだ」。
「プラス面とマイナス面が混在」
こういったブランドの好調が今後も続くかは不透明だ。
「長期的にどうなるかを判断するのはまだ早い」と、テイラー氏は語る。「ちょっとしたトレンドは今後も続くだろう。たとえば、在宅勤務はより受け入れられるようになるだろうし、その場合、部屋着の需要は増えるはずだ。だが、スポーツクラブはどうだろうか? 30人が汗をかくところに行きたいと思う人がどれくらいいるかはわからない。スポーツウェアを取り巻く状況はプラス面とマイナス面が混在している」。
DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)