インナーやランジェリーの分野は、この10年間で大きく変化した。Z世代の消費者が求めているのはボディ・ポジティブやインクルーシブなメッセージだ。最近、再投資した著名ブランドとは? この市場で大きく成長しているD2Cブランドの勢いはどうなっているのか?
インナーやランジェリーの分野は、この10年間で大きく変化した。Z世代の消費者が求めているのはボディ・ポジティブやインクルーシブなメッセージであり、かつてのビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)全盛期にみられたような「セクシーさを売りにする」理念は人気が衰えている。
現在、流動的なカテゴリーである下着業界に新規および既存の企業が再投資を行っており、このセクターは2500億ドル(約27.7兆円)規模のグローバルビジネスへと急成長を遂げている。そうした再投資を最近行ったブランドにアディダス(Adidas)がある。同社は6月18日の金曜日に、イスラエルのテキスタイルメーカー、デルタ・ガリル(Delta Galil)とグローバルパートナーシップを結び、メンズおよびウィメンズのアンダーウェアを世界的に販売開始すると発表した。
デルタ・ガリルは、JCペニー(JCPenney)、ターゲット(Target)、ウォルマート(Wal-Mart)などの小売業者や、カルバン・クライン(Calvin Klein)、ヒューゴ・ボス(Hugo Boss)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)といったブランドと提携している。
これまでアディダスは米国内のみでメンズのアンダーウェアを販売しており、ウィメンズのアンダーウェアに関しては、ウォルフォード(Wolford)とのフェブラリーコレクション(February Collection)のような、わずかなコラボレーション以外は販売を行っていなかった。デルタ・ガリルは、アディダスがすでに別の某メーカーと提携している米国でのメンズ・アンダーウェアをのぞいた世界中のアディダスのアンダーウェアの製造・販売を行う予定だ。
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下着に求められているものは着心地のよさ
デルタ・ガリルのブランド部門プレジデントであるヴィクトリア・ヴァンダグリフ(Victoria Vandagriff)氏いわく、アディダスの特徴であるスポーティな美学をいくらか取り入れつつも、わかりやすいアンダーウェア製品になるとのこと。製品ラインにはブラジャーやボトムスが含まれるが、アディダスが「トレーニングアンダーウェア」というカテゴリーで自社製造しているアスレチックウェアやスポーツブラは含まれない。この製品ラインがエアリー(Aerie)、ビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、ライブリー(Lively)といった他のアンダーウェア老舗企業と直接競合することを意味している。
コレクションはアディダスのふたつのレーベルで展開する。ひとつはアスレチックなシルエットとパフォーマンス性の高い素材を使用した「バッジ・オブ・スポート(The Badge of Sport)」ライン、もうひとつはストリートウェアやファッション性をより重視した「アディダス・オリジナルズ(Adidas Originals)」だ。どちらもアディダスのDTCチャネルと百貨店での販売を予定している。「バッジ・オブ・スポート」はチャンプス(Champs)やディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)といったスポーツ用品店でも販売され、「オリジナルズ」のほうは「選ばれたファッション小売店」に並ぶ予定だが、具体的な店舗名は明らかにされていない。この件について、アディダスからのコメントは得られなかった。
ヴァンダグリフ氏は、今日の消費者が下着に求めることの第1位は着心地のよさであると述べ、ブラレットやノンワイヤーブラ、シームレスの下着(筒状になった生地を裁断するため、縫い目やステッチがない)の売上がすべて過去6カ月間で増加していると指摘した。ファッション情報のビッグデータ分析を専門に行うエディテッド(Edited)のデータによれば、トライアングルブラレットの売上は、12月から2月にかけて120%近く伸びている。また、スポーツブラやストレッチ素材の下着の売上は、同時期に382%の伸びを示した。
D2Cブランドも好調のランジェリー市場
ビクトリアズ・シークレットがここ数年でマーケットシェアを失ったことで、ほかのブランドがランジェリー市場に参入する道が開けたとヴァンダグリフ氏は言う。とりわけもっとも注目すべきはエアリーで、5月には第1四半期の売上高が89%増の約3億ドル(約300億円)近くに到達したと発表している。
D2Cのアンダーウェアブランドも大きく成長している。そのひとつであるパレード(Parade)は、初年度に1,000万ドル(約11.1億円)の収益を達成した。インナーメーカーのジェルマート(Gelmart)は、将来的にさらに多くのD2Cランジェリーブランドを育成してローンチすることを目的としたインキュベータープログラムを2月にスタートさせた。ちなみにジェルマートが最初にインキュベーションを行ったブランドであるライブリー(Lively)は、2019年に8,500万ドル(約94億円)で売却されている。また、リアーナのランジェリーブランドであるサヴェージ X フェンティ(Savage x Fenty)は、2021年2月の時点で10億ドル以上の価値があると言われている。
原題 [ Why underwear is becoming fashion’s most exciting category]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida)