スニーカーブランドであるP448がニューヨーク市に開設した新しいフラグシップ店舗は、ソーシャルメディアのホットスポットになることをめざしている。同ブランドは、「顧客の作成したコンテンツを主役に」を戦略とし、店内ランウェイからバーにいたるまでのいくつかの工夫を行い、顧客に店舗について投稿するよう働きかけている。
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スニーカーブランドのP448がニューヨーク市に開設した新しいフラッグシップ店舗は、ソーシャルメディアのホットスポットになることを目指している。
創設から7年のブランドであるP448は、この新しい店舗を2月第4週にオープン。この店舗は取り引きよりも、どちらかというと実験的なものを目指していると、CEOを務めるウェイン・クルキン氏は米モダンリテールに語った。顧客がこの空間に常時出入りし、うまくいけばこれらの顧客が自分のソーシャルフィードにコンテンツを投稿するという構想だと、同氏は説明している。
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この店舗では、店内ランウェイからバーにいたるまでのいくつかのソーシャル活動を行い、若い顧客に店舗について投稿するよう働きかけている。多くのブランドはこのような活動をインフルエンサーに任せているが、「当社は誰でもこの店舗に来て、心を動かされることによって自分の体験を自らソーシャルメディアにアップロードすることを期待している」とクルキン氏は述べている。
P448の国際的な販路拡大
P448は2014年にイタリアのボローニャで創設され、同社のシューズは今でもこの地で製造されている。同ブランドは過去数年間にわたり、テイラー・スウィフト、ブラッドリー・クーパー、ソフィー・ターナーなどのセレブリティに愛用されていることで知られるようになった。現CEOのクルキン氏は同ブランドの初期からのファンで、共同創設者のマルコ・サモア氏およびアンドレア・カルティ氏と出会い、2018年に国際配送契約を締結。2020年には、クルキン氏のフットウェア企業であるストリートトレンド(StreetTrend)は、P448ブランドを全世界に広げるという計画のもと、同ブランドを買い取って自社のポートフォリオに追加した。
国際的な拡大戦略の一部は、2020年からはじまった小売業者や、卸売販売のマーケットプレイスとの提携だったと、クルキン氏は語る。それ以前のP448ブランドは主に専門の小売業者や、欧州とアジアにある独自の店舗で販売されていた。昨年秋に同社はノードストローム(Nordstrom)とのあいだに、北米全体で同社のスニーカーを販売する契約を締結し、現在は全世界の3000カ所で販売されている。同社のビジネスの半分は北米のもので、P448は2021年に前年比で3桁の成長を達成した。また、同ブランドの卸売ビジネスも同じ期間に前年比で49%も増加した。
国際的な卸売パートナーに加えて、同ブランドはD2Cのプレゼンスにおいても成長することを望んでいた。P448は昨年、米国向けウェブサイトを立ち上げ、昨年8月にはマンハッタンのミッドタウンにポップアップショップを開設。「新しい市場において全面的にデジタルで展開することにも魅力はあるが、当社は自社の新しいD2Cチャネルと並行して大きな注目を集めたいと考えた」とクルキン氏は述べている。この期間限定店舗は非常に好評だったため、同ブランドは1ブロック離れたロックフェラーセンターの近くに、公式のフラッグシップ店舗を開設することを決定した。
顧客がブランドのモデルに
コンテンツの作成は、同ブランドの店舗戦略の柱となるものだ。クルキン氏は、マンハッタンの店舗のデザインは、街路のほかの店舗と一線を画すための、文字どおり広告板として機能し、同時にライブのソーシャルコンテンツを常時投影することを意図したものだと語る。同社が新しいマンハッタンのミッドタウンの拠点を選んだとき、リースの一部として店舗を見下ろすデジタル広告板にもアクセスできるようになったと、クルキン氏は説明する。「このため、当社はゲストのコンテンツ作成を紹介するためにこの広告板を活用し、可能ならバイラル化を引き起こすことを期待した」。
さらに同社は、店舗内にシューズ用のランウェイを作り上げた。顧客はここで、自分たちが購入するかもしれない商品を履いてモデルとなり、TikTok投稿の撮影ができる。P448のスタッフは顧客の投稿を精選し、気に入った投稿は店外にある五番街を向いた広告板に投影するとともに、同ブランドのソーシャルチャネルでも紹介する。
「当社は、コンテンツとコマースの混在を開始したとき、人々が長く滞在することに気づいた」とクルキン氏は語る。たとえばポップアップには、顧客が使えるようにアーケードやピンボールマシンを設置した。また、店舗への訪問者数が長期的に順調に増加するかの予測は困難だったが、「顧客の作成したコンテンツを主役にする」ことが戦略だったと同氏は述べている。
新店舗には独自の要素を
この店舗は、P448のカラフルな靴底を強調するために透明な棚も取り入れるほか、200種類もの靴ひもを取りそろえたカスタムのシューレースバーも設置されている。さらに、同ブランドはマコーネルズウイスキー(McConnell’s Whiskey)とのパートナーシップによりスピークイージーバーもホストする予定で、これは今後数カ月のあいだに顧客に対してオープンすることになっている。クルキン氏は「当社は、人々を引き入れるためにスピリッツの各種ブランドとシェフによる利き酒や試食を計画している」と述べている。今年中に、一連のハッピーアワーや、ゲストDJによる音楽セットも開催される予定だ。
同店舗のオープニングは、同ブランドの一連の新店舗で最新のものだ。これらの新店舗はすべて、顧客の参加を促進することを目指して独自の要素を取り入れている。P448は12月に、ショーフィールズ(Showfields)のマイアミの店舗でポップアップをテストしたあとで、マイアミのサウスビーチにも店舗を開設した。この新しいP448の店舗にはゴーンスタジオ(Gone Studio)、スプレーイングブリックス(Spraying Bricks)、および壁画家のタチアナ・スアレス氏などの現地のアーティストによるグラフィティや壁画が描かれている。店舗への訪問者は、ペイントマーカーでウォールオブフェイム(Wall of Fame)の壁に絵を描くことができる。今後のイベントとして、フェイクタトゥーのセッションや、ストリートアートの展示などが予定されている。
またP448は最近数週間に、パリで盛況のショッピングストリートであるリュードフォーブール・サントノレ(Rue du Faubourg Saint-Honoré)の店舗も公開した。このパリの店舗は、同ブランドのストリートウェアの起源を反映して、スケートボードのパイプのデザインを取り入れているほか、シークレットガーデンもあり、同ブランドはここにバーを開設する。
模索する店舗のバイラル化
現在のところ、ニューヨークやパリなど大きなハブの小売業者は依然として、人々が店舗に戻ってくることに興味を抱かせようと試みている。その熱意から、各ブランドは「インスタグラムに適したコンセプト」により訪問者の興味をひこうとテストしていると、リテールコンサルタントのレベッカ・コンドラット氏は語る。同氏は、ビューティブランドのウィンキーラックス(Winky Lux)が自社のニューヨークのポップアップストアを迷路ミュージアムに転換したことなど、いくつかの最近の例を挙げている。「ニューヨークのような大都市に観光客が戻ってくるにつれ、ブランドが独占的なバイラル的な環境を提供することで観光客獲得の秘訣を得られるなら、長期的には利益になる」と同氏は述べている。
しかし、どうすれば店舗をバイラル化できるかはいまだ定式化されていない。「我々は依然として、ユーザーにより生成されるコンテンツの可能性を模索する段階にある」とコンドラット氏は述べている。
P448では、店舗は消費者がブランドと商品を楽しみながら認知するための専用の場所であるとクルキン氏は語っている。そして、同社は国際的な業務拡大とともにこの戦略的な設計を続けることを希望している。
「短期リースは、何がうまく働くかを当社がテストするため重要だ」とクルキン氏は述べる。同氏は、P448の実店舗を設立するとき、1年から2年間の不動産契約を好んで使用すると語っている。「多くの場合、各ブランドは店舗をオーガニックなマーケティングとして活用している。しかし、まずは顧客に対して店舗を訪問する理由を与えることが必要だ」と同氏は述べている。
[原文:Why sneaker brand P448 is designing its stores as social content hubs]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via P448