【一問一答】「 ハイパーカジュアルゲーム 」とは? : 芸者東京・田中泰生氏に訊く、成功の条件

かつて多くの人が夢見た、ゲームのメディア化が、ようやく現実のものとなりつつあります。

それを可能としたのは、スマートフォンの世界的な普及と、高単価を獲得できるインタースティシャル動画広告の一般化。このふたつの要素を背景に、誰でも気軽に楽しめる、多くの言葉を必要としない無料ゲームアプリが、大規模なメディアビジネスとして成長しつつあるのです。人々はそうしたジャンルを「ハイパーカジュアルゲーム」と呼んでいます。

デジタルマーケティングに関する新語を解説する「一問一答」シリーズ。今回は、 USチャートで2作連続で1位をとったことで話題の「ハイパーカジュアルゲーム」のデベロッパー、芸者東京株式会社のCEO田中泰生氏に、その新しいビジネスモデルについて教えてもらいます。

 

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芸者東京の田中泰生CEO(中央)。マーケティング担当の竹下義晃氏(左)、田口聖久氏(右)とともに

ーーまず、そもそも「ハイパーカジュアルゲーム」とはなんですか?

集客およびマネタイズの両方で、アドネットワークをプラットフォームとして利用するカジュアルゲーム、と僕たちは定義しています。

ーーうーん、ピンと来ないですね…。

定義、難しいですね…。グローバルにものすごくスケールして、ものすごく儲かるカジュアルゲーム、じゃだめですか(笑)。

ま、強いていうと、ゲームに関するビジネスモデルは、長らく「課金モデル」か「パッケージモデル」がメインストリームでした。多くの人に無料で楽しんでもらい、そこに広告を掲載してビジネスを成り立たせる「メディアモデル」も存在しなくはありませんでしたが、それ単体でビジネスとしてスケールするほどのインパクトはありませんでした。

ですが、近年、高単価を獲得できるインタースティシャル動画広告やリワードビデオ広告というアドフォーマットが出てきて、メディアビジネスとして成り立った。その現象を指して「ハイパーカジュアルゲーム」というのではないでしょうか?

ーーふむ…でも、単なる「カジュアルゲーム」って、昔からありますよね。それと、どう違うんでしょう?

誰でも気軽に楽しめる、スキマ時間に触れるゲームという点では、あまり大きな差はありません。基本無料で、アドネットワーク広告でマネタイズするという点も一緒です。

しかし、最初から集客およびマネタイズの両方で、アドネットワークを前提にすること、そしてグローバルマーケットを見据えて展開することで、従来のカジュアルゲームでは考えられなかったほどのスケールを追求することができます。

ーーマネタイズだけでなく、「集客も」なんですね?

そうです。口コミやバズるということに期待せず、最初から自分たちでアドキャンペーンを実施することが前提です。なので、僕らのような小さなデベロッパーの作品であっても、奇をてらうことなく、最初から王道のゲーム性で勝負することができる。つまり、面白いものを素直に作って、素直に広めることができるというか。

いまのネット広告の仕組みって、よくできていて、基本的にユーザーに受け入れられない、評価の低いコンテンツだと、どんどん出稿単価が上がっていってしまいます。逆に、面白そうなゲームだと思ってもらえると、出稿単価も下がる。そうすると、結果としてたくさん出稿することができます。

そして、実際にゲームそのものも面白いと評価してもらって、たくさんの時間を遊んでもらえると、メディアとしてスケールすることになりますよね。そこへ、高単価の広告を掲載して、マネタイズするという構造です。

 

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「広告が前提なので、かえって奇をてらわずに面白いゲームを作ることに集中できる」と語る、芸者東京の田中泰生CEO

ーーなるほど。でも、それでは、単なる「自転車操業」になりませんか?

雑誌のビジネスモデルは自転車操業ですか? 違いますよね。彼らも自らの広告を出稿して、たくさんの読者を獲得する。そのうえで、その雑誌に広告を掲載してマネタイズしています。あるいは、地上波テレビのビジネスモデルも同じかもしれません。テレビ番組も、さまざまな外部メディアに自ら広告を出稿しながら、番組にCMを挿入している。つまり、メディアがゲームに変わっただけで、やっていることは、雑誌のビジネスや地上波テレビのビジネスと基本は同じなのです。

ーー言い得て妙ですね。

そして、既存のそれらのビジネスより、「ハイパーカジュアルゲーム」のビジネスの方が、いい点があります。それは、アドテクと呼ばれるものが介在することです。

アドテクの世界においては、基本的に広告の出し手にも受け手にも市場原理が働いてきます。つまり、適者生存です。つまらないと評価されたゲームの広告を載せたがる媒体主(サプライサイド)はいませんし、ユーザーが遊んでいないゲームのなかに広告を出したいと思う広告主(ディマンドサイド)もいません。

その結果、面白いゲームはやはりランキングの上の方に位置することができます。

ーーちょっとわかってきました。つまりランキングをハックしているということですね。

それは違います。ランキング上位に入るのは、結果としてであって、そのこと自体が目標ではありません。僕たちも最初はランキング上位に入れば、自然流入が増えると思っていました。しかし、1位を取ってわかったのですが、ランキングそのものからの流入は大したものではありませんでした。

しかし、弊社の作品「Snowball.io(スノーボール・アイ・オー)」や「Traffic Run!(トラフィック・ラン!)」には、自然流入のユーザーがたくさんいます。それはどういうことか。

私の持っている仮説としては、むしろあるコミュティやあるマーケットにおいて、同時期に一定数のユーザーを獲得することができると、オーガニックがバイラル的に増えていく、というものです。つまり、まずいかに、ある閾値を超えたユーザー数を一気に獲得できるか、そのことが大事なのではないかと思っています。

ーーふーん。じゃあ、このモデルのキーファクターは、「最初にいくらお金を積めるか」ですか?

お金だけがキーファクターだとしたら、僕らみたいな小さな会社に勝ち目はないはずですよね。僕らよりお金を持ってるデベロッパーやパブリッシャーって、世の中にたくさんありますから。

確かに、初期の段階で、ある程度の規模で広告出稿を行える予算は必要でしょう。ですが、「ある一定のKPI」を超えなければ、どんなに広告を出稿しても、焼け石に水なのです。適者生存のアドテクの世界においては、スケーラビリティ(適切な獲得コスト)と継続率があるものにしか、僕らは広告を出さないし、出せないんです。

繰り返しになりますが、いまのインターネット広告が面白いのは、人々に響かないものは(どんどん出稿価格があがるため)淘汰されること。旧来のマス広告は、どんなものであれ、原則として一定の広告費さえ出せば、いつでも好きなだけ出すことができる。インターネット広告の場合、良いプロダクトと認めてもらえないものは、広告を出すことができないんですよね。

ーーでは、その「ある一定のKPI」とは、どんなものですか?

一般的に言われているのは、広告出稿からの獲得コスト(CPI)が30〜50円(約0.3〜0.5ドル)。そして、継続率が、1日後で50%、7日後で20%というものです。そのうえで、CPIよりLTVのほうが上回るように調整していきます。つまり、ゲームそのものの「面白さ」や「気持ちよさ」をきちんと追求する必要があるわけですね。

ーーそんな数字、気前よく教えちゃって大丈夫なんですか?

問題はありません。たとえていうと、100メートル走で10秒を切れば、オリンピックに出られると言っているようなもの。僕もこの数字知っていますけど、それだけだとオリンピック出られないですよね。

どちらかといえば、比較的クリアしやすいのはCPIの方。とはいえ難しいのですが。こちらは異性にモテるために外見を磨くようなものです。本当に厳しいのは継続率を上げること。これは、本当に面白いと思ってもらえないと、実現できない。そんなKPIを叩き出すのは、やってみるとわかりますけど、本当に難しいんです。

世界にはいくつものタイトルを成功させている、「本物」のハイパーカジュアルゲーム会社があって、僕たちはそういう会社と毎日鎬(しのぎ)を削っているんです。

 

芸者東京の代表作のひとつ「Traffic Run!」

ーー「本物」のハイパーカジュアルゲーム会社ですか?

僕らは、まだまだですね。いつか「本物」になれるように、日々足掻いている。ぶっちゃけ、修行中の身です(笑)。

確かに、芸者東京には、「Sling and Jump(スリング・アンド。ジャンプ)」「Snowball.io」、そして「Traffic Run!」という3つのヒットタイトルがあります。でも、「ハイパーカジュアルゲーム」の世界王者としては、Voodoo(ブードゥー)というフランスの企業が君臨している。「Dune!(デューン!)」とか「Helix Jump(ヘリックス・ジャンプ)」、「Hole.io(ホール・アイ・オー)」などたくさんのヒットゲーム持っているし、いまでも複数本がアプリストアのランキングに入っています。

彼らは、すべてのタイトルに同時並行的に、それぞれ毎月「億」単位で広告予算をつぎ込みます。そうして、さらに何億人というユーザーを獲得していこうとする規模感は、まさに王者ですね。厳密にいうと、彼らはパブリッシャーモデルがメインで、ほかのデベロッパーが作ったゲームもパブリッシュしているので、デベロッパーである芸者東京とは微妙に立ち位置が違うのですが。

ーー広告予算は「億」単位にもなるんですか⁉ それを自社アプリに掲載するバナー広告で回収できるんですか?

いまは可能なのです。たとえば、Twitterが運営するモバイルアプリ広告専用のアドエクスチェンジ、MoPub(モパブ)は現在、グローバルで180以上のDSPとつながっています。これはアプリのインベントリー(広告在庫)を購入している広告主には、ほぼすべてとつながっているといって過言ではないそうです。こうした広告プラットフォームを導入して、全世界の利用者を対象にスケールをかければ、ビジネスとして成り立たせることが可能です。

ーーだから、はじめからグローバル勝負であることが大事なんですね…。

そうですね。スケールするためには最初からグローバル展開することが前提となります。それゆえ、言葉を必要とせず、直感的に気持ちいい、どこの国の人でも楽しめる内容が、「ハイパーカジュアルゲーム」の基本です。

MoPubには、すべてのデマンドを同列に扱う、「メディエーション」という機能があります。MoPubがほぼすべてのDSPとつながっているということは、それだけ広告掲載の競争が激しくなるということ。つまり、それだけ広告掲載の価格も高くなるので、収益性が上がるのです。

 

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「Mopubは一番狙い通りのことができる」と語る、芸者東京のマーケティング担当・竹下義晃氏

ーーそうはいってもバナー広告ですよね? どんなに高値といっても二束三文なのは変わらないのでは?

インタースティシャルという動画広告が出てきて以来、その状況も変わりつつあります。なにしろ、インターステイシャル動画広告のインプレッションは、一般的なバナー広告の10倍以上の値をつけることがあるくらいですから。

ーー10倍以上の値って…でも、広告が嫌われたら意味ないですよね?

そのとおりです。そこで離脱されないよう、よりストレスを感じさせない、よりネイティブな形を模索する必要がありますね。あくまで利用者のLTVを最終目標とする「ハイパーカジュアルゲーム」は、その広告の掲載の仕方にもセンスが問われます。

価格およびクリエイティブにおいて、僕らのインベントリーに最適な広告をMoPubに入れてもらえば、必然的にLTVが向上する。そうすればCPIを上げることが可能になり、よりスケールします。僕らにとって、LTVを向上させる方法を教えてくれる「賢者」のような存在が「メディエーション」ツールだと思います。

ーーとなると、広告のクリエイティブが重要になる。

MoPubの担当の方によると、MoPubの場合、アプリにおける広告フォーマットのほぼすべてを網羅しているそうです。そのうえで、我々、媒体側が細かく設定を調整できるんです。また、ローカルにチームがいるので、より柔軟にサポートしてもらえるなどのメリットもあります。参考までに、MoPubのSDKを導入しているアプリの数は約5万2000、利用者の総数も約17億になるのだとか。そこから発生する広告リクエストは、月間1兆を超えるそうです。

「MoPubは自由度が高くて、シンプルなので、カスタムしやすい。一番狙い通りのことができる」と、弊社でマーケティングを担当する竹下も言っています。もうひとりのマーケティング担当の田口も「当初のMoPubは、設定もマニュアルで大変だったけど、ここ最近、API連携もできるようになって、オートメーション化している部分もある。少ない人数でも、十分回せるので、とてもありがたい」と、いっていましたね。

「ハイパーカジュアルゲーム」は、広告収益がリクープの条件。いろんな広告運用要件をカバーするための工夫が必要です。MoPubでは、いまパブリッシャーと収益を上げる取り組みを行っているそうです。

 

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「MopubはAPI連携もできてありがたい」と語る、もうひとりのマーケティング担当・田口聖久氏

ーーなるほど、夢が広がりますね。

このビジネスは、どれくらい遊んでもらえているかについてデータという事実に基づいて、利用者としっかり向き合えるので、本当面白いです。データを活用して、ゲームを面白くしたり、広告効果を高めたり改善を繰り返すことに、いまはのめり込んでいます。一緒に仕事しているマーケティングやマネタイズのチーム、そしてクリエイターやエンジニアたちは皆素晴らしくて、仕事していて最高に楽しいですし。

ーーいいですね! 最後に、今後の目標は?

せっかくグローバルに挑戦する機会を得たので、今後も世界でスケールするような最高に面白いゲームを作りたいですね。日本には、世界を驚かせるようなゲーム作る才能と情熱を持ったクリエイターやエンジニアがたくさんいる。そんなまだ出会っていない仲間たちをどんどんチームに迎え入れて行きたい。そして、ゲーム業界における、ピクサー(Pixar)みたいな存在になる。それが目標ですね(笑)。

Sponsored by Twitter/MoPub
お問い合わせ: Mopubjapan@twitter.com

Written by 広告制作チーム
Image courtesy of 芸者東京
Photo by 渡部幸和