すべての鳥は卵から孵る。ただし一羽だけ、円(サークル)から生まれた鳥がいた。
7月下旬、Twitterで親しまれていた青い鳥のロゴが「X」に差し替えられ、ソーシャルネットワークのひとつの時代が終わりを迎えた。CEOのイーロン・マスク氏による初のリブランディングの結果だ。
青い鳥のロゴマークは、アーティストのマーティン・グラッサー氏と、ほか2人のデザイナーとともに制作したもので、2012年に登場し、象徴的な存在となった。ロゴの制作過程では、無数の鳥のスケッチがおこなわれ、円を使ってアプリが体現する「本質的な中立性とシンプルさ」を感じさせる試みがなされた。
アーティストであり、グラフィックデザインスタジオであるモココ(Mococo)の創業者でもあるグラッサー氏は、Twitterのロゴ以降もPayPal、ソフトバンク、バンブル(Bumble)、Rdioなど、さまざまなブランドと仕事をしてきた。同氏はまた、ジェネレーティブアートの世界にも進出し、7月26日にオークション会社のサザビーズ(Sotherby’s)でデビューしたジェネレーティブアーティストのベラ・モルナール氏とのコラボレーションも果たしている。
米DIGIDAYはグラッサー氏にインタビューを行い、Twitterロゴの開発プロセス(同氏が7月23日にTwitterのスレッドで解説し、大きな話題を呼んだ)、マーケティングやテクノロジーの世界でのデザインの役割の進化、新しいロゴの印象、そして現在のジェネレーティブAIをめぐる議論をはるかに先取りしたような自身の制作プロセスについて話を聞いた。
「いったん構成手法が決まると、それが形を定めるものになる」と、グラッサー氏は言う。「あの鳥がまとう魅力は、単一の形から構成されている点からきている。単純に見ていてとても心地よい形で、そこが人々の心に響いたのだろう」。
なお、分量と読みやすさを考慮し、発言には編集を加えている。
◆ ◆ ◆
――Twitterのロゴデザインを作ると決まったときの心情は?
すべての鳥は卵から孵る。ただし一羽だけ、円(サークル)から生まれた鳥がいた。
7月下旬、Twitterで親しまれていた青い鳥のロゴが「X」に差し替えられ、ソーシャルネットワークのひとつの時代が終わりを迎えた。CEOのイーロン・マスク氏による初のリブランディングの結果だ。
青い鳥のロゴマークは、アーティストのマーティン・グラッサー氏と、ほか2人のデザイナーとともに制作したもので、2012年に登場し、象徴的な存在となった。ロゴの制作過程では、無数の鳥のスケッチがおこなわれ、円を使ってアプリが体現する「本質的な中立性とシンプルさ」を感じさせる試みがなされた。
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アーティストであり、グラフィックデザインスタジオであるモココ(Mococo)の創業者でもあるグラッサー氏は、Twitterのロゴ以降もPayPal、ソフトバンク、バンブル(Bumble)、Rdioなど、さまざまなブランドと仕事をしてきた。同氏はまた、ジェネレーティブアートの世界にも進出し、7月26日にオークション会社のサザビーズ(Sotherby’s)でデビューしたジェネレーティブアーティストのベラ・モルナール氏とのコラボレーションも果たしている。
米DIGIDAYはグラッサー氏にインタビューを行い、Twitterロゴの開発プロセス(同氏が7月23日にTwitterのスレッドで解説し、大きな話題を呼んだ)、マーケティングやテクノロジーの世界でのデザインの役割の進化、新しいロゴの印象、そして現在のジェネレーティブAIをめぐる議論をはるかに先取りしたような自身の制作プロセスについて話を聞いた。
「いったん構成手法が決まると、それが形を定めるものになる」と、グラッサー氏は言う。「あの鳥がまとう魅力は、単一の形から構成されている点からきている。単純に見ていてとても心地よい形で、そこが人々の心に響いたのだろう」。
なお、分量と読みやすさを考慮し、発言には編集を加えている。
◆ ◆ ◆
――Twitterのロゴデザインを作ると決まったときの心情は?
私の興味は二次元の形にあり、それこそが私にとって共感できる部分だった。あるものを平坦にして、サイズが大きくても小さくても適切に表現されるように二次元空間上で調整するには、どうすればよいと思う? ロゴには果たすべき役割が多々あり、それらを念頭に置いてデザインする必要がある。非常に小さなサイズで形状がどのように機能するかを理解し、形をはっきりさせるために光学補正を加えることは、活字デザインの基礎と共通するのだ。
――プラットフォームが進化しても、ロゴが時の試練に耐えられた理由は?
(Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏と、プロジェクトクリエイティブディレクターのトッド・ウォーターベリー氏とともに)シンプルさを徹底的に追求したまでであり、完成したロゴからもそれが見て取れた。調和が感じられ、私の感覚ではメジャーコードのようでもある。組み込まれた空間にすっかりなじんでいるような要素があり、それは装飾やディテールを排除し、伝えるべきたったひとつのコアメッセージに焦点を当てた結果だ。
ジャックとトッドは2人ともシンプルさに強くこだわった。Twitterというプラットフォームには、少なくとも当時はシンプルさ、簡潔さ、明確さの感覚があった。トッドが簡潔さと明確さについてよく話していたことを覚えている。それを視覚的要素として追求するのは興味深い経験だった。簡潔さは、デザインのなかでどう表現できるか追求した。
――ロゴをデザインするなかで、無数のバージョンの鳥を描いたというあなたの反復的手法は、デザイナーがアイデアを練りあげ発展させるのにジェネレーティブAIが役立つという、最近の論調を思い起こさせる。こうした視点についてどう思うか?
私はアートブロックス(Art Blocks)およびアートブロックス・エンジン(Art Blocks Engine)で作品を発表している現役のアーティストだ。Twitterのロゴを見ていると、私はジェネレーティブアートとの関連を感じずにはいられない。円がポップアップするのを見ると、プログラムを書くところさえ想像できる。私のIllustratorファイルには、「2つの円の鳥」「3つの円の鳥」「2つの円でできた4つの異なるサイズの円」などがある。こうしたさまざまな反復試行の結果、アウトプットされた鳥がいる。
私が大いに興味を持っているのは、ブランドがより現代的なコミュニケーションを構築し、実際に対話するのに、こうした方法をどう活用できるかを理解しつつあることだ。(中略)ブランドがデザイナーをアーティストとみなすようになれば、クリエイターエコノミーにどんな変革が起こるか。とてもエキサイティングな機会になるだろう。
――鳥のロゴがこれほど文化的求心力を持つことは予想していたか?
(Twitterは)興味深い会社で、ユーザーは実際にロゴと相互作用をすることがない。商品として購入し、配送してもらうものではないが、それでもあらゆる場所にあった。6缶パックのビールにも、くるみのパッケージにも、3個セットのテニスボールにもあった。遍在性があり、商品が何であれ、TwitterのロゴはTwitterのロゴとして認識された。だが、シンプルなものと組み合わせることもできたと思う。
――リブランディングについて思うことは? デザインの観点からどんな意味をもつか、「X」以前のロゴのデザイナーとしての見解を聞かせてほしい。
想定される課題として、「X」の文字にはシャープでアグレッシブな印象がある。構造面でいえばとても魅力的な文字だ。光学補正の余地が豊富にあり、単なる交差する2本の線ではない。Xの交差の部分では、重みや直線の変化が数多く起こりうる。フレンドリーで親しみやすいものにすることが課題だろう。すべてをひとつに束ねるアプリの名前としてはしっくりくる。上手くいくかどうかは彼ら次第だが、あらゆるチャンスを手にしていると思う。
――現在のソーシャルメディアにおいて、デザインはどんな役割を担い、状況はどのように変化しているのか?
私があの鳥をデザインした頃は、もっと楽観的な時代だったように思う。多くの面で、いわばインターネットの思春期であり、私はそこで好きなものを見つけることができた。Twitterは長きにわたって成功してきたが、輝きは薄れつつあるようだ。我々はテクノロジーに対する楽観を疑うようになり、それこそが大きな変化だ。皆、少し冷静になったのだ。
つながりとグローバリゼーションという未来に、興奮していた時代のことを思い出す。皆が繋がる未来への大きな期待があった。当時の我々は、このテクノロジーが大いに助けになると信じていた。
――もし別のソーシャルネットワークから、ロゴのデザインやリニューアルを依頼されたら、どんなデザイン方針を優先するか?
ジェネレーティブな方法で制作するとしたら、ユーザーは大いに興味を持つだろう。ロゴについての興味深い会話のきっかけになるはずだ。(ジェネレーティブAIによるデザインが)すでに行われていることは知っているが、どんな見た目になるのか、どんな場合に上手くいくのか、完全にデジタル化したときにどうなるのか、興味の尽きない試みになるだろう。
それはさておき、人は鳥が大好きなようだ。Twitterでの私への反応からも、人はシンプルな形に親近感を覚えることがわかる。単なる鳥の絵とはいえ、そこには明らかに、それ以上のものになる可能性がある。
Marty Swant(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平)