Amazon Liveは2016年にリリースされたが、Amazonがこのチャネルへの投資を増やし始めたのはつい最近のことだ。2019年2月にAmazonがLive Creatorアプリをリリースし、それによってユーザーは携帯電話から直接ライブストリームを利用して販売ができるようになった。
ジャスティン・ムーア氏と妻のエイプリル氏はAmazon Liveで商品を販売し始めてわずか数カ月だが、すでに彼らのビジネスの方法はまったく変わってしまった。
ふたりはベテランのユーチューバーで、長年オンラインで物品を販売してきたが、昨年11月下旬にAmazonから誘われて、成長を続けるビデオチャンネルの活用を始めると、すぐに多い日で数万ドル(数百万円)の収益を上げるようになった。現在ムーア夫妻には、主に興味を持った広告代理店から、Amazon Liveの活用方法に関する助言を求める問い合わせが毎週数十件届いている。問い合わせの数が非常に多いので、夫妻は現在、Amazon Liveショーのホスティングサービスを提供している。
ジャスティン・ムーア氏は「天文学的な数字だった」といい、昨年のブラックフライデーとサイバーマンデーの前後に初めてAmazon Liveを活用して、投資利益率は明らかによかったと語った。具体的な数値は示さなかったものの、今年のプライムデーの売り上げは、昨年のブラックフライデーの売り上げを52%上回ったと話している。
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ムーア夫妻の体験によって、代理店やブランドのAmazon Liveに対する関心が刺激された可能性はあるが、今のところ導入は多くない。プラットフォームの機能リストにライブショッピングを追加するソーシャルメディアが増え、AmazonがLiveに新たな投資を行っても、ほとんどのブランドはそれらを試すことにまだ迷いがある。
Amazon Liveの現在の仕組み
ブランドの多くは、従来の広告以上のことをしたいか、言い換えれば、動画の作成やクリエイターを採用するといったことをしたいかについては確信を持てていない。ブランドがライブストリーミングに参入する場合、Amazon Liveのラインナップのなかで望ましいスロットを確保するには、Amazonでのランキングを上げる必要があるからだ。
Amazonの販売者向けビデオを作成してスタジオでのライブストリームをホストするトップ・レーティド・スタジオ(Top Rated Studio)のスタジオマネージャーであるエディー・セゲブ氏は、「ブランドはそこに何かがあると理解しているが、まだ決断を下すまでには至っていない」と話す。
Amazon Liveは2016年にリリースされたが、Amazonがこのチャネルへの投資を増やし始めたのはつい最近のことだ。2019年2月にAmazonがLive Creatorアプリをリリースし、それによってユーザーは携帯電話から直接ライブストリームを利用して販売ができるようになった。その後、2020年7月にAmazonはアプリを拡張し、Amazonインフルエンサープログラムに参加しているインフルエンサーも含めるようにした。Amazonの広報担当者はLiveの利用者数を明らかにしていないが、2020年のプライムデー期間中には1200を超えるライブストリームショーがあったと話している。
コンテンツを作り続ける必要がある
現在、Amazon Liveの専用ホームページには同時に10本を超えるライブストリームがあり、そのうちの1本はそのページの「注目の」動画に指定されている。これらの動画が流れる時間とその位置は、「ライジングスター」「インサイダー」「A-List」という3つのレベルを含むAmazonのランキングシステムによって決まる。それぞれのレベルに応じて、Amazon Liveのページ上で動画が徐々にいい位置に置かれるようになる。「レベルアップ」するには、YouTubeストリーマーがチャンネル登録者の獲得を目指すように、販売者はフォロワーを集めて売り上げを伸ばすためのコンテンツを作成し続ける必要がある。
Creatorアプリとストリームを利用するユーザーは、ブランドの登録販売者、正規のAmazonストアを運営する米国のベンダー、またはアクティブなAmazonストアフロントを持つAmazonインフルエンサーのいずれかでなければならない。
しかし、収益向上への道は容易ではなく、ブランドが収益を得るまでには時間と労力がかかる。Amazonは、アカウントが承認されたら最短でも1時間のストリーミングを勧めている。
Amazonのマーケティングを行うカスピエン(Kaspien)のインバウンドマーケティング部門マネージャーであるケイティー・カプカ氏は、「Amazon Liveを利用して、たとえばプライムデーの売り上げで効果を上げるには、販売者は数カ月間ずっと利用し続ける必要がある。そうすることで、販売者は目立つ位置を獲得するのに必要なステータスが得られる」とメールに書いていた。
「Liveは『テストと学習』の段階」
2021年1月にマブリック(Mavrck)が行った米国内のクリエイターに対する調査によれば、85%がインスタグラムをライブストリームにもっともよく利用すると回答し、次いでFacebook(7%)、TikTok(4%)の順だった。Amazon Liveが主要なライブストリームプラットフォームだとする回答者は2%未満であった。
セゲブ氏は、今のところ、ブランドの多くは、動画を作成したりライブストリームをホストする人材を採用したりするのではなく、静的な写真と従来の広告出稿の利用を望んでいると話している。
ブルーホイール(Blue Wheel)のマーケットプレイスクライアントサービスのディレクターであるメリッサ・アーダバニー氏はこれに同意。いわく「Liveは『テストと学習』の段階にあり、クライアントが熟知している広告出稿ほどには成熟していない」。
ブランドが、特にホリデーショッピングシーズンや次のプライムデーで競争力を持ちたいなら、代わりにLiveを長期的な投資と見なすべきだ。「一部のブランドがLiveを新しいフォーマットと見ていることは理解している。そうだとしても、ストリームからは直接的な収益が得られている。これは非常に大きなことだ」とムーア氏は述べている。
ERIKA WHELESS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)