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再定義が求められている、アフターコロナの「出張」:「板ばさみになっている」

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ワクチン接種率の上昇、旅行規制の緩和、スクリーンを捨てて待望の再会を果たしたいという欲求の高まりにより、米国人は再び大挙してフレンドリーな空へと向かっている。

しかし、旅行販売の大部分は、出張ではなく、国内レジャーに向けられている。グローバルビジネストラベル協会(Global Business Travel Association)が2021年7月に行った調査によると、回答者の50%が国内の、83%が海外の出張のほとんど、またはすべてをキャンセル・延期しているという。

ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)のある分析では、あらゆる出張の19~36%は永久になくなると結論付けている。多くの企業は、コスト削減、二酸化炭素排出量の削減、伝染性の高い新型コロナウイルスのデルタ株感染を抑制するために、直接訪問する代わりにビデオ会議の導入を推し進めているのだ。

疲れ切った出張族

また、かつての慌ただしいライフスタイル、大西洋を横断する旅、窮屈なビジネススーツに戻る準備ができていない、あるいは戻りたくないと、疲れ切った出張族がいる。なかには、何時間もかけて出張し、飛行機を追いかけ、パートナーや家族、ペットと離れて過ごすことに価値を感じなくなった人もいる。

アペタイズ(Appetize)の広報担当ディレクターで旅行サイト「トラベルビンガー・コム(TravelBinger.com)の創設者であるジェレミー・イム氏は次のように話す。「私はこれまで113の国を訪れ、600のホテルに泊まってきた。パンデミックになって初めて、同じところにじっといなければならなくなった。出張ばかりしていると、立ち止まる理由が見つからない。これが仕事だ、やらなければならない、常に動いていなければならないと感じる」。

「だが、パンデミックが起こって、すべてにブレーキがかかった」と、イム氏は続ける。「いまは振り返って思う。『どうすれば1カ月に8回も飛行機に乗れたのだろう?』と」。

デロイト(Deloitte)が150人のトラベルマネージャーを対象に先頃行った調査によると、企業の出張は増加傾向にあり、オフィスへの出社の回復に伴って膨らむことが予想されていた。しかし、急激に抑制されるようになり、2021年末までには2019年の水準のわずか30%にとどまると予測されている。新たな変異ウイルスの出現や感染の急増、マスク着用義務の継続、風邪やインフルエンザの季節の到来により、需要はさらに減少するかもしれない。

航空会社が直面する板ばさみ

全米旅行産業協会(U.S. Travel Association)のパブリック・アフェアーズと政策を担当するエグゼクティブバイスプレジデント、トーリ・エマーソン・バーンズ氏は、企業の出張旅行は2025年までは完全には戻らないと予測する。航空機のフライトスケジュールやルート、ターミナル、ゲートでさえ、需要の変化に合わせて見直しや整備が行われている。

米国では、2007年から2009年のグレート・リセッション時に出張の大きな落ち込みを経験した。米国からの海外出張が13%以上減少し、回復までに5年を要した。

業界団体のエアライン・フォー・アメリカ(Airlines for America)によると、パンデミック以前、主要航空会社の収入の約半分をビジネス客が占めていたが、それは総旅行量の30%に過ぎなかった。

なぜか? これらのハイエンドな搭乗客は経費で旅行することが多く、利便性と快適性を優先する傾向があり、出発直前のチケット、返金不可の運賃、直行便、プレミアムシートなどにお金をかけることが多いからだ。また、アメニティの追加購入やマイレージのようなインセンティブプログラムへの登録にも積極的で、航空会社にとっては貴重なデータ源となる。

意外かもしれないが、プレミアム料金を支払う旅行者は、レジャーを楽しむ旅行者の旅費を補助している。航空会社は、彼らの収入と影響力のおかげで、残席を埋めるために安価なチケットを提供することができ、需要に応じて路線を追加することさえある。

ワシントン・ポスト(The Washington Post)の旅行リポーター、アンドレア・サックス氏は次のように語る。「航空会社は間違いなく、板ばさみになっている。ビジネス客と同じようにレジャー客にも請求したいが、それができないため、運賃設定が偏ってしまっている。神経質な旅行者を呼び戻す必要があるが、彼らが行けない場所もまだたくさんある」。

1970年代後半に航空会社がファーストクラスとエコノミークラスのあいだにビジネスクラスを導入して以来、ここが世界の旅行業界にとって数兆ドルを超える利益を生み出すドル箱だった。航空会社、コンベンションセンター、ホテル、旅行代理店などで働く何百万もの人々が職を維持できるかどうかは、この部分の迅速な回復にかかっている。

その出張は本当に必要か?

しかし、パンデミックによる活動休止期間が、従業員とその雇用者に、リセットし、再評価し、将来に向けて積極的に計画を立てる貴重な機会を与えた。多くの企業が、従業員をいつ、何のために、どのように出張させるかを含めて、組織体制を再構築している。Amazonは、2020年に従業員の出張費を約10億ドル(約1000億円)節約したと発表している。

なかには、支出を抑え、利用可能な技術を取り入れ、従業員と地球のために、よりサステナブルな選択肢(たとえば、従業員が利用する旅行の種類や環境への影響、その期間、場所、頻度など)を模索する機会を歓迎しているところもある。

パンデミック中、自宅から画面越しで、より簡単に、より安価に仕事をこなすことができると示されたが、ビジネス目的での対面会議の必要性と欲求は依然として存在する。全米旅行産業協会のバーンズ氏によると、米国の労働者の85%が、対面で行う会議やイベントをかけがえのないものと考えているという。「グレート・リセッションのあと、対面式のイベントに回帰した企業は、収益性と生産性が向上した」と、バーンズ氏は述べる。

対面での交流に今後も価値があり続けるとしても、1時間のミーティングのために国中を移動することは、もはや時間や資金の生産的かつサステナブルな使い方ではないのかもしれない。

ワシントン・ポストのサックス氏はいう。「企業は、『この人を飛行機に乗せて、その人の健康や会社、さらには社会全体を危険にさらすようなことをしたいのか、しなければならないのか』と自問する必要がある」。

[原文:‘Stuck between a rock and a hard place:’ Corporate travel’s post-COVID comeback is slow

MEGAN MCDONOUGH(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:小玉明依)