ARファッションプラットフォームのゼロ10は、クリエイティブスタジオのクロスビースタジオと共同で、9月7日から18日までニューヨークのソーホーでAR一体型のリテールポップアップを主催する。いま、このソーホーはAR試着やNFTを取り入れたリテールコンセプトで注目の場となっている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
ARファッションプラットフォームのゼロ10(ZERO10)は、クリエイティブスタジオのクロスビースタジオ(Crosby Studios)と共同で、9月7日から18日までニューヨークのソーホーでAR統合リテールポップアップを主催する。
クロスビースタジオがデザインしたコンセプトスペースでは、ゼロ10独自のAR衣料テクノロジーにより、顧客はデジタルのみの5つのアイテムを試着することができる。これは小売店舗での初の試みだ。1日の来場者数は限定されており、ゼロ10のソーシャルチャンネルでプロモーションされている同イベントのウェブサイトから申し込むことができる。
Advertisement
AR試着やNFTをコンセプトにしたリテールの発信地
ソーホーは、AR試着やNFTを取り入れたリテールコンセプトで注目の場となっている。6月には、サルヴァトーレ・フェラガモ(Salvatore Ferragamo)が、一時的なNFTとホログラムを統合した店舗をオープンした。フェラガモのチーフブランドオフィサーであるダニエラ・ヴィターレ氏は、当時Glossyに次のように語っている。「インテリアのデザインにアプローチする方法について考えた際、フレキシブルな外観と雰囲気——アートギャラリーやエキシビションセンターに似たような何か——を作り出すことが、私たちにとって非常に重要だった」。彼女は、このデザインによって店舗が時間とともに進化していくことについて説明している。
ゼロ10のコンセプトストアに関しては、クロスビースタジオは、彼らの特徴であるピクセル化された美学に沿ってインタラクティブな空間となるようにデザインしている。同スタジオは2022年秋のパリ・ファッションウィークではジュエリーブランドのレポシ(Repossi)と組み、Web3のカフェのためにピクセル化された家具を制作している。今回のゼロ10のパートナーシップは、クロスビースタジオが初めてデジタル衣料に取り組んだものだ。
ファッションのコンセプトとリテール体験全体を再構築
ゼロ10ストアの焦点は、フィッティングルームでのAR試着、ARによるコンテンツ制作、店内にあるタピオカティーのバーとなるイートミーミルクミー(Eat Me Milk Me)でのソーシャライゼーションである。コレクションのうち3つのデジタルアイテムは、顧客が無料で試着して画像や動画で保存することができ、残り2つのデジタルアイテムは、NFTとしてそれぞれ0.1イーサリアムと5ドル(約690円)で販売される予定だ。
フィッティングルームにはQRコードが設置され、リアルタイムで、または写真をアップロードするとAR試着アイテムにアクセスすることができる。iPhoneを持っていない顧客のために、備え付けのiPhoneも用意されている。このアイテムはよりインタラクティブになっていて、プリントやグラデーションが消えるのが特徴だ。
「今回のリミテッドコレクションでは、ファッションのコンセプトを再概念化することが重要だった。店舗の環境やデザインから、ゲストがショッピングできる服そのものにいたるまで、リテール体験全体を再構築することによって、それを目指している」と、クロスビースタジオ創業者のハリー・ヌリエフ氏は述べている。
AR体験を導入しない企業は取り残される
ゼロ10のCEOジョージ・ヤシン氏は、このような店舗要素が標準となる新しい現実に多くの小売業者はすぐに適応していくだろうと述べている。「物理的な小売に統合されたAR衣料試着体験は、ブランドが新しい世代の消費者と対話をするための新たな言語だ」と彼は言う。「この世代には、異なる価値観、習慣、新しい消費行動がある。この技術的な進歩に抵抗を感じる人もいるかもしれないが、今後5年以内に小売業でAR体験を導入しない企業は取り残されると我々は考えている」。
ゼロ10のAR試着は、すでにトミー・キャッシュ氏、メイジー・ウィレン氏、エドワード・クラッチリー氏など新進気鋭のデザイナーによってオンラインで使用されている。Shopify(ショッピファイ)の調査では、ARを活用することで返品を40%削減し、コンバージョンを97%高めることができることが示されている。
将来的にはビジネスの99%が体験になる
「店に行けばARやプリロードされたVRメガネを使って、体験が最大化されるようすべてがセットアップされている。それがわかっている場所では、そのキュレーションされた体験によって実店舗やオンラインでは味わえないような、より洗練されたリテールに触れることができる」と語ったのは、スマートリテール技術企業のリアクティブリアリティ(Reactive Reality)CEOステファン・ハウスヴィスナー氏だ。「ショッピング体験には、単なる商品への物理的なアクセス以上のものがある。ARを活用したブランド店舗での体験は、顧客にほかの価値を与えることができる。将来的にはビジネスの99%が体験となり、商品へのアクセスは副次的なものにすぎなくなるだろう」。
また、顧客に製品をよく知ってもらいたいと考えているブランドにとって、時間短縮というメリットもあるとヤシン氏は指摘した。「AR衣料品試着技術があれば、ブランドの顧客は実店舗に入らなくても、または店内にいなくても、アイテムを1秒以内で着用することができるだろう」と彼は言う。「ゼロ10のARポップアップストアなど、実店舗向けの新たな製品開発にも我々は取り組んできた。これらのソリューションをブランドショップの外にも組み込むことができれば、小売店のサービスコスト削減に貢献するはずだ」。
[原文:New York’s Soho is the place for metaverse fashion retail]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)